386 / 646
エピローグ【凛の話3】

優太がね…

しおりを挟む
理沙ちゃんは、珈琲を一口飲んでカップを置いたと同時に言う。

「優太が、凛ちゃんの旦那さんと連絡取り合ってるみたいなの」

「そうなの…」

「理沙も知らなかったんだけど…。あの日、連絡先交換したみたい」

「そうだったんだ」

私は、心臓が早くなるのを感じながら、珈琲を飲んだ。

「理沙ちゃん所に泊めてもらってるみたいでごめんねってきたみたいだよ!優太は、気にしないで下さいって送ったみたいなんだけどね」

「何か、ごめんね。巻き込んじゃって」

「全然。理沙は、いいよ!凛ちゃんとたくむんの事、応援してるから…。でも、正直、凛ちゃんの旦那さんがもっと悪い人なら良かったってのはあるよ」

そう言って、理沙ちゃんはチーズケーキを食べてる。

「好い人過ぎたでしょ?」

私の言葉に理沙ちゃんは、うんうんと頷いている。

「龍ちゃんは、優しすぎるんだよね。だから、甘えすぎちゃう」

「凛ちゃんを愛しているから優しいんだと思うよ。そうじゃなかったら、優しくなんてなれないよ」

理沙ちゃんは、私の目を見つめる。

「愛してるから幸せでいて欲しいんだと思う。理沙ね、大昔に優太に思った事あるんだ。理沙が拭えない傷を抱えてるなら…。優太が別の誰かを選んでも仕方ないって…」

「まっつんさんは、浮気してたの?」

私の言葉に理沙ちゃんは、ニコッと笑った。

「実際は、理沙の勘違いだったんだけどね。でも、浮気してると思ってたんだ」

そう言って、懐かしそうに目を細めている。

「勘違いでよかったね」

私は、そう言って笑って珈琲を飲む。

「うん!凛ちゃんも違うよ。絶対、違う。それに、凛ちゃんの旦那さんも理沙と同じような気持ちかもでしょ?」

私、ずっと理沙ちゃんは誰かに似てる気がしていたけど…。今、わかった。龍ちゃんに似てるんだ。

「龍ちゃんなら、そう思うかもね」

私は、理沙ちゃんに笑いかける。

「凛ちゃんは?」

「私は、許せなかった……」

涙が溜まっていくのを感じる。私は、理沙ちゃんを見れなくて俯いて珈琲を飲む。

「それも愛だよ」

理沙ちゃんの言葉に胸に引っ掛かっていた何かが珈琲と共に胃袋に落ちたのを感じた。

「重たい愛でしょ?」

私は、笑ってみせた。

「凛ちゃんにとって、旦那さんは、いつでもそこにある場所でしょ?」

「わかるの?」 

「わかるよー。優太が、昔、理沙にそう言った事があるから!理沙は、絶対揺るがない存在だって!だからね、理沙。絶対、優太を裏切らないって頑張るって思ってきた。でもね、凛ちゃん」

理沙ちゃんは、珈琲カップを置いた私の手を握りしめる。

「理沙ね、凛ちゃん達みたいに何の約束もされてないでしょ?」

「そんな事ないよ」

「優太を信じられなくなってきちゃってる」

その言葉に、私は理沙ちゃんの苦しみを知った。その場所を守るからこそ、相手にも何かを捧げて欲しいと思う感情(きもち)を感じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...