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7 それは家族と呼べるもの
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〈ムイ〉の星を後にしたミズホ号の中。
船内には音が戻っていた。モフルのもふもふした足音、ソルの電子音。
「ピリカ、今日は、いつにも、増して、静かですね」
ソルがパネル越しに言うと、モフルはふと横を見た。
ピリカはぼんやりと窓の外の星を見つめていた。
「さっきの音楽、あったかかったね。……ああいうの、ぼくも覚えてる気がする」
言ってから、ピリカはちょっと照れた顔をした。
「昔、お母さんが料理しながら鼻歌うたってて……お父さんはよく、歌詞まちがえるんだ。わざと変なのにして、笑わせようとしてさ……」
誰も声を返さなかった。
でも、その沈黙がやさしいことを、ピリカは知っていた。
「行方不明になって……でも、どこかで生きてるって思てる。今はもう、さびしいってより……」
少し言葉に詰まって、ピリカはうつむいた。
そのとき、モフモフした前足が、そっと彼の手に触れた。
「おれは、ずっと箱に入ってた。出番がなくなって、放置されて、誰にも開けてもらえなかった。でもピリカが来てくれた。モフルの思い、届いた」
ソルも言った。
「ワタシは、100年もの間、星に、独りきりでした。誰も返事を、くれなかった。でもピリカが、“いっしょに行こう”、と言ってくれた」
ピリカは目を見開き、そしてそっと笑った。
「ぼくたち、ずっと一人ぼっちだったね。でも今、こうして一緒にいるのって、なんか……」
ピリカは言葉を探して、小さな声で言った。
「……家族みたいだ」
ソルのランプがやわらかく瞬き、モフルはうれしそうに尻尾をふる。
「ちがうよ、ピリカ」
「ちがいます」
モフルとソルが同時に言った。
「“みたい”じゃなくて、家族なんだよ、もう」
「そうか……モフルとソルにとって、ぼくが“家族”なんだね」
「うんモフ。ピリカのこと、だいじな“群れ”だと思ってるモフ」
「いつもそばに、です。
共に、時を過ごし、支え合う、存在」
ピリカのうたた寝の寝息。
小さな宇宙船の中に、無音の星で拾った“音楽”のように、あたたかい静けさが満ちていった。
——それは、きっと誰にとってもかけがえのない、星の中で見つけた“家族”の瞬間だった。
船内には音が戻っていた。モフルのもふもふした足音、ソルの電子音。
「ピリカ、今日は、いつにも、増して、静かですね」
ソルがパネル越しに言うと、モフルはふと横を見た。
ピリカはぼんやりと窓の外の星を見つめていた。
「さっきの音楽、あったかかったね。……ああいうの、ぼくも覚えてる気がする」
言ってから、ピリカはちょっと照れた顔をした。
「昔、お母さんが料理しながら鼻歌うたってて……お父さんはよく、歌詞まちがえるんだ。わざと変なのにして、笑わせようとしてさ……」
誰も声を返さなかった。
でも、その沈黙がやさしいことを、ピリカは知っていた。
「行方不明になって……でも、どこかで生きてるって思てる。今はもう、さびしいってより……」
少し言葉に詰まって、ピリカはうつむいた。
そのとき、モフモフした前足が、そっと彼の手に触れた。
「おれは、ずっと箱に入ってた。出番がなくなって、放置されて、誰にも開けてもらえなかった。でもピリカが来てくれた。モフルの思い、届いた」
ソルも言った。
「ワタシは、100年もの間、星に、独りきりでした。誰も返事を、くれなかった。でもピリカが、“いっしょに行こう”、と言ってくれた」
ピリカは目を見開き、そしてそっと笑った。
「ぼくたち、ずっと一人ぼっちだったね。でも今、こうして一緒にいるのって、なんか……」
ピリカは言葉を探して、小さな声で言った。
「……家族みたいだ」
ソルのランプがやわらかく瞬き、モフルはうれしそうに尻尾をふる。
「ちがうよ、ピリカ」
「ちがいます」
モフルとソルが同時に言った。
「“みたい”じゃなくて、家族なんだよ、もう」
「そうか……モフルとソルにとって、ぼくが“家族”なんだね」
「うんモフ。ピリカのこと、だいじな“群れ”だと思ってるモフ」
「いつもそばに、です。
共に、時を過ごし、支え合う、存在」
ピリカのうたた寝の寝息。
小さな宇宙船の中に、無音の星で拾った“音楽”のように、あたたかい静けさが満ちていった。
——それは、きっと誰にとってもかけがえのない、星の中で見つけた“家族”の瞬間だった。
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