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10 おそろいの“ふく”
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今日は、〈カスミ星〉への配達。
星に向かうミズホ号の船内では、今日の配達先についてにぎやかな声が響いていた。
「今日は、“ふく”の、配達、ですか?」
ソルが手元の端末をのぞきこむと、ピリカが笑顔で頷いた。
「うん。お姉さんから妹さんへの贈り物。”おそろいの服”なんだって。赤と白のかわいいワンピース」
宛名は「妹のノンノへ」。
差出人は、別の星に住む姉「ミオ」。
「おそろいで作ったんだってさ」
ピリカが荷物を抱えて歩きながら説明した。
「ミオさん、ことし成人なんだって! お祝いにふたりで“おそろいの服”着るのが夢だったんだって」
「おそろい、ですか……いいですね、そういうの。
ステキ……です! 服って“福”にも、通じますから、縁起も、いいですね」
ソルの言葉に、モフルもくるくると回転しながら加わった。
「おれたちも着よう! おそろい! ふわふわで、もふもふなやつー!」
ピリカは笑いながら、そっと荷物を撫でた。
「でも、妹のノンノさんは小さくて病弱で、カスミ星から出られないんだ」
「だから、代わりに、ミズホ号が、届けるの、ですね?」
「うん。しかも、この服……お姉さんが自分で縫ったんだって。胸元にね、小さな刺繍で『祝』って文字が入ってる。『一緒にお祝いしたい』って、気持ちがたっぷり詰まってるんだ」
カスミ星の空港は、ぼんやりとした水色の空に包まれていた。ミズホ号はふわりと着地し、ピリカたちは荷物を抱えて、医療センターへと向かった。
「ノンノさん、あなたにお届けものですよ」
看護師の声に反応して、小さなベッドの上で起き上がった少女が、顔を輝かせた。
「もしかして……ミオねえから?」
ピリカは優しく頷いて、包みを開けた。中から出てきたのは、きれいに畳まれた、真っ白な生地に赤いリボンが縫い込まれたワンピース。
「わぁ……
おそろいの服……!」
胸元には、姉ミオの手縫いの刺繍で、“祝”の文字。
ノンノはそっと両手で触れる。ふわりと広がる赤白のワンピース。
「ミオねえの香りがする……」
その後、ノンノは看護師さんと一緒に着替えをして、鏡の前に立った。
「どうかな……似合ってる?」
「うん、とっても! おそろいのミオさんも、きっと笑ってるよ」
ピリカが言うと、ノンノは嬉しそうに笑った。けれどその瞳には、少しだけ涙も浮かんでいた。
「本当は、ねえと一緒に写真撮りたかったんだ。でも、ねえは別の星でお仕事があるから……」
モフルがそっとノンノの手にふれた。
「だったら、写真と手紙を送ろうよ。おれたちが届けるよ」
「うん……そうする!」
ノンノの笑顔が、ミオにもきっと届く。
それは、ただの服じゃない――─「福」の贈り物だった。
ピリカたちは、病室の外に出て空を見上げた。
「なあピリカ、今日の荷物は”服”だったけど、届けたのはそれだけじゃなかったな」
「うん……姉妹の気持ち、“福”も一緒に届いた気がする」
ピリカはノンノの笑顔を思い出し、胸があったかくなる。
「ソル。僕さ、ちょっと思い出した」
「え?」
「僕の服もね、両親が“おそろい”で作ってくれたことあったんだ」
「……そう、でしたか」
そのぬくもりは、まだ手の中に残っているような気がした。
ミズホ号に戻り、離陸準備を整える中で、ソルがふと口を開いた。
「ピリカ……いつか、君のご両親にも、君が届けてる、“福”が届くといいですね」
「うん。僕も、そう思う。……でも、今はそれより」
ピリカは操縦席で振り返り、にこっと笑った。
「次の“福”を届けに行こう」
ミズホ号の航行記録に、新たなログが刻まれる。
《配達完了:ふく(服でお福分け)》
姉妹のきずなと、あったかい心に包まれて、また一歩、未来へ航行中。
星に向かうミズホ号の船内では、今日の配達先についてにぎやかな声が響いていた。
「今日は、“ふく”の、配達、ですか?」
ソルが手元の端末をのぞきこむと、ピリカが笑顔で頷いた。
「うん。お姉さんから妹さんへの贈り物。”おそろいの服”なんだって。赤と白のかわいいワンピース」
宛名は「妹のノンノへ」。
差出人は、別の星に住む姉「ミオ」。
「おそろいで作ったんだってさ」
ピリカが荷物を抱えて歩きながら説明した。
「ミオさん、ことし成人なんだって! お祝いにふたりで“おそろいの服”着るのが夢だったんだって」
「おそろい、ですか……いいですね、そういうの。
ステキ……です! 服って“福”にも、通じますから、縁起も、いいですね」
ソルの言葉に、モフルもくるくると回転しながら加わった。
「おれたちも着よう! おそろい! ふわふわで、もふもふなやつー!」
ピリカは笑いながら、そっと荷物を撫でた。
「でも、妹のノンノさんは小さくて病弱で、カスミ星から出られないんだ」
「だから、代わりに、ミズホ号が、届けるの、ですね?」
「うん。しかも、この服……お姉さんが自分で縫ったんだって。胸元にね、小さな刺繍で『祝』って文字が入ってる。『一緒にお祝いしたい』って、気持ちがたっぷり詰まってるんだ」
カスミ星の空港は、ぼんやりとした水色の空に包まれていた。ミズホ号はふわりと着地し、ピリカたちは荷物を抱えて、医療センターへと向かった。
「ノンノさん、あなたにお届けものですよ」
看護師の声に反応して、小さなベッドの上で起き上がった少女が、顔を輝かせた。
「もしかして……ミオねえから?」
ピリカは優しく頷いて、包みを開けた。中から出てきたのは、きれいに畳まれた、真っ白な生地に赤いリボンが縫い込まれたワンピース。
「わぁ……
おそろいの服……!」
胸元には、姉ミオの手縫いの刺繍で、“祝”の文字。
ノンノはそっと両手で触れる。ふわりと広がる赤白のワンピース。
「ミオねえの香りがする……」
その後、ノンノは看護師さんと一緒に着替えをして、鏡の前に立った。
「どうかな……似合ってる?」
「うん、とっても! おそろいのミオさんも、きっと笑ってるよ」
ピリカが言うと、ノンノは嬉しそうに笑った。けれどその瞳には、少しだけ涙も浮かんでいた。
「本当は、ねえと一緒に写真撮りたかったんだ。でも、ねえは別の星でお仕事があるから……」
モフルがそっとノンノの手にふれた。
「だったら、写真と手紙を送ろうよ。おれたちが届けるよ」
「うん……そうする!」
ノンノの笑顔が、ミオにもきっと届く。
それは、ただの服じゃない――─「福」の贈り物だった。
ピリカたちは、病室の外に出て空を見上げた。
「なあピリカ、今日の荷物は”服”だったけど、届けたのはそれだけじゃなかったな」
「うん……姉妹の気持ち、“福”も一緒に届いた気がする」
ピリカはノンノの笑顔を思い出し、胸があったかくなる。
「ソル。僕さ、ちょっと思い出した」
「え?」
「僕の服もね、両親が“おそろい”で作ってくれたことあったんだ」
「……そう、でしたか」
そのぬくもりは、まだ手の中に残っているような気がした。
ミズホ号に戻り、離陸準備を整える中で、ソルがふと口を開いた。
「ピリカ……いつか、君のご両親にも、君が届けてる、“福”が届くといいですね」
「うん。僕も、そう思う。……でも、今はそれより」
ピリカは操縦席で振り返り、にこっと笑った。
「次の“福”を届けに行こう」
ミズホ号の航行記録に、新たなログが刻まれる。
《配達完了:ふく(服でお福分け)》
姉妹のきずなと、あったかい心に包まれて、また一歩、未来へ航行中。
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