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21 トゥクトゥ星・感情実験室
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ピリカに届いた依頼は、〈トゥクトゥ星〉にいる“カゲツ博士”宛てのおかゆのデリバリー。
……今回の条件はちょっと変だった。
「これって、フードデリバリー……?」
ピリカは首をかしげた。
宇宙をまたぐ便としては、たった一杯の食事は軽すぎる。
〔とにかく誰にも見つからずに来てください。
温度は37度。ぴったりでお願いします。冷めすぎもNG、熱すぎもNGです。
ドアのノックは3回、2回、3回で。合言葉は“おとっつぁん、おかゆができたわよ”。〕
「なんだか……、スパイ映画、みたいですね」
とソルが声をひそめる。
「寒~い合言葉だな」とモフル。
「おかゆはあったかいのにね」とピリカも首をかしげながら、出発!
〈トゥクトゥ星〉に降り立ったピリカを待っていたのは、草も木も揺れない、不思議な静寂の中にある【研究所】。
カゲツ博士は、感情を持たない人工生命体(AI)たちの感情実験をしているという。
博士は頭にボサボサの髪、白衣には食べこぼしのしみが……。
「……実験中でね。彼らに、“やさしさ”というものを教えるには、どうしても“誰かから何かをもらう体験”が必要だったんだ」
博士は、ピリカから受け取ったおかゆを大事そうに持ち、機械たちに囲まれたテーブルへ運ぶ。
「さぁ、これは“病気の誰かを思って作られた、あったかい食事”だ。
その意味を、感じられるかな?」
しかし――─
AIたちは首をかしげた。
「ただの栄養物体デス」「食事はカロリー摂取ノミ」「味……データ不明」
失敗かと博士が肩を落としかけたそのとき、ピリカが、笑顔で一言。
「じゃあ、一緒に食べませんか? おしゃべりしながら、ゆっくりと」
ピリカは自分の非常食用のおかゆパックを取り出し、よそいはじめる。
それから少し経って――─
一体のAIが、静かにスプーンを置いた。
「……胃のあたりが、あたたかい気がシマス」
「食事が終わるのが、なんとなく……さびしい、と思いマシタ」
カゲツ博士が目を丸くする。
「まさか……! これは“情緒反応”だ。間違いなく!」
博士はピリカに深く頭を下げた。
「“寄り添う”ことが、感情を教えてくれたのかもね」
帰り際、ピリカはそっと言う。
ミズホ号の居住スペース。
モフルはひまわり型のクッションで寝ていた。
「おとっつぁん、おかゆが、できたわよ」
ソルが土鍋で炊いたおかゆを運んできた。
「……いつもすまねぇなぁ。
……って、何を言わせるんじゃ!!」
モフルはツッコミを入れた。
《配達完了:おかゆ(やさしい気持ちつき)》
あったかいのは、おかゆの温度だけじゃなかったみたいです。
……今回の条件はちょっと変だった。
「これって、フードデリバリー……?」
ピリカは首をかしげた。
宇宙をまたぐ便としては、たった一杯の食事は軽すぎる。
〔とにかく誰にも見つからずに来てください。
温度は37度。ぴったりでお願いします。冷めすぎもNG、熱すぎもNGです。
ドアのノックは3回、2回、3回で。合言葉は“おとっつぁん、おかゆができたわよ”。〕
「なんだか……、スパイ映画、みたいですね」
とソルが声をひそめる。
「寒~い合言葉だな」とモフル。
「おかゆはあったかいのにね」とピリカも首をかしげながら、出発!
〈トゥクトゥ星〉に降り立ったピリカを待っていたのは、草も木も揺れない、不思議な静寂の中にある【研究所】。
カゲツ博士は、感情を持たない人工生命体(AI)たちの感情実験をしているという。
博士は頭にボサボサの髪、白衣には食べこぼしのしみが……。
「……実験中でね。彼らに、“やさしさ”というものを教えるには、どうしても“誰かから何かをもらう体験”が必要だったんだ」
博士は、ピリカから受け取ったおかゆを大事そうに持ち、機械たちに囲まれたテーブルへ運ぶ。
「さぁ、これは“病気の誰かを思って作られた、あったかい食事”だ。
その意味を、感じられるかな?」
しかし――─
AIたちは首をかしげた。
「ただの栄養物体デス」「食事はカロリー摂取ノミ」「味……データ不明」
失敗かと博士が肩を落としかけたそのとき、ピリカが、笑顔で一言。
「じゃあ、一緒に食べませんか? おしゃべりしながら、ゆっくりと」
ピリカは自分の非常食用のおかゆパックを取り出し、よそいはじめる。
それから少し経って――─
一体のAIが、静かにスプーンを置いた。
「……胃のあたりが、あたたかい気がシマス」
「食事が終わるのが、なんとなく……さびしい、と思いマシタ」
カゲツ博士が目を丸くする。
「まさか……! これは“情緒反応”だ。間違いなく!」
博士はピリカに深く頭を下げた。
「“寄り添う”ことが、感情を教えてくれたのかもね」
帰り際、ピリカはそっと言う。
ミズホ号の居住スペース。
モフルはひまわり型のクッションで寝ていた。
「おとっつぁん、おかゆが、できたわよ」
ソルが土鍋で炊いたおかゆを運んできた。
「……いつもすまねぇなぁ。
……って、何を言わせるんじゃ!!」
モフルはツッコミを入れた。
《配達完了:おかゆ(やさしい気持ちつき)》
あったかいのは、おかゆの温度だけじゃなかったみたいです。
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