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38 未来便・ふたたび、ぬくもりを
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リフレア星に、ミズホ号が着陸したのは、午後のあたたかな光が街に差し込むころだった。
今回の配達は医療ステーション宛。いつもより重い荷物とともに、ピリカは駅舎の正面で足を止めた。
「ここだよね。ん……?」
見覚えのある看板。いや、それだけじゃない。
目に映る花壇の色、ベンチの形、扉の音まで──ピリカの中に、ふわりと蘇る記憶があった。
そこへ現れたのは、白衣を着たひとりの青年。
「……ピリカさん?」
「えっ……えっ!?」
青年──ユウリは、成長していた。けれど、まなざしはあの日と同じ。
驚いたピリカがきょとんとしていると、ユウリはくすりと笑った。
「10年前、“ぬくもりタイムカプセル”を運んでくれた、宇宙宅配員さんだよね」
ピリカは思わず笑みを返した。
「まさか、本当に会えるなんて思わなかったよ」
ユウリはポケットから、小さな缶を取り出した。
銀色に光るその缶には、見覚えのあるシールが貼ってあった。──10年前、未来の自分へ向けて書いたあのカプセル。
「これ、まだ大事にしてる。……今日、あなたに見せたいなって思って、持ってきたんだ」
ピリカは言葉に詰まり、そっと受け取る。
缶のふたを開けると、中には黄色い折り紙の手紙と、小さな羊毛のぬいぐるみ──そして、ラベンダーの香り。
その夜、ユウリはピリカたちを自宅に招いた。
庭のランタンに火を灯し、ホットワインを出してくれた。
「ピリカさん、今も変わらず届けてる?」
「うん。届けられない日もあるけど、今日みたいに『ちゃんと届いた』ってわかる日があるから、続けられるんだと思う」
焚き火の音がぱちぱちと響く。
ピリカの頬に、あの頃より大人びたやさしい笑みが浮かんでいた。
「きっとまた、どこかで会いましょう──あたたかいものを手にして」
そして翌朝、ミズホ号に戻る前、ユウリがそっと手渡してきたのは───────
小さな缶に入った、**“未来のピリカへ”**と書かれたカプセルだった。
今回の配達は医療ステーション宛。いつもより重い荷物とともに、ピリカは駅舎の正面で足を止めた。
「ここだよね。ん……?」
見覚えのある看板。いや、それだけじゃない。
目に映る花壇の色、ベンチの形、扉の音まで──ピリカの中に、ふわりと蘇る記憶があった。
そこへ現れたのは、白衣を着たひとりの青年。
「……ピリカさん?」
「えっ……えっ!?」
青年──ユウリは、成長していた。けれど、まなざしはあの日と同じ。
驚いたピリカがきょとんとしていると、ユウリはくすりと笑った。
「10年前、“ぬくもりタイムカプセル”を運んでくれた、宇宙宅配員さんだよね」
ピリカは思わず笑みを返した。
「まさか、本当に会えるなんて思わなかったよ」
ユウリはポケットから、小さな缶を取り出した。
銀色に光るその缶には、見覚えのあるシールが貼ってあった。──10年前、未来の自分へ向けて書いたあのカプセル。
「これ、まだ大事にしてる。……今日、あなたに見せたいなって思って、持ってきたんだ」
ピリカは言葉に詰まり、そっと受け取る。
缶のふたを開けると、中には黄色い折り紙の手紙と、小さな羊毛のぬいぐるみ──そして、ラベンダーの香り。
その夜、ユウリはピリカたちを自宅に招いた。
庭のランタンに火を灯し、ホットワインを出してくれた。
「ピリカさん、今も変わらず届けてる?」
「うん。届けられない日もあるけど、今日みたいに『ちゃんと届いた』ってわかる日があるから、続けられるんだと思う」
焚き火の音がぱちぱちと響く。
ピリカの頬に、あの頃より大人びたやさしい笑みが浮かんでいた。
「きっとまた、どこかで会いましょう──あたたかいものを手にして」
そして翌朝、ミズホ号に戻る前、ユウリがそっと手渡してきたのは───────
小さな缶に入った、**“未来のピリカへ”**と書かれたカプセルだった。
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