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123.アリス猛ダッシュする
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公爵は目を瞑る。
どいつもこいつも甘い。
王さえ味方につければ、王妃が不在の時を狙えばことが上手くいくと思っている。
何をふざけたことを。
そちらが王を、ルカ王子を利用するというのであればこちらはあの方を利用しようではないか。
最近大人しくしていたからか?王家の為、国の為に働いていたからか?王の決定に従うとなぜ思っているのか?
あの方はそんなもの関係なしに突き進む。
気が向けば……だが。
だが、公爵は持っていた。
アリスを動かすことのできるレアアイテムを。
公爵は胸元に光る鷹のブローチを触る。いや、正確には鷹が抱える赤い魔法石をポチリと押した。
~~~~~~
「「ぎゃあっ!」」
アリスの侍女であるアイラとルリハがアリスの部屋で可愛くない悲鳴を上げる。やばっと口元を抑える二人にアリスはふふっと笑う。
「今殿方はいないんだから素でも大丈夫よ」
「「アリス様~」」
二人の恨めしげな視線に笑いながら失礼と言うアリス。
アリスから驚かされたものに恨めしげな視線を移す二人。そこには大理石で作られた美しい女神の置物があった。その女神が抱えている魔法石が赤く光っている。
大音量で叫びながら。
『緊急事態発生!緊急事態発生!緊急事態発生!』
「これ話すんですね」
「ええ、そうよ」
これはガルベラ王国に帰省した後から置き始めたものである。ただの美しい置物だと思っていたのだが。
「何が起こっているのですか?緊急事態発生と言っていますが」
さっきの急な音には驚いたが、不思議な現象にはある程度耐性がついた二人はすぐに落ち着いた様子。
「聞こえる……」
「「えっ?」」
「聞こえるわ……公爵が助けを求める声が」
「「えっ、これ公爵と関係してるんですか?」」
「ええそうよ」
『公爵が困ってます!公爵が助けて~~~!って泣いてます』
なんじゃそりゃ。
あの公爵が助けて~~~!って……似合わない。
「そんな顔しないで。本当に助けて~~~!って泣いてるわけじゃないから。今ね、公爵にこれと連動する魔法石がついたブローチを渡していてね。公爵が助けが欲しい時にそれをぽちっと押したらその女神の置物が反応するように私が設定しただけだから」
へー、そうなんだ………………うん?
ということは
「公爵様助けを求めているんじゃないですか!?」
「アリス様急いで行かないと!」
二人の慌てる声に座っていた椅子からすくっと立ち上がるアリス。そして――――――
スカートをむんずと掴むと猛スピードでドアから廊下に飛び出した。
「今行くわ公爵~~~~~~!」
慌てて追いかける侍女2人だが、全然追いつかない。アイラとルリハは王妃と宰相のスパイとしてそれなりに鍛えているのだが……
よく見ると足は一切動いていない。微妙に浮いている。
「きょ…ハァ…きょうは……しゅ…ハァハァ…しゅんかんいどう……ハァ……し……ハァ……しないのね……」
ルリハの途切れ途切れの呟きに、アリスが離れた所から反応する。
「姫を救う王子は一生懸命走ってドアからバーンと登場しないといけないでしょ?頑張った感が出ないじゃない」
姫!?
王子!?
走るも何も浮いているではないか。
「も……もう……ハァ…………無理」
「あらあら軟弱ね。私はこのまま会議室に突入するからあなたたちは部屋に戻ってていいわよ~!」
「「ぎょ……ぎょい……」」
アリスの言葉に素直に足を止める二人。
「アイラ、ルリハ」
後ろからかけられた少々低めの声に身体を強張らせる二人。ギギっと後ろを振り返るとそこにいたのは……
「「じ……侍女長」」
そこには厳しい顔をした侍女長が立っていた。
「あなたたち侍女たる者、城の廊下を走るとは何事ですか?あなたたちの振る舞い一つで王宮のイメージを損なうのですよ?この城にふさわしい優雅な振る舞いを心がけなさい」
「「申し訳ございませんでした」」
アリスを追いかけるためとはいえ走ったのは事実。素直に謝る二人。その肩にポンと手が置かれた。
「お疲れ様。あなたたちも苦労するわね」
理不尽な言いがかりだろうが、口にしなければならないのが侍女長と言うものなのだ。
「「侍女長~~~」」
そのことを二人もよくわかっている。
侍女長とアイラとルリハの絆が深まった。
一方侍女二人を置き去りにしたアリスは扉に立つ兵の制止を無視して会議室の扉をバターンと開けた。
中にいた者たちが感じるのは驚きか
それとも
またかという思いか
それは人それぞれというものだろうが、明らかに一人だけ安堵の表情を浮かべる者がいた。公爵だ。
「アリス様ご機嫌よう」
公爵の挨拶にはっと我に返る大臣たちも、続々と挨拶の言葉を述べる。
「皆様ご機嫌よう、突然申し訳ございません。ですが陛下お喜びください!我が息子ラルフがピーマンを食べたのです!」
「そ、そうか」
王はうんうんと頷く。しょうもない、非常にしょうもない。子供が嫌いなものを食べたくらいで会議に乱入するなんて本来なら怒られる。だが咎めるでもなく彼女を受け入れたのは後で何をされるかわからないからだ。
「陛下!採決を!」
男爵がアリスの登場でハーゲ伯爵が口を閉じたのを見て、慌てて声をあげる。もともと王は側室賛成なのだ。王が側室にすると言えば……
「陛下、何をお決めになられるのですか?」
ビクゥと体を揺らすのは王と高位の大臣たちだ。懐かしいこの感覚。今日は何をやらかす気なのか。
おろおろと視線を彷徨わせ返事に困る王の代わりに声を上げたのは空気の読めぬこの男。
「私の娘であるクレアをルカ王子の側室にするのですよ!」
胸を張り、誇らしげに宣言するのは眉髭……タリス男爵だ。
「へー…………」
その低い妖しい声音にゾクゥと怖気が走る男爵以外の者達。気づかぬ男爵は会議の内容を話す話す。
や、やめてくれ~~~~~!と心の中で叫ぶ王や他の大臣。
ニヤニヤと口元が緩む公爵とハーゲ伯爵。
男爵の話を聞き終えたアリスがすぅっと言葉を発するために息を吸った。
どいつもこいつも甘い。
王さえ味方につければ、王妃が不在の時を狙えばことが上手くいくと思っている。
何をふざけたことを。
そちらが王を、ルカ王子を利用するというのであればこちらはあの方を利用しようではないか。
最近大人しくしていたからか?王家の為、国の為に働いていたからか?王の決定に従うとなぜ思っているのか?
あの方はそんなもの関係なしに突き進む。
気が向けば……だが。
だが、公爵は持っていた。
アリスを動かすことのできるレアアイテムを。
公爵は胸元に光る鷹のブローチを触る。いや、正確には鷹が抱える赤い魔法石をポチリと押した。
~~~~~~
「「ぎゃあっ!」」
アリスの侍女であるアイラとルリハがアリスの部屋で可愛くない悲鳴を上げる。やばっと口元を抑える二人にアリスはふふっと笑う。
「今殿方はいないんだから素でも大丈夫よ」
「「アリス様~」」
二人の恨めしげな視線に笑いながら失礼と言うアリス。
アリスから驚かされたものに恨めしげな視線を移す二人。そこには大理石で作られた美しい女神の置物があった。その女神が抱えている魔法石が赤く光っている。
大音量で叫びながら。
『緊急事態発生!緊急事態発生!緊急事態発生!』
「これ話すんですね」
「ええ、そうよ」
これはガルベラ王国に帰省した後から置き始めたものである。ただの美しい置物だと思っていたのだが。
「何が起こっているのですか?緊急事態発生と言っていますが」
さっきの急な音には驚いたが、不思議な現象にはある程度耐性がついた二人はすぐに落ち着いた様子。
「聞こえる……」
「「えっ?」」
「聞こえるわ……公爵が助けを求める声が」
「「えっ、これ公爵と関係してるんですか?」」
「ええそうよ」
『公爵が困ってます!公爵が助けて~~~!って泣いてます』
なんじゃそりゃ。
あの公爵が助けて~~~!って……似合わない。
「そんな顔しないで。本当に助けて~~~!って泣いてるわけじゃないから。今ね、公爵にこれと連動する魔法石がついたブローチを渡していてね。公爵が助けが欲しい時にそれをぽちっと押したらその女神の置物が反応するように私が設定しただけだから」
へー、そうなんだ………………うん?
ということは
「公爵様助けを求めているんじゃないですか!?」
「アリス様急いで行かないと!」
二人の慌てる声に座っていた椅子からすくっと立ち上がるアリス。そして――――――
スカートをむんずと掴むと猛スピードでドアから廊下に飛び出した。
「今行くわ公爵~~~~~~!」
慌てて追いかける侍女2人だが、全然追いつかない。アイラとルリハは王妃と宰相のスパイとしてそれなりに鍛えているのだが……
よく見ると足は一切動いていない。微妙に浮いている。
「きょ…ハァ…きょうは……しゅ…ハァハァ…しゅんかんいどう……ハァ……し……ハァ……しないのね……」
ルリハの途切れ途切れの呟きに、アリスが離れた所から反応する。
「姫を救う王子は一生懸命走ってドアからバーンと登場しないといけないでしょ?頑張った感が出ないじゃない」
姫!?
王子!?
走るも何も浮いているではないか。
「も……もう……ハァ…………無理」
「あらあら軟弱ね。私はこのまま会議室に突入するからあなたたちは部屋に戻ってていいわよ~!」
「「ぎょ……ぎょい……」」
アリスの言葉に素直に足を止める二人。
「アイラ、ルリハ」
後ろからかけられた少々低めの声に身体を強張らせる二人。ギギっと後ろを振り返るとそこにいたのは……
「「じ……侍女長」」
そこには厳しい顔をした侍女長が立っていた。
「あなたたち侍女たる者、城の廊下を走るとは何事ですか?あなたたちの振る舞い一つで王宮のイメージを損なうのですよ?この城にふさわしい優雅な振る舞いを心がけなさい」
「「申し訳ございませんでした」」
アリスを追いかけるためとはいえ走ったのは事実。素直に謝る二人。その肩にポンと手が置かれた。
「お疲れ様。あなたたちも苦労するわね」
理不尽な言いがかりだろうが、口にしなければならないのが侍女長と言うものなのだ。
「「侍女長~~~」」
そのことを二人もよくわかっている。
侍女長とアイラとルリハの絆が深まった。
一方侍女二人を置き去りにしたアリスは扉に立つ兵の制止を無視して会議室の扉をバターンと開けた。
中にいた者たちが感じるのは驚きか
それとも
またかという思いか
それは人それぞれというものだろうが、明らかに一人だけ安堵の表情を浮かべる者がいた。公爵だ。
「アリス様ご機嫌よう」
公爵の挨拶にはっと我に返る大臣たちも、続々と挨拶の言葉を述べる。
「皆様ご機嫌よう、突然申し訳ございません。ですが陛下お喜びください!我が息子ラルフがピーマンを食べたのです!」
「そ、そうか」
王はうんうんと頷く。しょうもない、非常にしょうもない。子供が嫌いなものを食べたくらいで会議に乱入するなんて本来なら怒られる。だが咎めるでもなく彼女を受け入れたのは後で何をされるかわからないからだ。
「陛下!採決を!」
男爵がアリスの登場でハーゲ伯爵が口を閉じたのを見て、慌てて声をあげる。もともと王は側室賛成なのだ。王が側室にすると言えば……
「陛下、何をお決めになられるのですか?」
ビクゥと体を揺らすのは王と高位の大臣たちだ。懐かしいこの感覚。今日は何をやらかす気なのか。
おろおろと視線を彷徨わせ返事に困る王の代わりに声を上げたのは空気の読めぬこの男。
「私の娘であるクレアをルカ王子の側室にするのですよ!」
胸を張り、誇らしげに宣言するのは眉髭……タリス男爵だ。
「へー…………」
その低い妖しい声音にゾクゥと怖気が走る男爵以外の者達。気づかぬ男爵は会議の内容を話す話す。
や、やめてくれ~~~~~!と心の中で叫ぶ王や他の大臣。
ニヤニヤと口元が緩む公爵とハーゲ伯爵。
男爵の話を聞き終えたアリスがすぅっと言葉を発するために息を吸った。
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