伝説の剣なんていりません。普通の女の子に戻りたい。

あきあす

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第1章

お腹がすくと人は寡黙になるものです

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1日の仕事を終えて
お屋敷を出ようとすると
門の前で父さんが待っていた。

午前中の分の仕事が残っちゃってたから
残業頑張って、
いつもより遅かったのに…。

ちなみに今日は、なぜか
ずーっとトマトばかり洗ってたけどね!

樽3つ分のトマト、
何を作るんだろうね。

あまりのトマトに
トマトの歌作っちゃったの。
聞きたい?
え、聞きたくないの?







「イオン。一緒に帰ろう。」


父さんはそう言ったっきり、
何も喋らずに歩いている。
私もその背中を見ながら無言で歩く。

小さい頃は、よく手を繋いで歩いたっけなぁ。父さんの大きくて、ゴツゴツしているけど温かい手が大好きだった。

大きくなったら
父さんのお嫁さんになると思っていた。

「イオン、父たんのおよめたんになりゅ!」
って言ったら母さんに
「あら、だめよ。ジョルジュは渡さないわ!」と本気で怒られたっけ。
3才児に容赦なかったな。

ずーっとラブラブな2人。

万年新婚なのよーだって。

そんな両親が大好きだ。
たまに悪乗りして暴走するけれど。
そして、無茶振りするけれど。


今日、辺境伯様から聞いた話を思い出し、父さんはどうやって母さんを射止めたんだろう、なんて考えて
聞いてみようかと思ったけれど
いつもと違って寡黙な父さんの様子に
そんな雰囲気じゃないのでやめておいた。

父さんの背中から哀愁が漂っている感じがしたから。

私、空気読めるので!
読めるはずなので!(たぶん)



いつもは1度家に帰り、着替えてから
母さんの店でご飯を食べるのだが、
今日は家に入りたくないなと思っていた。

だって、あのエクスチャリバーが
いるんだもの。
チャラチャラとベラベラと煩いあいつが!

まさか、父さんの居るところで
また埋めるわけにもいかないし。




「今夜は家で飯食うぞ。」


え、今何と?!


「今朝、カミュがな、
おまえが疲れてるだろうからって
夕飯は弁当届けてくれるらしい。」


カミュ…、
なんて気が付く良い子なんだろう。
でも私、家に入りたくないのよね…。


そう思ってるうちに家に着いちゃった。



「おかえり、父さん、姉さん。」

玄関口にカミュが待っていた。

「おう、ただいま。」

そう言って父さんはカミュの頭を
ガシガシ撫でて家の中に入って行った。


「姉さん、ちょっと…。」

「なぁに?」

カミュは小さな声で

「チャリバー、店に持って行くからさ。今夜はゆっくりして。」

と、植え込みに隠してあった
エクスチャリバーを抱えて

「じゃ、しっかり食べてグッスリ眠ってね!」

と駆けていった。父さんに見付からないようにそんなとこに隠してたんだね。


流石だ。末っ子の気遣いスキルだな。

ほっとして、家の中に入ると

「イオン、これ何だろうな?」

と、父さんが1枚の紙切れを手に持っている。

「えー、何々。

『修行の旅に出るので、暫く騎士団休みます。探さないで下さい。フラン』

だとさ。」

兄さん!!
どうしちゃったの?

「ま、そういう年頃なんだろうな。
あいつも、そしておまえも。」

ふんわりと笑った父さん。


「ま、取りあえず飯食おうか。
腹が減ると、無口になっちゃうんだよな。」

あれっ、哀愁は?


お腹すいてただけ?


そして、父さんと私は
珍しく2人きりで晩ごはんを食べた。

「ジェフリーから聞いたんだが、
今日あいつ…いや辺境伯の旦那に
呼び出されたんだって?」


あいつって言ったよね、今。


「うん。母さんの後継者なのかって聞かれたの。勇者とか傭兵とか騎士にもなれるんだから、この先どうするのか考えてみなさいって。」



「余計なことを…。」


食後のお茶を淹れながら
父さんの様子を伺うと
小さな声でなにか言ってた。
聞こえなかったけど。


「それでね、私、いっぱい考えたんだけど…。勇者とかそういうのには、なりたくないの。母さんみたいに素敵な出会いをして、恋をして、幸せな家庭を作りたいの。」


「そうか…。やっぱりおまえは母さんの娘だな。」


それから父さんは、母さんの若い頃の話をしてくれた。
全く知らなかったのだけど
母さんは貴族の生まれだったんだ。
家を出て剣一本で生きて来て、
父さんと出会って幸せな家庭を作りたいって言ったんだって。

「おまえの気持ちも考えず、
エクス○リバーを受け継がせようなんて、本当に悪かった。母さんそっくりに成長しているおまえを見てたら、勇者もアリなのかと浮かれてしまったんだ。もう、無理強いはしないよ。思う通りに生きなさい。」


「ありがとう。父さん。」





と、そういうことになり…
伝説の剣エクスチャリバーの行く末はいかに!?

(俺の扱い酷くない?)




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