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しおりを挟むサビーナは何も考えずただ彼女を救おうとそこに立ち塞がった。
「来なさい!私が相手だ!」
「待て、私も加勢しよう。ひとりで突っ走ってはいけない」
「殿下……」
躊躇している暇はない、サビーナと王子は防御壁を展開して襲撃に備えた。二重にした結界魔法はかなり頑丈である。「グオオオン!」という雄たけびと共に青い光に包まれた。凄まじい冷風がやってきた、ビキビキと周囲が凍っていくのが分かる。
「聖女様!御無事ですか?」
「ええ、平気よ。あなた無茶をするわね」
ホッとするの束の間、またもアイスブレスを放とうとドラゴンは大口を開く。息を吸い込んでいるようだ。
「させないわ!殿下、火と雷どちらが良いですか?」
「え?あっと……雷で」
森の真ん中で火炎は危険と判断したアレクサンドルは雷と所望した、雷でも火はつくがいくらかマシだと判断したのだ。
「紫電開放!パープルスパーク!」
眩しい閃光の後にバリバリと不快な爆音が鳴った、白い静寂の後に紫の放電が放たれたのだ。光と音どちらが先かわからない。
後に残ったのは黒焦げのドラゴンだった、まだ未成熟だったようで瞬殺できた。
「危なかったー、若いドラゴンで良かったわ」
「あ、ああ……そうだね」
余のことに茫然となった殿下はそう言うのが精いっぱいのようだ、放電はまだ収まっておらず、バチバチと光を放っていた。
「貴女本当に凄いわ、……と、それより沼を消去しなければね」
聖女は言うが早いか瘴気の固まりを抑え込みじりじりと沼を消して行った。最後にトプンと飛沫を上げて完全に干上がってしまう。
「ありがとうございます聖女様、あとは大地と空に残る魔物を殲滅するだけです!」
「はあ、殲滅ね。結構な数だわよ」
聖女は空を見上げて旋回してこちらの様子を伺っているワイバーンを見て「ひぃ、恐ろしい!」と震えた。どうやら魔物はかなり苦手のようだ。
「もう良いでしょ?魔力が切れそうなのよ、そこの貴方、早く転移魔法を!」
「はい、参りましょう」
若い魔導士を呼びつけてさっさと退散するようだ。
「ではね、殿下、御武運を祈っているわ」
「ええ、ありがとうアルビータ様」
「ふふ、今度お茶でも」
そう言い残して聖女は王城へと転移して消えて行った。
***
一方、その頃。
まだ魔力が戻らないアランは結界魔法の中で「ひぃひぃ」言っていた。相変わらず牙を剥きだしにして執拗に襲うオルトロスは小一時間ほどそうしている。
「あと一時間か……待てよ、その後はどうやって逃げれば良い?反撃したとして一時的に追い払うだけだ」
そう想像したらサァと青褪めるアランは「あわわわ……」と考えなしの行動を後悔した。魔力は戻っても3割程度である、どのように逃げようか必死に考えた。
魔物たちは大分減ってきてはいても、襲われるのは避けられそうもない。目の前のオルトロスを退治できたとしてその後が困るのだ。
その時、一体のワイバーンがアランの事を見定めて「グワー」と鳴いた。
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