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第1章 ゴブリン退治
沼地で
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五郎はしばらく森の中を歩いた。
やがて、がやがやという声がしてくるのが聞こえた。しげみや木に身を隠しながら、声の方に近づく。
近づくと、声をあげているのは、案の定ゴブリンたちだった。その数、数十匹というところか。沼のほとりで、ゴブリンたちが酒を飲み、騒いでいる。
しかし、いるのはゴブリンたちだけではなかった。
ゴブリンたちの中に、一人のやせた男がいた。白銀の髪を持つ一人の男である。
おそらくは人間に見えた。その人間の男が、ゴブリンたちの中で酒を飲んでいる。
人質ではもちろんなく、客分というふうでもない。
(おそらく、このゴブリンの集団は奴に率いられている)
と、五郎は思った。
ゴブリンたちが統率のとれた悪行を為すようになったのは、知性――すなわち人間の悪人が原因であったとすれば簡単に説明がつく。
五郎はすうと息を吸った。そして、ばっと飛び出す。
宴会場は狂乱に包まれた。
五郎は気のおもむくままに刀を振り回した。
数匹のゴブリンが、ギャッという声とともに倒れる。
「貴様らは運が悪かった」
五郎は、倒れ行くゴブリンたちに向かってつぶやいた。
突然の奇襲者に、ゴブリンたちはあわてふためいている。
その混乱を利用し、五郎は銀髪の男――人間の男めがけて一気に近づく。
銀髪の男は、手をかざすと、その手から炎の玉を発射する。おそらくは魔法の火炎であろう。
五郎は、迷わずにその炎を刀で切り払った。
炎はたちまちに消散する。
「魔の刀か!」
銀髪の男がうろたえる。
「どうやらそうらしい。なにせ神からの授かりものでな」
五郎は言った。
さらに男との距離を詰め、その喉元に刀を突きつける。
「ゴブリンたちを操っていたのは貴様か?」
「…そうだ」
男はうめくように言った。
「都での研究暮らしにも飽きてな。3年前にここにたどり着いた。この森に私の国を作ってやろうと思ったのさ」
銀髪の男は微笑む。
「ゴブリンたちがその国民というわけか」
「近い将来には人間もそうなるはずだったさ。あの村を……」
「襲わせるつもりだった、か?」
「そういうことだ」
「小さな男だ」
五郎はそう言い、男の喉笛を突いた。
鮮血が飛び散り、男は倒れた。
「さて」
五郎はゴブリンたちを見回した。
「俺と話が出来る奴はいるかな」
「お、俺が……」
ゴブリンの中の一人が手を上げた。
「ん……あの時のか」
五郎はゴブリンが、昼間、サリーを襲っていたゴブリンたちのリーダー格であることに気がついた。
「ああ。今、あんたが殺した男が来るまでは、俺がここのボスだった」
「ふむ」
「俺らをどうする気だ?」
「皆殺しにする」
ゴブリンたちの間にざわめきが走った。
「……というのもかわいそうだ。俺と約束をしよう」
「約束?」
「お前らはこの男が、」
と、五郎は銀髪の男の死体を指しながら言った。
「来る前までと同じ生活に戻れ。人間の村にはできるだけ近づくな。人を決して殺すな」
ゴブリンのリーダーはうなずいた。
「それと……すまんがお前さんには、一度村まで着いてきて欲しい」
「俺が?」
リーダーが言った。
「びくつかなくてもいい、命は保障する。ちょっと証言してもらいたいことがあるんでな」
五郎はそう言うと、銀髪の男の首を取り、ゴブリンのリーダーとともに沼地をあとにした。
やがて、がやがやという声がしてくるのが聞こえた。しげみや木に身を隠しながら、声の方に近づく。
近づくと、声をあげているのは、案の定ゴブリンたちだった。その数、数十匹というところか。沼のほとりで、ゴブリンたちが酒を飲み、騒いでいる。
しかし、いるのはゴブリンたちだけではなかった。
ゴブリンたちの中に、一人のやせた男がいた。白銀の髪を持つ一人の男である。
おそらくは人間に見えた。その人間の男が、ゴブリンたちの中で酒を飲んでいる。
人質ではもちろんなく、客分というふうでもない。
(おそらく、このゴブリンの集団は奴に率いられている)
と、五郎は思った。
ゴブリンたちが統率のとれた悪行を為すようになったのは、知性――すなわち人間の悪人が原因であったとすれば簡単に説明がつく。
五郎はすうと息を吸った。そして、ばっと飛び出す。
宴会場は狂乱に包まれた。
五郎は気のおもむくままに刀を振り回した。
数匹のゴブリンが、ギャッという声とともに倒れる。
「貴様らは運が悪かった」
五郎は、倒れ行くゴブリンたちに向かってつぶやいた。
突然の奇襲者に、ゴブリンたちはあわてふためいている。
その混乱を利用し、五郎は銀髪の男――人間の男めがけて一気に近づく。
銀髪の男は、手をかざすと、その手から炎の玉を発射する。おそらくは魔法の火炎であろう。
五郎は、迷わずにその炎を刀で切り払った。
炎はたちまちに消散する。
「魔の刀か!」
銀髪の男がうろたえる。
「どうやらそうらしい。なにせ神からの授かりものでな」
五郎は言った。
さらに男との距離を詰め、その喉元に刀を突きつける。
「ゴブリンたちを操っていたのは貴様か?」
「…そうだ」
男はうめくように言った。
「都での研究暮らしにも飽きてな。3年前にここにたどり着いた。この森に私の国を作ってやろうと思ったのさ」
銀髪の男は微笑む。
「ゴブリンたちがその国民というわけか」
「近い将来には人間もそうなるはずだったさ。あの村を……」
「襲わせるつもりだった、か?」
「そういうことだ」
「小さな男だ」
五郎はそう言い、男の喉笛を突いた。
鮮血が飛び散り、男は倒れた。
「さて」
五郎はゴブリンたちを見回した。
「俺と話が出来る奴はいるかな」
「お、俺が……」
ゴブリンの中の一人が手を上げた。
「ん……あの時のか」
五郎はゴブリンが、昼間、サリーを襲っていたゴブリンたちのリーダー格であることに気がついた。
「ああ。今、あんたが殺した男が来るまでは、俺がここのボスだった」
「ふむ」
「俺らをどうする気だ?」
「皆殺しにする」
ゴブリンたちの間にざわめきが走った。
「……というのもかわいそうだ。俺と約束をしよう」
「約束?」
「お前らはこの男が、」
と、五郎は銀髪の男の死体を指しながら言った。
「来る前までと同じ生活に戻れ。人間の村にはできるだけ近づくな。人を決して殺すな」
ゴブリンのリーダーはうなずいた。
「それと……すまんがお前さんには、一度村まで着いてきて欲しい」
「俺が?」
リーダーが言った。
「びくつかなくてもいい、命は保障する。ちょっと証言してもらいたいことがあるんでな」
五郎はそう言うと、銀髪の男の首を取り、ゴブリンのリーダーとともに沼地をあとにした。
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