中年剣士異世界転生無双

第９章 プレゼント

魔術師の触れ

　マンティコア退治から数日後のことである。
　五郎はふと気が向き、街をうろついていた。
　その辺りの商店を少し見て歩く。
　サリーへ贈れるアクセサリーか宝石でもないか、という気がしたのだ（ルーを軽視しているわけではないが、しかしそもそもそうしたものはルー自身が喜ばない）。
　しかし、特にめぼしいものはなく、五郎は店屋街を離れた。
　すると、なんだか人だかりがしているのを見つけた。
　人々が口々に声をあげている。

「へえ、こりゃ面白いや」
「本当にいいもんがもらえるかもしれんぞ」
「そうは言うが、ラスークと言ったら大した魔術師だぜ」
「そいつが用意した罠を乗り越えろってのは、ひと仕事だ」
「なんでも、もう大怪我して帰ってきた奴もいるらしい」
「くわばら、くわばら」

　なんのことかと思い、五郎はひょいと体をくぐらせて人混みを越えた。
　すると、その先には張り紙が貼ってある。
　張り紙には、

「魔術師ラスークよりの挑戦。我が塔の最上階まで最初にたどり着けたものに、魔法の宝を贈ることにする。挑戦者を待つ」

　そんな布告と共に、塔の場所が書いてあった。
　五郎たちの住むガレンドの街からそれほど遠くもない場所である。

「ふむ。面白い」

　五郎はもともと、挑戦や冒険に飢えている男である。
　魔術師のこの挑戦とやらを受けてみるのも面白かろうと思った。
　宝がいいものであるかどうかは、二の次だった。