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第32章 竜
踊り場を抜けて
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踊り場を抜けた五郎たちは、階段を上り、2階へとたどりついた。
2階は、しん、とした静寂が支配していた。
しかし、静寂ではあったが、質素であるわけではなかった。
あちこちに金貨や財宝が山と積まれている。
そして、その合間に転がるはいくつものガイコツである。
ここで何人もの人間が死んだようであった。
黄金と死体の転がるこの広間の中央に、一匹の竜が眠っている。
40メートルはあろうかという赤い成獣。
おそらく、人間が通常遭遇しうる敵としてはもっとも恐ろしい怪物と言えた。
それが、今、五郎たちの目の前で眠っている。
その眠り竜のすぐ後ろに、更に上の階へと続く階段があった。
「やるか?」
ルーが、流石に緊張した面持ちで言う。
五郎は、
「あまり消耗もしたくないが……」
と答えた。
「それじゃ、竜さんが眠っているあいだに階段まで行っちゃいます?」
こう言ったのはサリーである。
五郎はうなずき、
「まずそれを試してみるのが一番よかろう」
と言った。
3人はあちこちに散らばる金貨やガイコツを踏まないように注意を払いつつ、忍び足で歩き出した。
竜は寝息すらたてずに眠っている。
五郎たちは慎重に、しかしすばやく階段を目指す。
熟達した戦士である五郎とルーは言うに及ばず、サリーもまた特にこともなく歩き、階段まであと一歩の距離まで近づいた時である。
竜が、その赤い体をむくりと起こした。
そして、
「ぐおおお!」
という咆哮を広間中に響かせた。
「気づかれたかっ!」
ルーが言い、斧を構える。
五郎もそれにならい刀を抜く。
竜が言った。
「最初から起きておったわ。貴様らのような間抜けが我輩に気づかれんようにこそこそと歩き回るのを見るのは愉快なのでな」
「ああいう場合は放っておくというわけか」
と、五郎が答えた。
「その通り」
と、竜は邪悪な笑みをこぼす。
「さて、誰から順に焼いてやろうかい」
竜がすうと息を吸った。
2階は、しん、とした静寂が支配していた。
しかし、静寂ではあったが、質素であるわけではなかった。
あちこちに金貨や財宝が山と積まれている。
そして、その合間に転がるはいくつものガイコツである。
ここで何人もの人間が死んだようであった。
黄金と死体の転がるこの広間の中央に、一匹の竜が眠っている。
40メートルはあろうかという赤い成獣。
おそらく、人間が通常遭遇しうる敵としてはもっとも恐ろしい怪物と言えた。
それが、今、五郎たちの目の前で眠っている。
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「やるか?」
ルーが、流石に緊張した面持ちで言う。
五郎は、
「あまり消耗もしたくないが……」
と答えた。
「それじゃ、竜さんが眠っているあいだに階段まで行っちゃいます?」
こう言ったのはサリーである。
五郎はうなずき、
「まずそれを試してみるのが一番よかろう」
と言った。
3人はあちこちに散らばる金貨やガイコツを踏まないように注意を払いつつ、忍び足で歩き出した。
竜は寝息すらたてずに眠っている。
五郎たちは慎重に、しかしすばやく階段を目指す。
熟達した戦士である五郎とルーは言うに及ばず、サリーもまた特にこともなく歩き、階段まであと一歩の距離まで近づいた時である。
竜が、その赤い体をむくりと起こした。
そして、
「ぐおおお!」
という咆哮を広間中に響かせた。
「気づかれたかっ!」
ルーが言い、斧を構える。
五郎もそれにならい刀を抜く。
竜が言った。
「最初から起きておったわ。貴様らのような間抜けが我輩に気づかれんようにこそこそと歩き回るのを見るのは愉快なのでな」
「ああいう場合は放っておくというわけか」
と、五郎が答えた。
「その通り」
と、竜は邪悪な笑みをこぼす。
「さて、誰から順に焼いてやろうかい」
竜がすうと息を吸った。
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