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01.抗えない夢と血
♥(2)
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これもサシャが言っていた〝別の血〟の影響なのだろうか。同僚に目付きや匂いを指摘された時はここまで自覚するような症状は出ていなかったが、それ以外に思い当たるふしがない。
そもそも、ジークの中に眠っていた、魔法使い以外の血とは、いったい何だと言うのだろう?
詳細を聞こうにも、サシャはそれを良しとしなかった。今はまだ知らない方がいいとしか教えてくれなかったのだ。理解すれば理解するほど、血の効果は強く表れてしまうからと。
しかし、実際にはそれを理解するまでもなく、すでにジークの身体はまるで自分のものではないような状態になっていた。サシャのかけた抑制魔法の効果も完全に切れてしまったのだろう。
「…っは、ぁ……っ」
瞳の際から涙がこぼれる。身体中が熱くてたまらない。もうこれ以上は我慢できない――。
気がつくと下着の中には濡れた感触が広がっていた。あふれ出した雫が布地にはしたない染みをつくっているのは見るまでもなく明らかだった。
理性を手繰り寄せてはひどく惨めな気持ちになり、そのくせ意に反した高揚感に頭の中がぐちゃぐちゃになる。
(どう、すれば……)
身体が望むままに触れてしまえば――例え事務的にでも処理してしまえばこの波は去ってくれるのだろうか。
ジークは間近にあった太い木に背中を預けると、震える手を伸ばし、自身の腹部に触れた。
けれども、ふと耳を掠めた鳥のさえずりに我に返り、結局それ以上下に手を下ろすことはできず、迷った末に選んだのは腰に下げた少ない手荷物の中から、一通の封書を取り出すことだった。
サシャから受け取ったそれは、四つ葉のクローバーの刻印が施された封蝋で閉じられていた。ジークはそれを強く胸に押しつけた。それに何の効果があると聞かされていたわけでもなかったが、ジークにはもう他に縋るものがなかった。
(少し……楽になった、ような……?)
ひたすら固く目を閉じ、手紙を抱き締めていると、そこからほのかなぬくもりが伝わってくる感じがした。
依然として呼吸は忙しないものの、一つ大きな息を吐いたジークは、それを単なる錯覚かもしれないと思いながらも、心の中で幾分ほっとした。ほっとするとたちまち全身から力が抜けて、思わずずるずるとその場に座り込んだ。
一度座ってしまうと、きっとすぐには立てないと、予感がするのにあらがえなかった。今するべきは、とにかくサシャの言う腕利きの魔法使いに会うことだと、頭では分かっているのに身体が言うことをきかない。
(寝てしまえば、何か変わるだろうか……)
次に下りてきたのは強い眠気だった。やがてジークは意識を手放した。その手の中から、封書がひらりと零れて落ちた。
そもそも、ジークの中に眠っていた、魔法使い以外の血とは、いったい何だと言うのだろう?
詳細を聞こうにも、サシャはそれを良しとしなかった。今はまだ知らない方がいいとしか教えてくれなかったのだ。理解すれば理解するほど、血の効果は強く表れてしまうからと。
しかし、実際にはそれを理解するまでもなく、すでにジークの身体はまるで自分のものではないような状態になっていた。サシャのかけた抑制魔法の効果も完全に切れてしまったのだろう。
「…っは、ぁ……っ」
瞳の際から涙がこぼれる。身体中が熱くてたまらない。もうこれ以上は我慢できない――。
気がつくと下着の中には濡れた感触が広がっていた。あふれ出した雫が布地にはしたない染みをつくっているのは見るまでもなく明らかだった。
理性を手繰り寄せてはひどく惨めな気持ちになり、そのくせ意に反した高揚感に頭の中がぐちゃぐちゃになる。
(どう、すれば……)
身体が望むままに触れてしまえば――例え事務的にでも処理してしまえばこの波は去ってくれるのだろうか。
ジークは間近にあった太い木に背中を預けると、震える手を伸ばし、自身の腹部に触れた。
けれども、ふと耳を掠めた鳥のさえずりに我に返り、結局それ以上下に手を下ろすことはできず、迷った末に選んだのは腰に下げた少ない手荷物の中から、一通の封書を取り出すことだった。
サシャから受け取ったそれは、四つ葉のクローバーの刻印が施された封蝋で閉じられていた。ジークはそれを強く胸に押しつけた。それに何の効果があると聞かされていたわけでもなかったが、ジークにはもう他に縋るものがなかった。
(少し……楽になった、ような……?)
ひたすら固く目を閉じ、手紙を抱き締めていると、そこからほのかなぬくもりが伝わってくる感じがした。
依然として呼吸は忙しないものの、一つ大きな息を吐いたジークは、それを単なる錯覚かもしれないと思いながらも、心の中で幾分ほっとした。ほっとするとたちまち全身から力が抜けて、思わずずるずるとその場に座り込んだ。
一度座ってしまうと、きっとすぐには立てないと、予感がするのにあらがえなかった。今するべきは、とにかくサシャの言う腕利きの魔法使いに会うことだと、頭では分かっているのに身体が言うことをきかない。
(寝てしまえば、何か変わるだろうか……)
次に下りてきたのは強い眠気だった。やがてジークは意識を手放した。その手の中から、封書がひらりと零れて落ちた。
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