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12.自覚と認識
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一通りの話が終わり、少し出てくるといってアンリが席を立った後も、ジークは放心状態のままその場から動けなかった。立ち上がることもできず、一人テーブルにぽつんと取り残された状態で、気がつけばすでに30分――。
その間、頭の中を巡っていたのは、説明は受けたもののいまだ飲み込みきれない情報の数々だった。
見つめられると何もかも見透かされそうなアンリの瞳は、髪色に近い深い朱色をしていた。そこから極力目を逸らさないように努めながら、ジークは真面目に話を聞いた。
ジークなりに理解しようとはしていたのだ。少しずつでも咀嚼して、何とか飲み込めたこともある。それでもまだどこか他人事のようで、全てにおいて「はいそうですか」という気にはなれないでいた。
「……まだここにいたんですか」
アンリに続いて部屋を出ていたリュシーが、新たなポットを手に戻ってきた。
それに気付いたジークははっとしたように瞬いて、更なる助けを求めるようにリュシーを見る。顔面は蒼白となったまま、眼差しはどこか捨てられた子犬のようにも見えた。
リュシーはひくりと口端を引き攣らせ、はぁ、と息を吐いてから、ジークの傍へと足を進めた。
「考えても分からないことは考えなければいいんですよ」
「え……?」
「何も考えず、あ、そういうことかって、受け入れてしまえばいいんです」
当たり前みたいに言いながら、リュシーはとっくに空になっていたジークのカップに新たなハーブティを注いでいく。柔らかな湯気と共に、先ほどとはまた違う、少しだけスパイシーな香りが立ち上った。
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