非日常的日常は平穏とは言えない~間違って覚醒したのが淫魔の血ってどういうことですか?~

市瀬雪

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20.束の間の

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 何度もそそがれた熱に溺れて、空が白んできた頃にようやく戒めリボンが解かれた。そうして、堰を切ったように白濁をほとばしらせたところで、ぷつりと記憶が途切れている。

 ただし、薬の効果もあるのだろう。それまでの――薬を飲まされ、覚醒してのことは信じられないくらい鮮明に覚えていた。




(……俺、…………)

 〝出さずとも〟の先を、ジークは身をもって知った。
 出さずに、とは、文字通り吐精せずに達することだった。
 それをあの夜、くどいくらいに叩き込まれて、終いには半ば挿れられているだけで達きっぱなしになっていた。

(あんな……あんな)

 思い出す度、勝手に顔が赤くなったり蒼くなったりしてしまう。
 当面はアンリの姿を見ただけで、羞恥のあまり腰が砕けそうになっていたくらいだ。

 ……もちろん、アンリの方はまるで何事もなかったように平然としていたけれど。



(っていうか……あれって、もしかしたらアンリさんも、発情期ヒート中……だったりしたのかな……?)

 就寝前、ジークはいつかのように見慣れた天井をぼんやり眺めていた。

 確かにあの日のアンリは執拗だった。察しがいいとは言えないジークでもそう違和感を覚えるくらい、触れ合う肌から伝わる体温も熱かった。

 挙句――。
 いつもお前に付き合ってやっているのだ。たまには私に付き合え。
 と、揶揄からかうように囁かれたあれも夢ではない……。

 カヤからアンリも淫魔の血を持つと聞いてはいたものの、その確認まではできていなかった。けれども、あの日のアンリはやはりそのせいだろうとしか思えなかった。

(本当に、淫魔……なんだな、アンリさん……も……)

 結局は同じ血を持つ者だから――ということなのかもしれない。
 アンリ本人からはっきり告げられたわけでもないのに、それは徐々に確信めいたものに変わっていった。
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