悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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私、イヴァ・クレマーは幼児だった時から少しずつ前世の記憶を思い出しその記憶から知恵をもらって家の為に働いた。

私の家は商会をやっていて私が生まれた時から経営がどんどん悪化していったらしい。

その上領地内で作物の不作が多々起こり辺境伯という爵位すら危うくなった
私は家と領地を守る為必死に働き何とか立て直す事に無事成功。



色々とひと段落してやっとゆっくりできる時間をしっかり取れるようになって気付けば私は20歳になっていた。

この世界で20歳になっても結婚どころか婚約者すらいないのは所謂生き遅れであり世間では【守銭奴令嬢】なんて呼ばれているらしい。

(まぁ間違ってはない…な商会を安定させる為に働きまくってたし)


両親はそんな私に申し訳なさそうで絶対良い相手を見つけてくるからと張り切っていた。

そんな矢先の事
王家主催のパーティーがあり久しぶりに参加する事にして上等なドレスを着て化粧をして髪をセットする。


久しぶりの何の情報収集もしなくていいパーティーに私は浮かれていた。




こんな事になるなんて微塵も考えていなかった。

「ヒューゴ・ガンダー公爵令息!貴方との婚約を破棄させてもらうわ!」
(っ!?)女性の甲高い声に体が跳ねる。


「私の友人であるブライスに悪質な嫌がらせをした罪!償いなさい!」
(あれは…アシュリン王女様?)

このハワード王国の王女殿下が目の前の男性を睨み付けていた。

「お待ち下さい!俺は彼に嫌がらせをした覚えはありません!何かの間違いです!」
睨まれている男性が声を張り上げる。
彼がヒューゴ・ガンダー公爵令息か。

(ん?なんだか見覚えがあるような…


どこかの社交会で会ってる?いや参加しても大体商会の商品の営業に来てたから同世代の男性と話した覚えはないもしあったとしても覚えているはず)


頭を必死に回転させた。
そして漸く彼の事を思い出す。

(ヒューゴ・ガンダー!!前世の友達がどハマりしてた恋愛小説のキャラだ!)

友達に勧められ読んでみた事があった。
今の今まですっかり忘れていて内心慌てる。

(待って!!確か…彼って冤罪で断罪されるんじゃなかった!?)
少し考え込んでいると話がとんとん拍子に進んでいた。


「お父様に全て報告させてもらうわ!今夜は家に帰って大人しく処罰を待っていなさい!」「あっあの…」
「アシュリン様!そんな!」

スタスタと会場を後にする王女殿下。
側にいたご友人ことブライス殿は何か言いたげにしながら後を追う。


会場中がザワザワと騒がしい中彼は絶望の顔で放心していた。
その目は何も写していない。


「嫌がらせ?ガンダー公爵のご子息が?」「ブライス殿と言ったら神の祝福を受けたとされている平民では?」「確か王女と良い仲なのではと噂されてはおりましたが…」「国王陛下はご存じなのかしら?」


この状況に混乱する参加者達。
私は彼から目が離せなかった。
(どうしよう?こんな事になるなんて)
このままではよくない、彼の家族は一体何をしているの?、国王陛下はまだこないの?、早く早く彼を。


(ええい!どうせ守銭奴令嬢で通ってるんだから今更悪い噂が増えた所で!)


私は足を進める。
彼の元へ。


好奇の自然に晒されるがそんなの知った事か。

「ガンダー公爵令息様、失礼ながらよろしいでしょうか?」
本来なら爵位が下の人間から話しかけるのはマナー違反だ。
しかし今はそうは言ってられない。

「…君は?」
「イヴァ・クレマーと申しますクレマー辺境伯の娘です。突然話しかけてしまって申し訳ありません

ただ今の話、事実なのでしょうか?」


今度は会場中が静まり返る。
今それを聞くか?と言わんばかりの顔をしている人がいっぱい…


「っ!違う!俺は何もしてない!」
「ええそうでしょう、ならば!胸を張って堂々と立ってくださいませ。

貴方は公爵家の人間なのでしょう?」
私の言葉にハッとしたように目に光が戻った。


「…ありがとう」
「いえお礼を言われる程の事はしておりませんこれからが大変でしょう…どうか頑張ってくださいませ私などに言われたくはありませんでしょうが。


汚名に負けないでください」

私はカーテシーをし彼から離れる。


(…色々言い過ぎたかもしれん)


帰ろうかと考えていると国王陛下が会場に入り王女が会場を騒がせてしまった事の謝罪とパーティーの中止宣言を口にした。


「ごめんなさいあんな事をして」
「確かにびっくりしたけれどかっこよかったわよイヴァ」
「流石私達の子だよ…しかしガンダー公爵家の嫡男くんは災難だったな」
両親と合流し帰路に着く。



まさかその数日後に王命で彼と婚約する事になるとも知らずに…


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