3 / 55
2.突然の婚約破棄_ヒューゴ視点_
しおりを挟むパーティーでいきなり叩き付けられた婚約破棄、理由はアシュリン様の友人であるブライス殿への悪質な嫌がらせ。
全く身に覚えがない。
そもそも俺はブライス殿と個人的に会った事などない上何故そんな事をしなくてはならないのか。
彼はこの国でたまに存在する神からの祝福を受けた人間だ。
だからこそ王族が保護し祝福を受けた者に与えられる"ベネット"という家名をもらい貴族として扱われている。
平民であったが故に貴族の礼儀や勉強に付いていけていない所はあるが努力を重ねている事は俺の耳にも入っていた。
慣れない環境に適応しようと努力する彼
尊敬するべき存在である。
そんな彼に嫌がらせをするなんて事俺がする訳がないのにアシュリン様は聞いてくれない。
(あぁ…またこれか)
俺と彼女は幼い頃から婚約者だったがどうも昔から人の話を聞かず一度思い込んだらもう止まらなくなるのだ。
「私とブライスが親しげにしていたから嫉妬したのでしょ!」
「いえ、ですから」
「お黙りなさい!!いくら婚約者でもやっていい事と悪い事があるわ!」
俺の言葉を一刀両断しひたすら罵倒してくる。
その隣でオロオロと狼狽えているブライス殿、あぁやはり
(この婚約破棄はアシュリン様の完全な独断か国王陛下と父上になんと言えば)
頭を抱えたい。
これが個室で行われているのならまだしもここは王家主催のパーティー会場のど真ん中、彼女の発言を国中の貴族が聞いている状況だった。
(どうしようもない…これでは本当に俺が嫌がらせをした事にされるのでは?)
その考えに至り必死に否定したがやはり聞いてくれるはずもなく。
「お父様に全て報告させてもらうわ!今日は家に帰って大人しく処罰を待っていなさい!」「あ、あの…」
「アシュリン様!そんな!」
彼女はスタスタと奥へ行ってしまい何か言いたげなブライス殿はそれを追い掛けていく。
俺は呆然とするしかなかった。
そんな俺に1人の女性が近付いてくる。
クレマー辺境伯の1人娘だと名乗った。
(じゃあこの令嬢が噂の【守銭奴令嬢】?)
美しい黒髪、少し吊り目な紫眼。
凛とした表情、よく似合っている紫色のスレンダーラインドレス。
そこにいたのは金にがめつく性根が腐った女という噂とは違い気が強く見えるが誠実そうな令嬢で彼女は俺にさっきの話は事実かと聞いてくる。
俺は咄嗟に大声で否定した。
そうすると彼女は
「ええそうでしょう、ならば!胸を張って堂々と立ってくださいませ。
貴方は公爵家の人間なのでしょう?」
と言ってくれて混乱していた頭を冷やしてくれる。
(あぁ何もしていないのだから堂々としていればいいなんてすぐ思い付かないとはな…)
気付かせてくれた彼女に「…ありがとう」と礼を言うと
「いえお礼を言われる程の事はしておりませんこれからが大変でしょう…どうか頑張ってくださいませ私などに言われたくはありませんでしょうが。
汚名に負けないでください」
そう言って彼女は離れていった。
(私などに言われたくはない…汚名に負けないで…まさか守銭奴令嬢というのは)
彼女の家は商会をやっている。
考えてみれば彼女が金を第一に考えるのは当たり前だ。
(そうか君も…君のような気高い令嬢に言われては頑張らなくてはな)
どんな事になっても頑張ろうと決めていたのに。
俺はそのまま自宅に帰り父上からの呼び出しを待つ。
3時間程経ち帰ってきた父上に呼び出され書斎に入った。
「ただでさえ臆病者でこの家に相応しくなかったというのに王女との婚約を破棄されるとは…そんな人間がこの家の嫡男のままでいていい訳がないっ!この家は有能なオーウェンに継がせる!
この家の2度とこの家に帰ってくるな!せいぜい守銭奴令嬢に媚びを売るんだな」
身に覚えのない罪で俺が有責となり婚約は正式に破棄されイヴァ・クレマー辺境伯令嬢の元へ婿入りする事となる。
(頑張ってくれと汚名に負けないでと言ってくれた君に迷惑をかける事になるとは…心底申し訳ないな)
数日後俺は申し訳なさに押し潰されそうになりながらクレマー辺境伯の元へ向かう馬車に乗る。
491
あなたにおすすめの小説
【完結】すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ
エレインたちの父親 シルベス・オルターナ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?
ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」
華やかな夜会の真っ最中。
王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。
「……あ、そうなんですね」
私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。
「で? 次のご予定は?」
「……は?」
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる