悪役令息(冤罪)が婿に来た

８．ベイリー侯爵令嬢の事

「そう言えば…レイラ様はお元気でしょうか？」
「丁度昨日手紙が来たの！元気みたいだわ！」

　レイラ・ベイリー侯爵令嬢。
　私より2歳年上の文武両道才色兼備を体現したような優秀な令嬢でエリザ様に似た美しい容姿。

（思い返してみれば確かレイラ様小説に出てたと思うんだけど）
　エリザ様の顔を見て少し思い出した。
　レイラ様が描かれた挿絵があったような気がする。
（そりゃそうだよねだって…

　レイラ様はこの国の王太子の婚約者だし小説に出てきてない訳ない）


「2ヶ月前からペレス王国にいらっしゃるんですよね？」
「ええ王太子殿下に着いていって視察にね」
　ペレス王国とは鉱業で栄えている隣国
　視察とは一応建前で鉱物の輸入や繊細な加工技術を取り入れる事が目的だそうだ。


「あの、今回の事はレイラ様と王太子殿下はなんとおっしゃってるんでしょうか？そもそもご存知で？」
「陛下から速達で手紙を貰ったそうよ王太子殿下は…アシュリン王女殿下に相当お怒りみたいね当たり前でしょうけど」
呆れた、と言わんばかりの表情で言い捨てる。
言葉には出さないが私も同意見だ。


（そう言えば…アシュリン王女殿下ってあんな感じだっけ？）
小説の内容を詳しく思い出してはいないがなんだかあのパーティーでの彼女の言動に違和感がある。

「ヒューゴ様に私との婚約が成立したという事は今アシュリン王女殿下は婚約者がいない事になりますよね？」
「ええ！国王陛下ったら何を考えているのかしらね…ガンダー公爵家以外に嫁がせるのは現状難しいと思うのだけれど」
この国の規模はそれなりに大きい。
それ故に王女を嫁がせるのに条件が合う家は他にもあるにはある。


しかし何事にもパワーバランスというものがあるのだ。

王族の人間を同じ家にばかり嫁がせるなんて論外である。
だからこそアシュリン王女殿下の嫁ぎ先はガンダー公爵の嫡男と決まっていた。

「…国王陛下はどうなさるおつもりなんでしょう」
「本当にどういうおつもりなのかしら」


2人してため息を吐く。
「まぁ順当にいけばオーウェン様になるでしょうけどねぇ」
オーウェン様は17歳、アシュリン王女殿下は18歳年齢的には問題はない。

（そう年齢的には…だけど問題は


納得する人間がどれだけいるか）


ヒューゴ様が本当にブライス殿に嫌がらせをしたと思っていたとしてもいきなりオーウェン様がガンダー公爵の嫡男となりしかも王女の婚約者になるなんて納得する人間は少ないだろう。


「…なんだかオーウェン様が気の毒になってきました」
「いきなりとんだ面倒事に巻き込まれたものね」

貴族である以上そういう面倒事にも関わらないといけないがあまりにも急過ぎだ。

「まぁ何かあったらいつでも言いなさい絶対に助けてあげるなんて言えないけれどできる限りの事はするわ」
ニコッと笑ってそう言って下さり心が軽くなる。


「ありがとうございますエリザ様」
精一杯のお礼を伝えて私は帰宅した。


（知りたい事は知れたけどこれからどうしよう…結局今の状況の打破できるものじゃなさそう）


仕事をする為自分の部屋へ向かう。

「イヴァ様！お手紙が来てます！」
白い封筒を持ってミラが追いかけてきた
「あら？どなたから？」


「それが…


オーウェン・ガンダー公爵令息様からで」

「…はっ！？」