悪役令息(冤罪)が婿に来た

９．ヒューゴ様の思い

手紙を急いで開き内容を見る。
内容を簡単に要約するとこうだ。

突然手紙を送って申し訳ないとどうしても兄に会いたくて訪問する許可がほしいと。

「…どうしましょう」
私個人としては来てほしい所だがまずはヒューゴ様に確認しなくては。

（…でも大丈夫かしら未だに部屋から出て来てないし）


ヒューゴ様の部屋へ向かいながらもウジウジと考え込んでしまう。
自然と歩く足が遅くなった。


今までの話を聞く限り兄弟仲が良いとは思えない。
ご兄弟の問題に私が首を突っ込む訳にはいかない為こればかりはお2人で話し合ってほしい所である。


コンコンコンッ
ヒューゴ様の部屋のドアをノックした。
「ヒューゴ様、少し宜しいでしょうか？お手紙が届いておりまして」

ゆっくりとドアが開き久しぶりにヒューゴ様の顔を見たと思う。

少し窶れているように見えた。


「手紙…誰からだ？」
「弟さん、オーウェン様です。貴方に会いたいから訪問の許可をくれないかと」
オーウェン様の名前を出した瞬間目を見開き固まる。


（まぁそんな反応にもなりますよね…）
恐らく今聞きたくない名前だとは思うが話をしない訳にもいかない

「…オーウェンが」

数十秒の沈黙の後、弟の名前を呟いた。
「ヒューゴ様正直に話して下さい。嫌なのであれば許可は出しません」
目を見てハッキリそう伝える。


「話を、聞いてもらっていいだろうか？」
「はっはい！勿論です！」
手招きされ部屋の中に入った。

椅子を引いてくれたのでその椅子に座り彼は向かいの椅子に座る。


「まずは…今まで何も言わず部屋に篭ってしまってすまない」
突然頭を下げて謝ってきた。
「いえ！とんでもない！私が不躾な事を言ってしまったと」
私も謝ろうとすると彼は首を横に振る。


「違うんだ！…今までずっと考えていたんだ俺が父に似ていれば認めてもらえたんじゃないかって。


もう少しぐらいっ息子として愛してもらえるんじゃないかって」
「……」何も言えない。
ヒューゴ様の表情があまりにも悲痛で言葉が出なかった。


「君がたったそれだけの理由だと言った時頭が真っ白になってしまった。俺が長年苦しんで来た理由が他者から見ればたったそれだけの事だったんだと。

俺はその"たったそれだけ"の理由であんな思いをしてきたのかと」
「ヒューゴ様…」
グッと手を握り締めて感情を少しずつ吐露していく。

「必死に役に立とうと血を吐くような訓練をして認めてもらえるように策を考えて勝手に決められた婚約者の機嫌を取って…結局全部全部無意味だった一体俺の人生とは何だったんだ」


その目から光が無くなった。
もしや私は彼の特大地雷を踏んでしまったのでは。

（彼が今まで生きてきた上で前提としてきた事が覆ったような状態だし…ど、どうしたらいいんでしょう）


「滑稽だろう？愛されるどころか存在を疎まれているというのに」

自嘲の笑みを溢す彼の手を咄嗟に取る
「滑稽だなんて思いません！」


堪らず叫んだ。


「ヒューゴ様！子供が親に認めてほしいと愛してほしいと願うのは当たり前の事です！私は貴方の過去についてまだ少ししか知りませんが貴方今までやってきた事は決して無意味なんかではありませんわ！そんな貴方をちゃんと見ている人は必ずいるはずです！


そしてこれからは私もそこに加わります！」「イ、ヴァ」

彼に届くように言葉を紡ぐ。