悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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10.オーウェン・ガンダー公爵令息

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ヒューゴ様の目に光が少し戻る。
(少しは元気になってくれたのかな?)

「…はっ!申し訳ありませんはしたなかったですね」
感情の赴くままに叫んでしまった。
貴族令嬢らしからぬ事である。
「確かに貴族令嬢としては駄目な行動だったかもしれないが…とても嬉しかった。


ありがとうイヴァ」
控えめだけれど朗らかに笑った。
(うっ!美形の笑顔が眩しい)

「オーウェンに会ってみようと思う」
「…よろしいのですか?」
正直心配でしかない。
ヒューゴ様の精神的な部分もそうだがその上オーウェン様が一体どんな用でくるのか分からないのだから。

「考えてみればあいつとちゃんと会話した事があまりなかった。オーウェンの事を気にする余裕がなかったんだ…今ならばガンダー公爵家の人間としてではなくただの兄として話せると思うんだ」
「…では!オーウェン様にすぐお返事を書きますね!」
私はその後すぐ返事の手紙を書きガンダー公爵家へ送る。




そしてその3週間後、オーウェン・ガンダー公爵令息が家に来た。

ヒューゴ様より体格がよく筋肉質な印象を受ける体型でまさしく武人らしいお姿。

「イヴァ・クレマー辺境伯令嬢、突然の兄との婚約の件といい今回の訪問の許可といいこの度は申し訳ない」
目が合って開口一番そう頭を下げられる。
「い、いえ!貴方様が謝る事ではございません!どうか頭を上げください!」


(なんだろう凄いデ、デジャブ…?)
もの凄く覚えのある展開に驚きつつまた同じように慌てた。

「その、兄は?」
「応接室で待っていますご案内しますね」

ヒューゴ様が待つ部屋まで歩く。



コンコンコンッ
「ヒューゴ様、ガンダー公爵令息がいらっしゃいました」「…入ってくれ」
扉に手をかけた。
心音がどんどん大きくなっているような気がする。

これから話すのは私ではないのに緊張して息が詰まりそうだった。

(…いいえ大丈夫何があっても私はヒューゴ様の味方よ)
扉を開けオーウェン様を部屋へ入れる。
そのまま退散しようとしたがヒューゴ様に呼び止められた。

「イヴァ少し待ってくれ」
「?はい」
どうして?と思いながらその場に止まる。


「オーウェン…彼女もここにいて構わないか?恐らくだが今からお前が話す内容は彼女にも関係があるだろう?」
「えっ私?」
ヒューゴ様が冷静に言った言葉にオーウェン様が少し驚いた様子で頷いた。


「流石です兄上。確かに彼女にも関係がある話をしようとしていました…自分からも頼みたいクレマー辺境伯令嬢どうか同席してほしい」
「…分かりました僭越ながら同席させていただきます」

対面しているソファ座り向かい合う構図になっているご兄弟。
勿論ヒューゴ様が座っている方のソファに座る。


侍女を部屋に入れて飲み物をテーブルに並べていった。


「まず、どこから話しましょうか」
少し迷っているような素振りを見せて一呼吸置きオーウェン様は話し始めた。

「兄上…


あの屑親父を止められず申し訳ない」


「「…え?」」
今のは聞き間違いだろうか。
オーウェン様の口からとんでもない単語が飛び出してきたような。


「本っ当にあの屑は兄上の策の重要性が分かっていない…何度も何度も兄上の話をちゃんと聞けと兄上の策は必要だと言ったのにっ」
オーウェン様はよほど鬱憤が溜まっていたのかペラペラと話し出した。

「オー、ウェン?」
「はっ!失礼しました…ついあの男への愚痴が溢れて」

よく見ると目の下に薄ら隈がある。
(なんだかとても疲れていらっしゃる?ガンダー公爵家で何があったの?)


「オーウェン…お前はそんな風に思ってくれていたんだな」
ヒューゴ様が目を伏せた。

「お前にとって俺は良い兄ではなかったろうに」



「…そんな事は決してありません!」
力強い声が部屋中に響く。

「確かに自分達は幼い頃からまともに話せない環境下で育ちました!家の中で直接会う事もできず兄弟とは呼べない距離感だったでしょう!それでも…


自分にとって貴方は憧れの兄です!」

ヒューゴ様の目を見てそう言うオーウェン様は驚く程真っ直ぐだった。
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