悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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11.兄弟の仲

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オーウェン様は自身の過去を話し始める。

「俺はただ正面から戦う才が人よりあっただけです。あの屑親父にとってはそれが重要だったんでしょう。幼い頃から兄上と引き離されひたすら戦う術を叩き込まれて…正直言って辛かったです。

誰かと遊ぶ事も学を身に着ける事もできませんでした」
「そう、だろうなあの様子では」
ヒューゴ様は覚えがあったのか片手で頭を抱えた。


「何度か父上にお前の教育について口を出した事がある…あまりにも訓練ばかりさせているからせめて公爵家の人間としての教育を受けさせた方がいいとそうしたら、


この家の事は全てお前がやればいいと」
「何と、言えばいいか」
とんでもない事を聞いてしまった気がしてつい口を挟む。
「えっ?えっと…口を挟んでしまって申し訳ありません。つまりオーウェン様は公爵家の人間としての教育を受けさせてもらっていないにも関わらず今、無理矢理公爵家の嫡男にされてしまったと」
「そういう事です…あの屑親父は一体何を考えているのやら」

ガンダー公爵の考えが全く分からない。
100歩譲ってヒューゴ様が公爵家の跡継ぎとしてあのままガンダー公爵家にいればオーウェン様の事は別にそれで構わなかったのかもしれない。


しかし状況は変わってしまった。

「ますます分かりませんわ…ヒューゴ様と私の婚約を押し進めたのは公爵なのですよね?」「そうだろうな」
私の言葉を2人が頷いて肯定する。

「王女殿下に婚約破棄されて怒ったとしても公爵家の嫡男として教育を受けてきたヒューゴ様をわざわざ跡継ぎが私しかいない辺境伯家と婚約させたなんて…ガンダー公爵家にとって大損失になってませんか?」
「ええ!ええ!その通りでございます!」
オーウェン様がすぐ同意してきた。


「それだけ…父にとって俺は目障りだったんだろうな」
ヒューゴ様は悲しそうにそう言う。

「兄上それも、あったかもしれませんがあの男はそもそも直情型かつ考え無しな所がありますから…だからこそ自分は兄上に憧れていました。


兄上は俺やあの男にない聡明さも冷静さも持ち合わせている人です」
「オーウェン…俺はお前の強さが羨ましかったよ心の底から」感情を押し殺すように自身の手を強く握り締める。


「どれだけ酷い人間でも俺にとってはたった1人の父親だったから愛されたかった俺の存在を認めてほしかったっ身勝手なのは分かってる。お前が悪くないのは誰よりも理解している…それでも俺はお前に良くない感情を持ってる」

「それで構いません兄上…お互い様です自分も貴方が自由に見えていましたから」

お互いに目を合わせ苦笑いをした。

「兄上、それでも自分は貴方とちゃんと兄弟になりたい。どれだけ時間がかかっても今まで向き合えなかった分向き合いたいのです」
「オーウェン…お前がそこまで望んでくれるのなら俺はそれに応えたいと思う」


そっとヒューゴ様が手を差し出す。
その手の意味に気付いたオーウェン様が恐る恐る手を伸ばした。


ゆっくりと手を握り合う。
それは今までまともに話す事も触れ合う事も出来なかった兄弟が漸く話し触れ合えた瞬間だった。


(…良かった本当に良かった)
完全なる和解という訳ではないのかもしれないが確かに私の目の前で長年お互いを知る事すら叶わなかった兄弟がお互いを知ろうとしている。

「すまないイヴァ、君を放置してしまっていたな」
「あっ!申し訳ない!イヴァ嬢」
「いいえ!気にしないで下さいませ」

(とてもいいものを見せてもらいましたので!!)


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