悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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13.前世の事

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頭の中がふわふわする。
ここはどこだろう。

目を開けると教室の中。
(…あれ?私何してたんだっけ?)
ボーっとしていると急に話しかけられた。

『ねぇちょっと!聞いてるの!?』
『聞いてる聞いてる』
私の口から勝手に言葉が出てくる。
(?どうなってるの?)
混乱する内心とは裏腹に"私"は声をかけてくる女の子に答えた。


『それでどうだった?私が勧めた小説は』『面白かったよ』
(…もしかしてこれって前世の私の記憶?じゃあ彼女は私の友達だった人?)
未だに断片的にしかない前世の記憶。
これは一体どういう事なのか。

『でしょっ!面白かったでしょ!


《祝福と共にあなたと》
略して《祝とあ》!』
『でもさぁ序盤どういう事!?ヒューゴってキャラ何も悪くないのに婚約破棄されたよ!?』
『それは私も同感…国王様は何考えてるんだろうって思ったもん。お姫様が止めてるのに婚約破棄強行しててさぁ』
"私"と友達はうんうん頷き合う。
(…お姫様が止めてる?国王様が婚約破棄を強行?)

『しかもヒューゴがその後婚約するの悪い噂流れてるって設定があるだけの辺境伯令嬢って…』
『申し訳程度に名前だけ出てるけど外見も分かんないもんね』
(えっ…辺境伯令嬢って私?)
私を置いて"私"と友達は小説よく話で盛り上がっていた。

『そうそうタイトルになってる祝福って本編に出てくる神の祝福の事なんだよね?』『そうだと思うよ?』
(神の祝福の事までちゃんと小説にあったのね)
ただ2人の会話を聞いているしかできないがもしかしたら何か重要な事を聞けるかもしれない。

『主人公の祝福って___?』
『あぁそれっぽいよね。まだ正式名称出てないから確定じゃないけど』
1部の言葉が聞こえなかったがそれよりも気になる言葉が聞こえる。

(主人公の祝福?この小説の主人公は神の祝福持ち?じゃあ

ブライス殿が主人公!?)
驚きはしたが冷静に考えるとあり得ない話ではない。
彼は神の祝福を受け王族の保護下にいるのだから。

これ以上ない程主人公らしい立ち位置にいると言って良いだろう。

(つまり彼が主人公の恋愛小説?お相手は…恐らくアシュリン王女殿下なんでしょうね)
だからこそヒューゴ様との婚約を破棄しないと話が始まらないという事か。


(…それなら最初から婚約してない設定にすればいいものを)
小説の中ならともかく今は現実なのだ。
婚約破棄によって起こる様々な問題を考えて欲しい。

『ヒューゴと弟のオーウェンがすれ違ったままなの悲し過ぎない!?』
『そ・れ・な!』
『お互いの事気にしてる癖に!悪い感情を持ってるとか言って距離取っちゃって!アイザックマジ許さん!』

(すれ違ったまま…?和解できてない?そんなっ!じゃあどうして…)


彼らは私の目の前で握手をして和解とまで言わないでもお互いに向き合えたはずなのに。
小説ではそうならなかった様子。

(小説とは違う事が起き続けてるって事?そりゃ現実なんだし出来事が変わる事はあるだろうけど本来ならあの2人はすれ違ったままなんだとしたら…


変わった理由は何?)
少しずつ頭の中がはっきりしてくる。
それと同時に目の前の光景が間違いなく自分の前世の記憶だと確信した。


そして、もし小説と起きている事が違うなら…その原因は。

(…私?)


1番考えられる原因は私自身。
幼い頃から断片的に前世の記憶を持っていた私は小説にない事をやっているはず。

思い出した限りイヴァ・クレマーという人物は悪い噂がある程度の設定しかないキャラクターなのだろう。
もし裏設定のような物があったとしても私と全く同じであるはずがない。


(もしかして…悪い噂が流れてる理由はこの設定にある?)

世界の修正力でも働いているのか。


はたまた、誰かが小説通りにしようとしているのか。



『まぁ色々言ったけどぜひとも主人公カプには幸せになってほしい所だね。


色々と苦難が立ち塞がってるし』

(えっ?)

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