悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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17.婚約者との初デート

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アンドレア王太子殿下がお帰りになった3日後。

「そ、その王太子殿下に言われたからと言って本当にデートをしなくても」
「彼に言われたからでは…いやアンドレアに言われるまでデートなんて考えていなかったから少し情けなくてな」
「情けない?」

家を出て2人で町を歩く。
(ど、どうしましょうまさかヒューゴ様とデートする事になるなんてっ)
緊張で心臓がどうにかなりそうだ。

「君との関係は良好でありたいと思っているのにデートすら考えつかなかった事が情けないんだ」
「そんな事…気にしませんよ」
大体私達の婚約は王命から始まってますしとまでは流石に言わない。

彼は眉を下げて腕を腰に当てる。
「君が気にしなくても俺が気にするんだ。デートなんだから…腕でも組もう」
「えっ!?腕を組む!?」
(それはつまりその腕に私の腕を絡ませるという訳で…恥ずかしいからやめておきたいけど断るのは良くないわよね)


彼の腕に恐る恐る自分の腕を伸ばした。
ぎこちない手付きで腕を絡める。

「これで、よろしいでしょうか」
ヒューゴ様は私をジッと見た後笑った。
「あぁ…とても可愛らしい顔をしているぞイヴァ」「揶揄わないでくださいまし!」
顔が真っ赤になっている自覚はある。


様々なお店が並ぶ道を歩く勿論腕を組んだまま。
(お店を見る余裕なんてないっ婚約者なんだからおかしな事じゃないけど!けど!恥ずかし過ぎる!ほら!すれ違う人達の中に微笑ましい顔してる人だったり「あらあら~」とか言ってる人いますよ…うぅヒューゴ様ぁ)
前世で恋愛をした記憶は今の所ない。
なのでこんな風に異性と腕を組みながらデートなんて初めての事だ。



「イヴァあの店は何の店なんだ?」
「えっ?あっ…あれは雑貨店ですね。入ってみますか?」
彼が頷いたのを確認しお店の中に入る。


「おや?イヴァ様じゃあありませんか!」
私と目が合った店長は笑顔で迎え入れてくれた。
「こうやってお店に訪れるのは久しぶりですね…調子はいかがですか?」
「イヴァ様のおかげで右肩上がりですよ!そちらのお方は?」
店長の視線が隣にいるヒューゴ様に移る。

「えっと…この方は」
「イヴァの婚約者のヒューゴと申します」
何と言えばいいのか言葉に詰まるとヒューゴ様がそう名乗った。


「なんと!イヴァ様の婚約者!?それはお祝いしなくては!!」
「ちょっ!ちょっと落ち着いてくださいませ店長さん!」
興奮しながらお店の奥に引っ込んでしまう。

「…知り合いなんだな?」
「はいこのお店は我がクレマー商会の系列店なので店長さんとは面識があるんですよ」
我がクレマー商会は様々な商品を平民でも買えるぐらいの安価で販売しているその上で貴族向けの高級品も取り扱っているのだ。

このお店はクレマー商会の商品を1部委託販売してくれている。
「そうなのかすごいな君は」
「ふふふっそんな風に言われると照れちゃいますよ」

クレマー商会の経営悪化をどうにかする為私は前世の記憶を頼りに商会を立て直す方法を模索してまずはこの世界での商会としての在り方を学び前世にあった物をこの世界に通用するよう改変して商品化した。


「イヴァ様!よければ持ってってください!」

店長に差し出されたのは、小さな花の飾りが付いた栞。

「まぁ!可愛らしい栞!」
「お祝いだなんて大層な物ではありませんがプレゼントです」
「ありがとうございます!」
その栞を受け取る。

店長は上機嫌で私達の側にいたけれど他にいるお客様の迷惑にならないようお店を出た。
「プレゼント…君によく似合う紫色だな」
「よく本を読むのでとても嬉しいです」
嬉しくてついニヤニヤしているとヒューゴ様にそっと手を引かれる。

「俺も君に何かプレゼントをしたい」
「えっ?あ、あの!?」


困惑する私の手を引いたまま別のお店に入った。


「こ、ここは宝石店ですよ!」
「丁度いい君に似合う物を選ぼう」
(えっちょっ何でいきなりプレゼント…しかも宝石!?)


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