悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

文字の大きさ
19 / 55

18.婚約者からの初プレゼント

しおりを挟む
「彼女に似合う物はあるだろうか」
そう店員に話しかけた
「ええ!勿論!」
店員はニコニコしながら即答する。

「ヒューゴ様!宝石なんてそんな」
「ちゃんと俺のポケットマネーで買うぞ?君へのプレゼントだからな」
「そう言う事ではなく…そんな高価なプレゼント受け取る理由がありませんし」
これでも貴族令嬢、元々宝石を持ってはいるが数は少ない自分にお金を使う事に慣れていないのだ。


(貴族令嬢としては駄目なんでしょうけどそれに慣れちゃってるのよね)
「婚約者にプレゼントをするのに理由がいるのか?」
「そ、それは…確かに」
考えてみれば婚約者にプレゼントをするのは普通の事だと思う。
(でも…でもなぁ)

うんうんと唸る私にヒューゴ様は苦笑いをした。
「ここは俺の顔を立たせてくれないか?」
「そう言われると…分かりました」

私が受け入れるとヒューゴ様は店員と話し込み始める。


(宝石店なんて久しぶりに来たわ全然記憶にないけれど…あら綺麗)
ガラスケースの中に並べられている宝石達に見入った。


ピアス、イヤリング、ブレスレット、ネックレス等。
美しい宝石を引き立たせるようにカットされ装飾されている。

(確か婚約者の色を身に着ける時に使う事が多いのは宝石だったとか)


「これにしよう…会計を」
「はい!」
私が少し考えている間にお会計に行ってしまった。


「お買い上げありがとうございました!」


(本当に買ってしまった…)
お会計を済ませてお店を出る。
「折角だからな食事でも行こう。そこでプレゼントさせてくれ」
「は、はい」
差し出された手を取って繋ぎ今度は飲食店を目指した。



入ったのは平民から貴族まで幅広い層に向けて営業しているレストラン。
「実は言うとこういう場所に来るのは初めてなんだ…家族とは来れなかったからな」少し悲しそうに言う彼。

「では…これから沢山私と来ましょう。ここだけではなくもっと他の場所も」
そう笑いかければヒューゴ様は目を見開いてから笑ってくれた。

「…そう言ってくれるのは本当に嬉しい君とならどんな所に行ってもきっと楽しいだろう」
「お任せくださいませ。意地でも楽しませてみせますわ!」
笑い合いながらメニューを決めていく。

私はパスタを、ヒューゴ様はステーキを頼み料理が運ばれるのを2人で世間話をしながら待った。



15分程経って「お待たせしました!」
料理がテーブルに並べられる。

「っ!?鉄板のまま出てきた」
「あぁこういうお店では鉄板に乗せて出されるんですよ…熱いので気を付けてください」
彼は私の言葉に頷きつつカトラリーを手に持ち食べ始めた。


「っ…美味い」眉毛が下がり表情が緩む。
(ヒューゴ様は美味しい物を食べると顔付きが変わりますね…可愛らしい方)
そんな彼を微笑ましく思いながら私も食べ始める。

「美味しいですね」「あぁ!」
レストランで2人、笑いながら食事をしている穏やかな時間。



今までずっと仕事に明け暮れてきたそれを後悔なんてしてない。
家の為だったし何より自分が選んだ事だった。
その気になれば前世で得た知識なんて隠してただの子供として振る舞い何もかも素知らぬふりだってできたのである。
しかし出来なかった。


両親を助けたくて家を守りたくて。


(別に婚約者が欲しかった訳ではないけどこんなひと時を過ごせるならもっと早くに…

いえ穏やかな時間を過ごせるのはきっとヒューゴ様のおかげね)


食事を終えるとヒューゴ様は箱を差し出してくる。
「もしかしてさっきのお店の?」
「あぁ君に似合うと思って選んだ…

どうか受け取ってほしい」
「…はいっ」箱を受け取りそっと包装を解いていった。


箱の蓋を開ける。
「まぁ!素敵…」
箱に入っていたのはアメジストがついたネックレスだった。

「…気に入ってくれたか?」
「はい!とっても綺麗です!」
美しく装飾されているそのネックレスに感嘆の声をあげる。

「よ、良かった女性にプレゼントするのは初めてで緊張していたんだ。ほんの数十分だったが」
「凄く気に入りましたよ安心してください…ヒューゴ様よろしければですが、

このネックレス私に着けてくれませんか?」
私の言葉に彼は驚きつつも優しく笑って椅子から立ち上がった。

「勿論」彼の手にネックレスを渡し少し身構える

カチッ

首元にネックレスがつけられた。
「やはりよく似合う…そのアメジスト


君の瞳のようだと思ったから選んだんだ」

「…ありがとうございますヒューゴ様」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ エレインたちの父親 シルベス・オルターナ  パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...