悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

文字の大きさ
21 / 55

20.クレマー家の事

しおりを挟む
ヒューゴ様との初デートはあまりにも穏やかに楽しく終わった。

彼からもらったネックレスは大事にしまいたい所だが折角婚約者から頂いた物なのだから身に着けなければと思いあれから毎日着けている。

不思議なものでこれを着けているだけで気分が上がりつい顔がニヤけてしまって完全に浮かれていた。



「幸せそうで何よりだよ」
「はっ!失礼しました。お父様」
今は仕事の関係でお父様に着いてきたのだから気を引き締めなくては。


商品を委託販売する先を更に増やす為の商談終了後帰り道に馬車の中で世間話をする。
「思っていたよりもずっとヒューゴくんと仲良くやってるようで安心したよ」
私は微笑ましいものを見る目で見られて少し照れてしまう。

「はいヒューゴ様はとても優しくて素敵な方で…ん?ヒューゴ?」
呼び方に違和感を感じると父はすぐ答えてくれた。
「この間彼からぜひそう呼んでくれと言われてね義理の息子になるのだからと」
「ぎ、義理の息子!?」


(な、何を驚いているの私このままいけばヒューゴ様と結婚するんだから!そりゃそうなるでしょ!)
頭では分かっている。
だがいまいちまだ実感がないのだ。

彼と婚約者になってからまだ3ヶ月弱、ただの顔見知りから仲の良い友人ぐらいにはなれているとは思う。
「…イヴァには今まで本当に迷惑をかけてしまった」「お父様?」



「同じ年の令嬢達がおしゃれに夢中になりお菓子に心を躍らせて婚約者を決めていく中、お前は家を立て直す為にひたすら頑張ってくれた。子供が考えたとは思えない案を次々と出しそれを実現させる為に様々な手を使い今、こうやってクレマー商会は立て直された。


本当に感謝しているんだイヴァ」
「突然どうなさったの?その事に関して謝るのはやめてください。私が自分で決めた道です」
私の言葉に父は目を閉じゆっくり言った。

「例え、お前に隠している事があったとしても私達はそれを詮索したりはしないしかしこれだけはちゃんと分かっていておくれ…この婚約含めこれからどんな事になっても私達はイヴァの味方だよ」
「お、父様」
あぁ父は気付いている。
私がただの子供ではなかった事を。


「イヴァが生まれたばかりの頃信じていた人間に裏切られ経営破産する所だった必死に立て直そうと頑張っても私では駄目だった…家を守る為に考えてはいけない事も何度も考えてた

だがお前が話せるようになって私達を救ってくれた」
その話は聞いた事があった。
お父様はすっかり人間不信になってしまって貴族として関わる人もかなり少なくなり完全に疑心暗鬼になっていたらしい。

しかし私が提案した商品を作る為に訪れたコールマン男爵に出会い男爵のあまりのお人好しっぷりに毒気が抜かれ元の父に戻り今に至ると。


(もしかして…小説の世界ではそのまま悪徳商会になっちゃってイヴァもそれに影響された、とか?)
よく考えて振り返ってみれば私が『性根の腐った女』だの『守銭奴令嬢』だの言われる原因はその過去にあって小説の中では本当に悪女のような存在だったのかもしれない。

(じゃあやっぱり私に関しての悪い噂を流しているのはあの恋愛小説の内容を知っている転生者って事か)

「…よっぽどの理由がない限り何かあれば絶対お父様やお母様に助けを求めますわ。約束します」
「そうしてくれると嬉しいな」
今度はにっこり笑ってそう言う。


家に帰ると慌てたようにヒューゴ様が慌てて駆け寄ってきた。
「イ、イヴァ!」「そんなに慌ててどうなさったんです?」



「王宮に来るようにとアンドレア王太子から連絡があったんだ!」
「王宮に!?」「それはそれは…今度は一体何が起きるんだろうね」

そんな落ち着きながら言わないでくださいませお父様!!

「どうやらアンドレアがブライス殿と今回の件について話をしたらしくてな俺達にも改めて話をしてほしいと」
「ブライス殿と…」


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ・オルターナ エレインたちの父親 シルベス・オルターナ  パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(前皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

処理中です...