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44.死の運命
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新たな疑問をヒューゴ様にそのまま聞くのは残酷かもしれないがそれでも今の状況を打破するにはそうするべきだ。
「小説内のヒューゴ様は何故…
山賊に負けてしまったんでしょうか」
「それは俺も気になった。そこら辺の山賊にやられるほど弱くはないと思うのだが…」
本人も不思議に思っている様子、そりゃそうだ彼はこの世界のラスボスであるガンダー公爵に勝った人なのだから。
(…っ!もしかして)
「小説の中ではラスボスは主人公の手で方法はどうあれ倒されたはずです。
でもこの世界はそうじゃない」
「?あぁ俺が倒したからな」
私の言っている意味が分からないのかきょとんとしながら返事をする。
「小説内のヒューゴ様には婚約破棄された後、このクレマー家に放り込まれて何も起こらなかったとしたら?
私…イヴァ・クレマーと婚約者として過ごす事もオーウェン様と向き合う事もアンドレア王太子殿下に謝罪される事もなく本当にただこの家にいるだけの状態だったとしたら?
一方的な婚約破棄に、父親からの差別に傷付いたまま弟と和解できないまま過ごしていたとしたら?」
「そ、れは」
言葉にしてみると随分酷い状態だがその人生こそが小説内のヒューゴ・ガンダーが歩んだ人生だったのだとしたら。
「確かに…そんな状況なら俺は生きる事をさっさと諦めてしまっていたかもしれないな。ただそうなると君にネックレスを渡そうとしていた事が引っ掛かるが」
「…これはあくまでも私が感じた事ですが、小説内のヒューゴ様とイヴァ・クレマーはお互いを想い合うような関係ではなかったようですがそれでも…
いなくなったら寂しいと思えるくらいには情があったようなんです」
恋愛ではなかったかもしれないけれど2人の間には確かな繋がりができていた、私はそう思いたい。
「もしかしたら2人は本当にゆっくりと婚約者に、想い合えるようになろうとしてたのかもしれません…その証が」
「ネックレスをプレゼントするという行為だった訳か」
彼も納得がいったようで頷いてくれる。
「ですがこの世界ではそうならなかった何故なら…
転生者がいたから」
「…もしやあの婚約破棄が宣言された時に君に話しかけられたのがきっかけか?」
「えぇそこが私が介入した1番最初の変化…少し物々しい言い方になりますが、仮に特異点と呼びましょう」
私があの場でヒューゴ様に話しかけた事で何が変わったのか。
「あの時、君が話しかけてくれたから俺は冷静になれた…もしそれがないままこの家に来たとしたら俺はきっと君の、イヴァ・クレマーの悪評を信じていただろうな」
「恐らくそれはイヴァの方もそうだったでしょう。お互いに悪い印象を持っていたのだとしたら関係があまり良くなかったのも理解できます」
特異点を起点にして少しずつ小説と違う事が起きていったのだと仮定すれば辻褄が合う事がある。
「私が介入したから誰かが王太子殿下に急いで連絡してそれを受けて王太子殿下がこの家に謝罪をしに来た、私が噂通りの人間でないと確信できたからオーウェン様がこの家に兄と話をしに来た…だとしたらっ
私がいればヒューゴ様が死ぬ筋書きを変えられるのでは?」
あまりにも簡単で楽観的過ぎる結論なのは私が1番よく分かっているけれどもはや確信にも近い感覚があった。
自分に何かできるなんて自分になら救えるなんてそんな大層な事は思っていない。
単純に馬車に乗らなければいいのかと言えばそれは無理だ。
ここは辺境伯の領地、馬車必須の場所。
「イヴァ…それは君も危険な目に合わせる事になる。俺はそれを受け入れる事は」
「分かっています、貴方がそれができる人ではありません。けれど私は
絶対に貴方に生きてほしい
その為ならばどんな目に遭っても大丈夫だとそう心から言う事ができます」
らしくなく強気に断言する私に彼は目を見開き少し考えた後頷く。
「分かった」
そう答えてくれた。
数週間後。
「旦那様!大変です!イヴァ様とヒューゴ様が乗った馬車が山賊に!」
「小説内のヒューゴ様は何故…
山賊に負けてしまったんでしょうか」
「それは俺も気になった。そこら辺の山賊にやられるほど弱くはないと思うのだが…」
本人も不思議に思っている様子、そりゃそうだ彼はこの世界のラスボスであるガンダー公爵に勝った人なのだから。
(…っ!もしかして)
「小説の中ではラスボスは主人公の手で方法はどうあれ倒されたはずです。
でもこの世界はそうじゃない」
「?あぁ俺が倒したからな」
私の言っている意味が分からないのかきょとんとしながら返事をする。
「小説内のヒューゴ様には婚約破棄された後、このクレマー家に放り込まれて何も起こらなかったとしたら?
私…イヴァ・クレマーと婚約者として過ごす事もオーウェン様と向き合う事もアンドレア王太子殿下に謝罪される事もなく本当にただこの家にいるだけの状態だったとしたら?
一方的な婚約破棄に、父親からの差別に傷付いたまま弟と和解できないまま過ごしていたとしたら?」
「そ、れは」
言葉にしてみると随分酷い状態だがその人生こそが小説内のヒューゴ・ガンダーが歩んだ人生だったのだとしたら。
「確かに…そんな状況なら俺は生きる事をさっさと諦めてしまっていたかもしれないな。ただそうなると君にネックレスを渡そうとしていた事が引っ掛かるが」
「…これはあくまでも私が感じた事ですが、小説内のヒューゴ様とイヴァ・クレマーはお互いを想い合うような関係ではなかったようですがそれでも…
いなくなったら寂しいと思えるくらいには情があったようなんです」
恋愛ではなかったかもしれないけれど2人の間には確かな繋がりができていた、私はそう思いたい。
「もしかしたら2人は本当にゆっくりと婚約者に、想い合えるようになろうとしてたのかもしれません…その証が」
「ネックレスをプレゼントするという行為だった訳か」
彼も納得がいったようで頷いてくれる。
「ですがこの世界ではそうならなかった何故なら…
転生者がいたから」
「…もしやあの婚約破棄が宣言された時に君に話しかけられたのがきっかけか?」
「えぇそこが私が介入した1番最初の変化…少し物々しい言い方になりますが、仮に特異点と呼びましょう」
私があの場でヒューゴ様に話しかけた事で何が変わったのか。
「あの時、君が話しかけてくれたから俺は冷静になれた…もしそれがないままこの家に来たとしたら俺はきっと君の、イヴァ・クレマーの悪評を信じていただろうな」
「恐らくそれはイヴァの方もそうだったでしょう。お互いに悪い印象を持っていたのだとしたら関係があまり良くなかったのも理解できます」
特異点を起点にして少しずつ小説と違う事が起きていったのだと仮定すれば辻褄が合う事がある。
「私が介入したから誰かが王太子殿下に急いで連絡してそれを受けて王太子殿下がこの家に謝罪をしに来た、私が噂通りの人間でないと確信できたからオーウェン様がこの家に兄と話をしに来た…だとしたらっ
私がいればヒューゴ様が死ぬ筋書きを変えられるのでは?」
あまりにも簡単で楽観的過ぎる結論なのは私が1番よく分かっているけれどもはや確信にも近い感覚があった。
自分に何かできるなんて自分になら救えるなんてそんな大層な事は思っていない。
単純に馬車に乗らなければいいのかと言えばそれは無理だ。
ここは辺境伯の領地、馬車必須の場所。
「イヴァ…それは君も危険な目に合わせる事になる。俺はそれを受け入れる事は」
「分かっています、貴方がそれができる人ではありません。けれど私は
絶対に貴方に生きてほしい
その為ならばどんな目に遭っても大丈夫だとそう心から言う事ができます」
らしくなく強気に断言する私に彼は目を見開き少し考えた後頷く。
「分かった」
そう答えてくれた。
数週間後。
「旦那様!大変です!イヴァ様とヒューゴ様が乗った馬車が山賊に!」
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