悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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45.国王陛下の話

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明確な方法が思い浮かばずそのまま数日経ってしまった。

差し出される手を取る、ゆっくりと段差を登った。

それは間違いなく馬車である、何故今1番避けなければならない馬車に乗ったのか。
話は昨日の事、ガンダー公爵の件で話があると国王陛下に呼ばれたのである。


「国王陛下に呼び出しですから行かないという選択肢がないのは分かっているんですがどうしても…心配です」
「俺の死因になるかもしれない馬車での移動だからな正直俺も不安だ」
馬車の中に座り話をした。

「…ごめんなさい。あんな強気に言っておいてこんな」

どんどん弱気になっていく私に彼は言葉をかけてくれる。

「君は凄い人だぞ。

ただ側にいてくれるだけで心が温かくなっていつもより力が出せる気がするんだ」
優しく微笑まれて手を差し出される
私はその手を取った。

「そう、ですね貴方がそうおっしゃってくれるのならいくらでもお側におりますわ」

彼の言葉に今度は勇気をもらう。
そもそもヒューゴ様の死が今回であるとも限らない。

どちらにせよ覚悟をするしかないのだ。

お互いの手を握り合い馬車に乗り込む、王宮まで1週間と数日掛けて行く事になる。
その間に何もなければいいのだけど。



私の心配は杞憂に終わり王宮への道中では何も起こらなかった。
「これで少しは安心できますわ」
「俺の死因は馬車を山賊に襲撃された事による物だろう?流石に王宮内で何か起きるはずが…ないと言い切りたい所だがな」
国王陛下に会う為に謁見の間へ向かいながら話す。

「今の今まで王族関係で色々あり過ぎたからな。国王陛下に会うのも気が進まない」
「それは…私もです」
国王陛下の変化も恐らくガンダー公爵によるものだろうがそれでもされた事がなかった事になる訳じゃない。
ヒューゴ様の気が進まないのは当たり前だ。

謁見の間に入りカーテシーをする。
隣でヒューゴ様がボウ・アンド・スクレープをした。


「面を上げよ」
ゆっくりと頭を上げる。


国王陛下と目が合った。
(あら顔色がよろしくない…というかやつれていらっしゃるわねなんだかこの間の王太子殿下のようだわ)

「今回の件アンドレアから真実を聞いた。

本当にすまなかったな」
スッと頭を下げる。(っ!??)
「あっ頭をお上げください陛下!!」
「ここにはお前達と私と事情を知る臣下しかおらん、気にする事はない」
(そう言う問題ではございませんわ!?)


来て早々に心臓がどうにかなるかと思った
王族は基本的に人前で頭を下げて謝る事はない。
だからこそ王太子殿下に頭を下げられた時も驚いたのだ。

「まさか…アイザックが一連の出来事を引き起こした犯人だった上に神の呪詛を与えられた者だったとはな」
「…国王陛下も知らなかったのですか?父上の力を」
ヒューゴ様の言い方だと国王陛下は知っていたと思っていたような言い方で引っ掛かりを覚える。


「あぁ何も知らなかった…

アイザックとはだったというのに」

「えっ再従弟!?陛下とガンダー公爵が!?…し、失礼しました」
つい国王陛下の前で驚きで大声をあげてしまった。
「いや驚くのは仕方ない。公の場で血縁者として接する事はなかったからな」


つまりそれは…ヒューゴ様とオーウェン様は王太子殿下の親戚という事。


(いえよく考えてみればそこまで驚く事ではないわよね王族から高位貴族に嫁入り婿入りなんてよくある話だもの…現に王女殿下がヒューゴ様と婚約されていた訳だし)

「アイザックは今、犯罪を犯した貴族が入る牢獄の最上階に収容されている」
「そうですか」
淡々と返事だけを言葉にするヒューゴ様。
「アイザックが神の呪詛を与えられた者となってしまった以上、罰を受けなくてはならない」
「…分かっています」

重苦しい空気が流れつつ話が進む。
「何しろやった事がやった事だからな。そう簡単に何の刑になるかは決められない暫くはそのままだろう…もし会うつもりがあるのならいつでも言ってくれ責任者に話は通しておく」
「ありがとう、ございます」
眉間に皺を寄せてお礼を言った。


「もうお前達には関係ない事かもしれないが一応アシュリンへの罰も伝えておこう」
「王女殿下への罰…ですか?彼女も父上に操られただけなのでは?」
ヒューゴ様の疑問は最もだしかし国王陛下の様子からそうではなかったのだろう。

「…王女殿下はご自身の意思で動いていた事もあったのですね」
私の言葉に陛下は頷いた。
「神の呪詛が解除され私は正気に戻ったがあの子は…自分が幸せになる為にやった事だと悪気もなく言い放ったんだ」
はぁと溜め息を吐く陛下の姿はいつかの王太子殿下の姿とよく似ている。

「では王女殿下は…」
「今は離宮に閉じ込めておる。あの子にも罰を与えればならん王族という存在がどういうものなのかは今一度自覚させねば」
どこか悲しそうな国王陛下に私達は何も言えなかった。



話が終わり謁見の間から出て帰る為に馬車に乗る。

「陛下…大丈夫でしょうか」
「国王としてはやらなくてはならない事だが父親としては複雑だっただろうな」

帰りの馬車の中、話していると。


ギィッ「っ!?」「なっなんだ!?」
突然馬車が止まった。


「さ、山賊だぁ!!」
御者の悲鳴が聞こえる。

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