悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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私は彼の言葉に頷いた。


家に帰って手紙を書く。
国王陛下へ私達はアイザック・ガンダーと面会をさせてほしいという内容で。

返事は最短で来た、了承と共に面会が可能な日付が書かれており2人で行く為に予定を調整する。


その日付に行く事を伝えて準備をした。



そうしてその日、私達はアイザック・ガンダー公爵がいる牢屋の前に立っている。

私の隣には険しい表情のヒューゴ様、側から見れば怒っているのかと疑われそうな顔だが私には分かるこの顔は、もの凄く緊張している顔だ。


(当たり前ね…今更何を話せば良いのかわからないでしょうし)


それでも彼の中で酷い仕打ちをしてきた父親と話す、という選択肢を取ったのである。

私はその意思を尊重したい、だから何も言わない。


ゆっくりと手を扉に近付けようとしているがその手は震えていた。
「イヴァ…すまない自分で決めた癖にこんな情けない姿を見せて」
苦しそうな険しい表情とは裏腹に弱々しい声で謝る。


私は震えている手を両手で包むように握りヒューゴ様の目を見て言った。

「情けないなんて思いませんわ。今、貴方の中でどれだけ葛藤されているのかどれだけの覚悟を決めていらっしゃるのかは分かりませんけれど…


ヒューゴ様が私に言ってくださった言葉を今返しましょう。


私は貴方を信じておりますわ」
彼は今まで私に言葉を尽くしてくれていたのだから私も彼に言葉を尽くさなければ。

「貴方は聡明で誠実な方ですわ。そして、そうですわね少し頑固な所があって自分を卑下する所も…悪口ではございませんわよ?」

ふふっと笑って見せれば彼の表情が少し緩む。

「私はそんな貴方が大好きですし一緒にいられて幸せですのよ?これから何があっても貴方の心が折れるような事が起きたとしても…

私はヒューゴ様の味方です」
貴方が私を信じてくれたように私も貴方を信じているとちゃんと言葉にして伝えた
触れている手の震えが止まる。


「…君には敵わないな本当」
緩んだ表情が控えめな笑みになり眉間の皺がなくなった。
どうやらリラックスしてくれたようだ。

「行こう」「はい」

精神的にも物理的にも重い扉を開く。


「囚人番号139番!!面会だ!」
檻の前に立っていた看守がそう叫んだ。

「…はっ何の用だ」
最後に見た時の姿よりも痩せて窶れている
目の下には隈、その目は虚ろ。


「っ!」
その姿はヒューゴ様にとって衝撃そのものだったのだろう息が詰まっていた。

「あ、なたと話す為に来た」
何とか言葉を捻り出したヒューゴ様。
「話す?今更一体何を?」
ハッと鼻で笑いながら言う。



「今までの事を、全て」

「話して何になる?」

「何もならないかもしれない」

「なら意味なんてないだろう」

「意味を求めてきたんじゃない」

「…だったら何を」

「終わらせに来たんだ。


俺と貴方の関係を」
ヒューゴ様とアイザックが交互に話していった。

私は何も言わない、話しかけられない限りただ黙って話を聞いているつもりだ。


ヒューゴ様の心が傷付かない事を願うがきっと傷付く事となっても彼は話すのをやめないだろう。

「関係…ねぇ俺とお前の間に生物学上の親子以外の関係があるか?」
「ありませんね、だからこそ話すんです。貴方と冷静に2人で話した事なんて人生で数えられる程度しかありませんから」

嫌味に嫌味を返す。

(…もしかしてこの調子で話し続けるのかしら?肝心な事より嫌味の方が多くなりそうねでもヒューゴ様はこのままやるようだし私が口を出す事じゃないわね)


幸先が不安になりつつも2人の会話をただ黙って聞く。
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