神の宿り木~獣人のヒイロとチイ~

ゆう

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約束

休日

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 それから二日に一度、ヒイロとホムラはレギを訪ねてやって来た。
 何か、仕事の依頼をしたらしく、小まめに通ってきた。
 私はリマ商会の受付なので、ヒイロと挨拶を交わし、毎回、食事に誘われた。
 断り続け、だったら「休日に町を案内して欲しい」と、頼まれ断り切れず、案内することになってしまった。
 …どうしよう。
 レギ以外の男の人と、出掛けたこと無いし…。
 同僚のメイに相談したら「せめて可愛い服を着てあげなさい」と、言われたが、そんな服なんて無いし…。
 普段から動きやすさを優先するので、シャツやTシャツ、ズボン…。それもシンプルな物ばかり…。
 う~ん。いつも道理で良いか…。
 …私、町を案内するだけなのに、何を、そわそわするんだろう…。
 考えても無駄だ…。
 そうだ!仕事の延長だと思って接すればいいのよ!
 チイは、そうやって自分を納得させながらも、休日が楽しみで仕方がなかった。


 休日、チイの部屋まで迎えに来たヒイロに、長屋の獣人達は興味津々で窓から覗いていた。
 後から聞くと、レギさんに頼まれて、変な虫が付かないよう、目を光らせていたらしい…。
 ただ、ヒイロの場合はチイと手を繋いで帰ってきたのを見ているから、傍観しているらしい…。
 み、見られてたんだ…。
 そして、少し遅れてホムラもやって来た。
「遅くなってごめん。レギの所に寄ってたから…」
 あっ、二人ではないんだ…。
 落胆する自分に困惑する。
 ヒイロに「町を案内欲しい」と、言われたが、ヒイロとホムラの二人でここに来たのだから、当たり前だよね…。
 どうしたんだろ私…。
「チイ?」
「何でもないわ。まずは、朝一通りね。新鮮な野菜とか焼きたてパンなどか並ぶ市場があるから、そこで昼食にしましょう」
 そう言って歩き出す。
 仕事、仕事。
 心の中でそう思いながら…。

 昼食に焼きたてパンと惣菜を買い、市場の側にある公園のテーブルで食べ、町中の日用品や雑貨等が並ぶ商店街へやって来た。
「あまり、獣人の町と変わらないな…」
 ぽそりとヒイロがそう言う。
「獣人の町って獣人ばかりが住んでるの?」
「ああ、種族は色々だか、ここと同じように商店街があり、市場も有る」
「そうなんだ…」
 ちょっと見てみたい気もする。
 どんな獣人達が住んでいるんだろう…。
 そんな事を思いながら、アクセサリーの雑貨屋の店頭に並べてあるブレスレットが目に止まる。
 まるくて、指の太さぐらいの綺麗な金茶色のブレスレット。
 中にラメが入っていてキラキラ輝き、ヒイロの目を覗き込んだ時のかがやきに似ていた。
 手に取り、光りにかざすと、更にキラキラ輝いた。
「これ、気に入ったのか?」
 チイはハッとして振り向いた。
 ヒイロに声をかけられるまで、気付かなかった。
「綺麗だな…って思っただけ…」
 …今、…何を考えていた…。
 慌ててチイはテーブルに戻すと、ヒイロがそれをヒョイと持ち上げ、店の中に入っていった。
「…。」
 しばらくすると、ヒイロは戻ってきて、そのブレスレットをチイの左手首にめる。
「プレゼント」
「えっ!そんなの悪いです!」
 チイは慌てた。
 ただ綺麗だなと、見ただけなのに…。
「俺がチイに付けたいだけ。気に入らなかった?」
「でも!」
 ヒイロは微笑んでチイの左手を取り、付けたブレスレットに口付ける。
「お守りだよ。だから、外に出るときは外さないで」
 うわ~。
 顔が赤くなるを感じる…。
 だから、こんなこと言われるのに慣れてないから、どうしたらいいか分からないでしょう。
「ヒイロさん。ここ、往来ですから程ほどに…」
 ホムラにそう言われてハッとする。
 行き交う人がチラチラと、見ている!
 店の前で何やってんのよ!
 チイは更に顔が赤くなるのを感じていた。

 早めの夕食を食べ、長屋に送り届けられた。
 思ったより楽しかった。
 三人で良かったと、つくづく思った。
 ホムラが時々、現実に戻してくれる。
 ヒイロの補佐役と言っていたが、仕事だけでなくプライベートも補佐してくれているみたいだ。
「また、町を案内して欲しい」
 ヒイロにそう言われて、頷いていた。
「またね…」
 チイは無意識に手を振っていた。
 去って行くヒイロの背中をじっと見つめていた。
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