神の宿り木~獣人のヒイロとチイ~

ゆう

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約束

レギの葛藤 1

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 ヒイロから『転送移動』『防御』の魔法を掛けたブレスレットをチイにあげたと聞いた。
 最近、獣人の真面目な子達が行方不明になっている。
 その不安と保険に渡したのだと言われれば、こちらは外せとは言えない。
 かといって、チイが身につけて、いないかもしれない。
 レギは仕事部屋を出ようと扉を開けた時、ちょうどチイがお客さんを案内して受付に戻るため、階段を降りて来たところだった。
 ふと、チイの腕に視線が行く。
 …ブレスレットをしている。
「これはヒイロが?」
 チイはドキッとしてレギを見てくる。
「お守りだから「外に出るときははずさないで」と、言われたので…。仕事中は外した方が良いですか?」
 レギはブレスレットに掛けられた魔法を見て、ため息をついた。
 『防御』はチイが傷付けられそうになったら、一度だけ弾き飛ばすようになっている。
 『転送移動』は二つ、俺かヒイロが呼ばれた時、発動するようになっている。
 呼ばれるのは自分だけでなく、俺の登録もしてあることがチイの安全を守る為だと、ちゃんと分かっている。
 自分が必ず呼ばれるとは思ってないからだ。
 ヒイロらしい…。
「チイは付けていたい?」
「…。」
 答えはない。
 ヒイロに好意は持っている、と言うこと…。
 まだ、自覚は無くともいつか恋に変わるかもしれないな…。
 俺の大切な者同士が一緒に居ることで歓びを感じるなら…。
 レギは笑みが込みあげてきて、チイの髪をくしゃっと撫でる。
「良いよ。大事にしてあげて」
 そう言ってレギは自分の仕事部屋へ戻っていった。
 率直で真面目なヒイロには、チイが癒しになるのかもしれない。
 ヒイロには一族の総意が必要だから、苦難も多いだろうけど…。


 ヒイロとホムラと三人で、現在の経過を話していた。
 魔法で隠されているのか最終的なアジトが見付からない。
 この町の何処かに、行方不明者達が閉じ込められているはず。
 潜伏先になりそうな所を順番に調べている。とはいえ、この町も獣人の町と同じくらい、そこそこ広い。
 何処だ!何処に隠れている!
 随時、経過を話して次は…と、候補地を検討していると、扉が叩かれた。
 レギが振り向くと、チイと一緒に食事に行ったはずのメイが息を切らしていた。
「メイ。どうした?」
「…チイが…居なくなったの…」
 三人の手が止まる。
 …何だと!
「食事して…店を出て…そこまで一緒だったの!…振り向いたら…姿が…無くって…」
 ヒイロがソファーから立ち上がり、ものすごい勢いでメイに近付き肩を掴んだ。
「どこだ!どこで消えた!」
 メイがヒイロの勢いに怯えている。
「…最近新しく出来た『ビースト』と言う、お店の近く…」
 ヒイロがこちらを振り向く。
「レギ!」
 レギはため息をつく。
 まさかの転回だ。
「一番嫌なパターンになったな…。チイが呼べば、『転送移動』される」
「分かってる!」
 ヒイロは恐ろしいほどの剣幕で怒鳴る。
 …落ち着け俺。
 チイには悪いが、チャンスだ。
 奴等を捕まえて、行方不明者達を保護するために!
「奴らの巣窟を一網打尽にする手筈は整っている。ただ…」
 レギは冷静に話しながらも、冷気が押さえ切れなくなっていた。
 「チイに何かあったら俺は正気を失うぞ!」
 ヒイロが珍しく冷静さを失っている。
 この分こちらの頭が冴えてくる…。
「そうならない事を祈るよ…」
 レギは直ぐに人族の警察に連絡を取り、身内が拐われた事を伝え、『転送移動』が起こったら内部に入り込む事を説明していると、程なくしてヒイロの足元に小さな魔方陣が出現する。
 『転送移動』だ!
「レギ!」
 ヒイロがそう叫ぶと、呼ばれたチイのもとに飛んでいった。
 やはり、ヒイロを呼んだんだな…。
 レギの足元に小さな魔方陣が出現する。
 ヒイロが、レギも追跡出きるように『転送移動』を飛ばして来たのだ。
 何処までも真っ直ぐに行動するヒイロ…。
「相変わらずだな…」
 レギがそう呟くと、ヒイロとチイのもとへ飛んだ。
 
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