ライザス冒険記

雨宮大智

文字の大きさ
13 / 17

13 野営地にて

しおりを挟む
 旅の日程、初日の夕方に野営地に着いた。
「もう日暮れだから、今日はこの野営地に泊まろう。なんとか着いたな」

 私とハーティ、ポルニはいずれも旅慣れていた為か、あまり疲れを見せなかった。バリウス殿は今日の行軍が少しこたえたらしく、井戸の水でしばらく体を冷やしていた。

「手当をしましょうか」
 ポルニがバリウス殿に話しかけた。見れば左足のかかとから少し血が出ている。
「痛めてしまったようだ」バリウス殿は、布に井戸水を含ませ、左足にあてていた。
「傷薬がありますので、治療いたしましょう」
「すまない。そうしてくれるか」
 ポルニは背負袋から傷薬と包帯を取り出し、石の上に広げた。
「少し染みるかもしれません」
 傷薬は、切り傷に良く効く薬草を刻んだもので、比較的廉価で手に入る。こうした旅の必需品で、どの街でも売られていた。この辺りで行商をしている商人も、取り扱っていると察せられた。
 ポルニは、傷口を良く拭くと、さっと傷薬をあてた。そして包帯で巻いて固定する。

「ありがとう、だいぶ楽になった」
「すぐに良くなりますよ」
 ポルニが優しい言葉をかけた。


 私とハーティは、その間にテントを設営した。テントはふた張りで、バリウス殿用の小型テントと、女性陣の大型テントだった。
 そうしているうちに、陽が陰ってきた。井戸の水を汲み、種火からたき火を起こす。火で干し肉をあぶる。湯を沸かし、スープを温める。夕食の支度は、私とハーティとポルニの3人で行っていた。バリウス殿は、小さな木片を集めて薪とした。

 ささやかな夕食が始まった。メニューは、ライ麦パンとあぶった干し肉、かぼちゃのスープ、そしてデザートにリンゴが付いた。あたたかい湯気と香ばしい匂いが、辺りを満たした。

 星が空に瞬きはじめた。夜の精霊が大地と降りてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...