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2 モルデ神告からの任務
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「北の国ウィンタロムに、春の季節が来ないことは、貴殿も知っておろう」
モルデ神告は、そう口火を切った。
このファーガ国と国境を接するウィンタロムは、石炭と鉄鋼の国である。良質の石炭がその輸出の財源となっていた。ここ十数年、気候が変動し、冷たい冬が終わらない「永久凍土」となっていることは、私も知っていた。
「存じております。北の国への使いでしょうか?」
「実はアリウス神からの霊夢があったのだ。かの地に神の武人を送り、永久凍土となった原因を突き止め、春が来るようにして欲しい、とのお告げがあったのだよ」
「左様でございましたか。それで、私を?」
モルデ神告は頷き、背をしゃんと伸ばした。
「貴殿に白羽の矢が立ったのだ」
「ウィンタロムの民は、苦しんでいるでしょうね。春や夏が来なければ」
私は鎮痛な気持ちになった。
「左様。石炭を掘り出して、食べ物を買っているそうだ。秋という季節がなくなったのでな」
モルデ神告は顔をしかめた。「民は苦しんでいる。だから『神の武人』の力が必要なのだ」
「御意。一体何が原因なのでしょうか?」
モルデ神告は即答した。「それを貴殿に調べて欲しいのだよ」
私は頷いた。重大な任務だ。
「これは神命である」
モルデ神告の言葉が重くのしかかった。
「一命にかえても、遂行してみせます」
「頼んだぞ。これは聖堂からの仕度金である。心して使われよ」
モルデ神告はそう言って私に小袋を渡した。
「金貨が二十枚入っている。旅の準備に使うと良いだろう」
「有難うございます。食料や新しい鎧などを整えたいと存じます」
「出立はいつになる?」
「明朝、日の出とともに出発いたします」
「まずは、ウィンタロム国の境界の町『ルーダ』を訪ねるといいだろう。そこで情報を収集するのだよ」
「かしこまりました」
「ウィンタロム国に入るには、入国許可証がいる。この手紙を見せれば良い。聖堂の発行で、旅の目的と入国するお主の名が書いてある」
モルデ神告はそう言うと、手紙を傍らの机の引き出しから取り出した。
「かたじけなく存じます」
「アリウス神のご加護があることを心から願う」
「神告さまにも」
それが、この旅のはじまりだった。
モルデ神告は、そう口火を切った。
このファーガ国と国境を接するウィンタロムは、石炭と鉄鋼の国である。良質の石炭がその輸出の財源となっていた。ここ十数年、気候が変動し、冷たい冬が終わらない「永久凍土」となっていることは、私も知っていた。
「存じております。北の国への使いでしょうか?」
「実はアリウス神からの霊夢があったのだ。かの地に神の武人を送り、永久凍土となった原因を突き止め、春が来るようにして欲しい、とのお告げがあったのだよ」
「左様でございましたか。それで、私を?」
モルデ神告は頷き、背をしゃんと伸ばした。
「貴殿に白羽の矢が立ったのだ」
「ウィンタロムの民は、苦しんでいるでしょうね。春や夏が来なければ」
私は鎮痛な気持ちになった。
「左様。石炭を掘り出して、食べ物を買っているそうだ。秋という季節がなくなったのでな」
モルデ神告は顔をしかめた。「民は苦しんでいる。だから『神の武人』の力が必要なのだ」
「御意。一体何が原因なのでしょうか?」
モルデ神告は即答した。「それを貴殿に調べて欲しいのだよ」
私は頷いた。重大な任務だ。
「これは神命である」
モルデ神告の言葉が重くのしかかった。
「一命にかえても、遂行してみせます」
「頼んだぞ。これは聖堂からの仕度金である。心して使われよ」
モルデ神告はそう言って私に小袋を渡した。
「金貨が二十枚入っている。旅の準備に使うと良いだろう」
「有難うございます。食料や新しい鎧などを整えたいと存じます」
「出立はいつになる?」
「明朝、日の出とともに出発いたします」
「まずは、ウィンタロム国の境界の町『ルーダ』を訪ねるといいだろう。そこで情報を収集するのだよ」
「かしこまりました」
「ウィンタロム国に入るには、入国許可証がいる。この手紙を見せれば良い。聖堂の発行で、旅の目的と入国するお主の名が書いてある」
モルデ神告はそう言うと、手紙を傍らの机の引き出しから取り出した。
「かたじけなく存じます」
「アリウス神のご加護があることを心から願う」
「神告さまにも」
それが、この旅のはじまりだった。
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