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3 ターニャとルゼルフ
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「化け物退治? そんな危険な仕事を、誰が引き受けるっていうんだよ」
私が宿「三つ牙亭」で夕食を摂っていた時のことだ。ルーダの町へ入ってすぐの日、私は宿の食堂室にいた。
「……そんなことを言っても、他に誰がいるかしら。もう私、引き受けちゃったのよ」
隣の席で一組の男女が口論をしていた。私はそれをなんとなく聞いていたのだ。若い女性ーー30才前くらいだろうーーが、化け物退治の仕事を軽い気持ちで引き受けてしまったらしい。男性はその仕事を断ろうとしていたのだ。
「もし、宜しければ、私に化け物退治の仕事の話を詳しく聞かせていただけませんか?」
「……あら、ご関心がお有りですか。私はターニャ、旅の魔導士です」
ターニャと名乗った女性は、つばの広い帽子を被っていた。帽子の陰からは、まだうら若い顔が見てとれた。ターニャは美人というよりは、可愛らしい顔形をしていた。
傍らにいた男性も口を開いた。
「旅の方とお見受けする。貴殿はファーガ国の方でしょうか。服装がそのようにみえたものですから……」
「いかにも。ファーガ国のルティキアより、神託によってこのウィンタロムへ参ったものだ」
私はそう言って、軽く会釈した。
男性がそれを受けて答える。
「私は『弓使いのルゼルフ』。このウィンタロムで、伝説の弓『神弓』を探す旅をしています。以後、お見知りおきを」
「丁寧な挨拶、いたみいる。私はベルガ。アリウス神に仕える神の武人だ」
「そうでしたか。どのような旅の目的で、このルーダの町に?」
ターニャが、エール酒の木杯を手渡して、そう尋ねた。「一杯どうぞ」
「有難い、馳走になる」
私は大きく木杯をあおった。そして問いに答えた。
「大聖堂からの神命で、このウィンタロムの地に、春を取り戻す任務を受けたのだよ」
「それは大変なお役目ですね」
ターニャは驚きの表情を隠さない。
私が宿「三つ牙亭」で夕食を摂っていた時のことだ。ルーダの町へ入ってすぐの日、私は宿の食堂室にいた。
「……そんなことを言っても、他に誰がいるかしら。もう私、引き受けちゃったのよ」
隣の席で一組の男女が口論をしていた。私はそれをなんとなく聞いていたのだ。若い女性ーー30才前くらいだろうーーが、化け物退治の仕事を軽い気持ちで引き受けてしまったらしい。男性はその仕事を断ろうとしていたのだ。
「もし、宜しければ、私に化け物退治の仕事の話を詳しく聞かせていただけませんか?」
「……あら、ご関心がお有りですか。私はターニャ、旅の魔導士です」
ターニャと名乗った女性は、つばの広い帽子を被っていた。帽子の陰からは、まだうら若い顔が見てとれた。ターニャは美人というよりは、可愛らしい顔形をしていた。
傍らにいた男性も口を開いた。
「旅の方とお見受けする。貴殿はファーガ国の方でしょうか。服装がそのようにみえたものですから……」
「いかにも。ファーガ国のルティキアより、神託によってこのウィンタロムへ参ったものだ」
私はそう言って、軽く会釈した。
男性がそれを受けて答える。
「私は『弓使いのルゼルフ』。このウィンタロムで、伝説の弓『神弓』を探す旅をしています。以後、お見知りおきを」
「丁寧な挨拶、いたみいる。私はベルガ。アリウス神に仕える神の武人だ」
「そうでしたか。どのような旅の目的で、このルーダの町に?」
ターニャが、エール酒の木杯を手渡して、そう尋ねた。「一杯どうぞ」
「有難い、馳走になる」
私は大きく木杯をあおった。そして問いに答えた。
「大聖堂からの神命で、このウィンタロムの地に、春を取り戻す任務を受けたのだよ」
「それは大変なお役目ですね」
ターニャは驚きの表情を隠さない。
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