永久凍土のウィンタロム

雨宮大智

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10 ミラドの村へ

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「冬の女王が幽閉されているのは、何処でしょうか?」
 ルゼルフが尋ねる。

「ウィンタロムの東の地にある『冬の塔』だそうだ。その地に行けば、冬の色が濃くなるのが判るだろう」
 ラビドはそう返答した。その顔には苦渋の表情が浮かんでいる。
「その場所なら、大体わかります。弓職人の多い『ミラドの村』の南東だと思います」
 ルゼルフが説明を加えた。

「ルゼルフさん、お詳しいですね」
 ターニャが驚いた声を挙げた。
「旅をすることが多いゆえ」
 ルゼルフはそう云って、軽く笑った。

「ならば、早速『冬の塔』へ行かねばならぬな」
「その前に、ミラドの村へ立ち寄って、『神弓』を造らせていただきたいのです。戦力となりますゆえ、お願いしたく存じます。私の願いは、幻の弓を手に入れること。材料の『神木』を持って参りましたので、三日程で完成すると聞いております」

「ご自分を優先したいのですか」
 ターニャが声を荒げた。
「三日で命を落とす事件が、あるかもしれませんから。相手は、あの『テヘルの星団』なのですよ」

 ルゼルフが応じる。
「三日待ってくれれば、良き弓が手に入る。力強い支えとなろう。それでも駄目だろうか」

 私は仲裁に入った。
「今日出来ぬことを、後回しにしていては、何も始まらないだろう。今すぐ出立を」
「答えは、道中考えて下さいね」


 結局、ルゼルフの弓を先に造ることになり、私たちは「ミラドの村」へと向かうことになった。その日は、賢者ラビドに礼を言って退室し、北の村フィスの宿に一泊して、しばしの休息を取ったのである。

 それから一旦、ルーダの近くの分岐路へと戻り、「ウィンタロムの町」を目指した。食料と水をそこで補給し、私たちは「ミラドの村」へと向かったのだった。

 夏だというのに、初冬のように冷え込んだ。小雪が舞うことさえあった。それが「永久凍土」と呼ばれる所以だと判った。私たちが「ミラドの村」へと着いたのは、旅をはじめてから、二週間後のことだった。
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