つがいの薔薇 オメガは傲慢伯爵の溺愛に濡れる

沖田弥子

文字の大きさ
7 / 112

発情 3

しおりを挟む
「何が違う。俺に見られて感じるんだろう」

 ずいと身を乗り出した晃久は、浴衣の袷を澪の手ごと掴むと、強引に割り開く。

「あっ、だめ」

 布が擦れて、胸の飾りに刺激が走る。それは背筋を駆け抜けて花芯までにも伝わる。
 感じすぎて、体がおかしい。

「乳首も淡い、綺麗な色だな。もちろん誰にも触らせたことはないよな」

 食いつきそうな距離で眺めながら、晃久は淡い胸の飾りに呼気を吹きかける。
 澪は誰とも経験がない。学校には行かせてもらったが、送り迎えになぜか晃久が常に付き添ってくれたので学友と遊ぶようなことはなかった。もっとも内向的な澪に友人は数えるほどしかいなかったのだが。卒業した後は大須賀伯爵家の敷地に変わらず住んで庭師の仕事をさせてもらっている。人と話すのは不得意で草木の世話が好きだったから、庭師になるのは澪が希望したことだ。以来交流するのは大須賀邸の使用人くらいなのだが、新人の若い男が澪に接近すると決まって晃久が睨みを利かせていく。仕事の話しかしていないのに、なぜ晃久は怒ったような態度を取るのだろうかと、澪は不思議に思う。一方女性には若干寛容で、女中が澪に親しげに声をかけるのは遠巻きに見守っている。
 
 結局どこにいても、澪は晃久の手の中にいるのだ。
 だから澪が童貞だということは、晃久も聞かずとも分かっているはずなのに。
 どうしてあえて訊ねるのだろうか。

「誰にも触らせていません。若さまだけです……」

 匂い立つような色香に、晃久の喉仏がごくりと上下する。
 ちゅく、と小さな水音がした。
 胸元に降りた滑らかで温かな感触に、澪は陶然として、直後に息を呑む。

「あ、若さま、だめ、だめです」

 晃久が胸元に顔を寄せ、赤子のように乳首を口に含んでいる。
 花芯を触ってもらったのは手なので抵抗は少なかったが、舌で舐めてもらうのはいけない。澪は必死に抗った。胸元に吸いつく晃久を引き剥がそうと肩を押すが、強靱な肩はびくともしない。
 暴れるほどに浴衣ははだけてしまい、肩から滑り落ちる。そうすると袖が肘に引っかかり腕の自由が利かず、自らを拘束する結果となった。差し出されるように露わになった淡い突起は舌で舐られて、淫らに色づいている。

「澪……澪……」

 狂おしげに名を呼ぶ晃久に伸し掛かられ、体躯の重みでソファに押し倒されてしまう。そうなってしまえば抵抗も叶わず、澪は小さく足をばたつかせることしかできない。

「あ、あ……若さま、もう……」

 抵抗を封じ込めた晃久は初心な乳首を思う存分舐めしゃぶり、空いた片方の突起も指先で捏ね回す。
 ぷくりと膨らんだ胸の飾りは、男を誘うように紅く淫らに濡れていた。放ったばかりの花芯は覚え始めた快楽に、とろりとろりと蜜を垂らし続けている。
 これ以上淫らなことをされたら、自分が自分でなくなってしまいそうだ。
 体の奥底から湧き上がってくる未知の感覚はまるで川の奔流のようで、理性を掻き集めてそれをどうにか押し留めている状態だ。
 決壊してしまえば、おかしくなってしまう。
 澪は半泣きで、美味そうに乳首を含んでいる晃久の髪に指を絡めた。

「いやだ、若さま……僕、変なんです。体がおかしいんです」

 必死の嘆願にようやく胸元から顔を上げた晃久だったが、嬉しそうに頬は緩んでいる。

「おかしくないぞ。これが正常な反応だ」
「ちがうんです……。体が、熱くて、苦しくて……ここが疼くんです」

 ここ、と下腹の辺りを手のひらで示す。
 妙な感覚だった。痛いわけではない。凝った熱が溜まっているかのような感触があるのだ。今までに覚えのないことだ。
 その疼きは下腹を中心として、次第に広がってくる。

「ほう。疼くのか。どれ、見せてみろ」

 浴衣の裾を捲り上げた晃久は、澪の片足を抱え上げた。そのまま己の肩に乗せて、開かれた秘所を覗き込むように身を屈める。

「あっ……」

 とても恥ずかしい体勢だが、異常がないか確認してもらうためなので仕方ない。
 澪は肩を震わせて顔を背け、羞恥に耐えた。

「どうでしょうか? 僕の体、何か変で……ひゃ……」

 ちゅくり、と濡れた水音が鳴る。
 花筒の入り口を、撫でられている感触がした。
 晃久の指が後孔をまさぐっているのだ。

「……濡れているな」
「え……?」

 感心したような晃久の呟きに首を捻る。
 そんなところは通常、濡れるものなのだろうか。
 けれどそんな疑問はすぐに吹き飛ぶ。

「あっ! あ、ん、あぁっ」

 ずくりとした刺激が後孔から背筋を駆け抜ける。快感に貫かれた澪は、背を弓なりに撓らせた。花筒に硬いものが挿入される感覚に、身が竦むと同時に凄まじい快楽が生まれる。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭

クローゼットは宝箱

織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。 初めてのオメガバースです。 前後編8000文字強のSS。  ◇ ◇ ◇  番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。  美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。  年下わんこアルファ×年上美人オメガ。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

処理中です...