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Alea jacta est
24話
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興が削がれる。侮蔑の瞳でアデレイドはため息。
「そもそもオーガストに興味、ない」
少なくとも。このなにを考えているのか。なにを知っているのか。なにができるのか。わからない黒髪の男のほうが。自分を。自分を熱くさせる。それに——。
ピクピクッ、とオーガストの瞼が震える。
「それはそれでムカつくけどな。で? スカーレット、どうなるんだこれは」
一応はひと段落したこの状況。どうしたものか。インカムに向かって問いかけてみる。焼いて食べてもいいのか。そもそも安全に食べられるものなのか。そんなことは知らないが、焼けば大抵なんとかなりそうな気もする。すると。
「お疲れ様でした。まもなく回収班が向かってきますので、そのままでお待ちください。いやはや、まさかのまさかです」
いつの間にかすぐ近くまで来ていたスカーレット。インカムの音声など必要ないほどに。とびきりの笑顔で包み込む。この探索エリアでアロサウルスが出るとは。非常に重要なこと。これだけで一生遊んで暮らせるお金が。入って。くるわけもないので、ちょっと複雑でもあるが。
なんだかこいつの実物を見たのが遠い過去のようにオーガストには思える。いつの間にか安全な場所に避難して、モニタリングして楽しんでいたこいつの。
「……回収班以外に、増援班とか銃火器班とか。戦車じゃなくても、持ち歩けるような武器。そんなのはなかったのかよ」
「ありませんよ。ですが、今後この付近を探索する場合は必要かもしれない、という貴重な情報です。感謝感謝」
相変わらず感情の乗らないスカーレット。適当。見つけて嬉しい、と、生き残って残念、が入り混じる。この付近、とはいってもサハ共和国の広さはとんでもないので、地道な作業すぎて涙が出そうではある。
エリオットとしても、アロサウルスを倒すまではいいが、そのあとのことなど考えていなかった。後始末は任せるしかないわけだが、その他にも多く情報を集める必要がある。
「どこまでも他人事なヤツだ。まだ聞きたいことは山ほどあるんだがな」
「それより」
と、男共のことなどスカーレットにはどうでもよく。体ごと顔を向けるのは銃を構えたアデレイド。一陣の風が通り抜ける。
「おい、そんなことやってる場合か」
またもオーガストが割って入る。問題しかここにはない。生き残った意味。
眉間のあたりに照準が合っているのだろう。それでもスカーレットの余裕は崩れない。
「引き金。引かないんですか?」
「そうする」
躊躇も迷いもなく引き金をアデレイドは引く。
なんだか面倒なことになってしまった。考えることは苦手。生きるためにはカロリーを消費する。それすら面倒。だからやっと。ゆっくりと眠れると思ったのに。それなのにこの受付の人は。殺そ。
だが。
「残念。弾切れだった。一発くらい残しておけばよかった」
弾丸は発射されず、小さく音を立てたのみ。そういえばアロサウルスに撃ってた。シリンダーも確認していなかった。ダメダメだ。眠い。
やはりやりたいように生きるその少女の姿。スカーレットには輝いて、美しく見えて仕方ない。
「次回お待ちしておりますよ。焦らない焦らない」
そうして銃を伏せる。優しく母のように、姉のように、よくできた妹のように。今日、ここでたまたま生き残ったことにはきっと、確実な意味があって。まさか血管を焼き切るなんて驚き。そんな戦い方、他のチームでもやっていない。たぶん。面白ッ。
「そもそもオーガストに興味、ない」
少なくとも。このなにを考えているのか。なにを知っているのか。なにができるのか。わからない黒髪の男のほうが。自分を。自分を熱くさせる。それに——。
ピクピクッ、とオーガストの瞼が震える。
「それはそれでムカつくけどな。で? スカーレット、どうなるんだこれは」
一応はひと段落したこの状況。どうしたものか。インカムに向かって問いかけてみる。焼いて食べてもいいのか。そもそも安全に食べられるものなのか。そんなことは知らないが、焼けば大抵なんとかなりそうな気もする。すると。
「お疲れ様でした。まもなく回収班が向かってきますので、そのままでお待ちください。いやはや、まさかのまさかです」
いつの間にかすぐ近くまで来ていたスカーレット。インカムの音声など必要ないほどに。とびきりの笑顔で包み込む。この探索エリアでアロサウルスが出るとは。非常に重要なこと。これだけで一生遊んで暮らせるお金が。入って。くるわけもないので、ちょっと複雑でもあるが。
なんだかこいつの実物を見たのが遠い過去のようにオーガストには思える。いつの間にか安全な場所に避難して、モニタリングして楽しんでいたこいつの。
「……回収班以外に、増援班とか銃火器班とか。戦車じゃなくても、持ち歩けるような武器。そんなのはなかったのかよ」
「ありませんよ。ですが、今後この付近を探索する場合は必要かもしれない、という貴重な情報です。感謝感謝」
相変わらず感情の乗らないスカーレット。適当。見つけて嬉しい、と、生き残って残念、が入り混じる。この付近、とはいってもサハ共和国の広さはとんでもないので、地道な作業すぎて涙が出そうではある。
エリオットとしても、アロサウルスを倒すまではいいが、そのあとのことなど考えていなかった。後始末は任せるしかないわけだが、その他にも多く情報を集める必要がある。
「どこまでも他人事なヤツだ。まだ聞きたいことは山ほどあるんだがな」
「それより」
と、男共のことなどスカーレットにはどうでもよく。体ごと顔を向けるのは銃を構えたアデレイド。一陣の風が通り抜ける。
「おい、そんなことやってる場合か」
またもオーガストが割って入る。問題しかここにはない。生き残った意味。
眉間のあたりに照準が合っているのだろう。それでもスカーレットの余裕は崩れない。
「引き金。引かないんですか?」
「そうする」
躊躇も迷いもなく引き金をアデレイドは引く。
なんだか面倒なことになってしまった。考えることは苦手。生きるためにはカロリーを消費する。それすら面倒。だからやっと。ゆっくりと眠れると思ったのに。それなのにこの受付の人は。殺そ。
だが。
「残念。弾切れだった。一発くらい残しておけばよかった」
弾丸は発射されず、小さく音を立てたのみ。そういえばアロサウルスに撃ってた。シリンダーも確認していなかった。ダメダメだ。眠い。
やはりやりたいように生きるその少女の姿。スカーレットには輝いて、美しく見えて仕方ない。
「次回お待ちしておりますよ。焦らない焦らない」
そうして銃を伏せる。優しく母のように、姉のように、よくできた妹のように。今日、ここでたまたま生き残ったことにはきっと、確実な意味があって。まさか血管を焼き切るなんて驚き。そんな戦い方、他のチームでもやっていない。たぶん。面白ッ。
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