【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜

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21 束の間の休日なのですが…

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 お茶会も無事に終わりまして、私はこの日、お休みをいただきました。
 カサンドラ様もゆっくりとお休みになるという事で、無理やりですが休みを押し付けられてしまい、することも無く町の書店へと来ております。


 最近、巷で流行っているのは、昔から敵対している家門の令息と令嬢の恋愛物語らしいのですが、これが最近、同じ登場人物なのに悲恋バージョン、駆け落ちバージョンなど、いくつかの異なる結末になる種類があるらしく、それも書店でどの結末が良かったかを人気投票をしているらしいので、私もどれかを読んでみようかと思ったのです。
 鉄の女と呼ばれてましても、こういう話は別ですわ。娯楽は娯楽です。まずは悲恋バージョンでも読んでみましょう。


 そして侍女たちの間で人気のカフェにも寄ってお昼を食べようかと書店を出て、そのカフェへと向かいました。少しお昼には遅めの時間でしたからか、すぐに席に案内されました。それでも空いている席は少ないようです。

 店の一押しはエビグラタンとのことですし、まずそれを頼みましょう。なんでもホワイトソースが絶品だとか。楽しみです。


 そして待つこと10分くらいですか?アツアツのグラタンが私の前の前に運ばれてきました。
 フォークでそっと掬ってみると、チーズが伸びる伸びる。まぁ、これは目でも楽しめますわね。

 グラタンの中はじゃがいもが入っていますわね。プリプリのエビも存在感を出すように上にいくつか乗っています。他のお野菜も彩りよく入っていて、これはお腹に溜まりますわ。

 熱さを楽しみながらグラタンを頂いていますと、なにやら私を呼ぶ声が聞こえました。


「アシュリー!偶然だな。一緒にいいかな?」


 私を呼んだのは元婚約者のエドウィン様。一体、なぜここに?


「いえ…他の席へどうぞ」


 そう断ったはずなのに、どうやら店内が込んだのか店の人から「お知り合いですか?相席をお願いしても」などと言われてしまいました。それはあり得ないことでは?どうやらエドウィン様が仕組んだようです。


「どういうつもりですか?」

「いや、アシュリーとゆっくりと話がしたいんだ。君に伝えきれていないことが…」

「伝えきれていないことなどないと思いますが?」


 私はすぐに店を出たかったのですが、さすがに食べ物を残すという事は抵抗があります。熱いですが、さっさと食べて帰りましょう。それが一番です。


「アシュリー、何度も言っているが、もう一度やり直さないか?」

「まだそんなことをおっしゃっているのですか?」

「実は、君に言ってなかったんだが、国境で頭に怪我をして過去の記憶が曖昧なんだ」

「は?記憶が…曖昧?」


 頭を怪我したとか、記憶が曖昧とか知りませんでしたが、それはどういうことでしょう。





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