繰り返しのその先は

みなせ

文字の大きさ
27 / 57

第27話 幕間 4

しおりを挟む


 優しいことは罪なのだろうか。

 目の前に苦しむものがいれば、手を差し伸べる。

 それは悪いことなのだろうか。



















 意識がはっきりしたその瞬間は覚えていない。

 けれども、気が付いた時にはそこがどこで、自分がどんなものかということは、よく分かっていた。

 自分よりずっと大きな存在が、それらの事を自分の中に与えてくれているからだ。



 だからすぐに、新しい世界を作り始めることができた。



 どこまでも続く真白な世界に、少しずつ自分の力をなじませていくと、小指の先ほどの透明な渦が現れる。

 そこに自分が持つ力を願いとともに落とせば、様々なものが生まれてくる。



 世界のはじめに生まれてくるのは、二つの光。

 同じ形で、色は対。

 離れがたそうに絡み合っては、それぞれに辺りをふわふわと漂う。



 この二つの光は、この世界の根幹となる、大切な大切なものなのだ。



 自分は、この二つの光が、苦しまないように、悲しまないように、傷つかないように、飢えないように守りながら、世界を作っていくことになる。



 世界を作るのは一度きりだ。

 絶対に失敗はできない。



 どうすれば、二つの光が幸せに過ごせる世界になるのか、試行錯誤をしながらひたすらに力を使い続ける。

 そうしていったいどのくらいの時が流れたのか。

 白い世界は緑にあふれる素晴らしい生活の場になっていた。

 世界のどこを見ても幸せそうな笑顔とやさしさがあふれ、放っておいても平和が続くようになっていた。




 だから、だろうか。


 自分の世界ではないどこかから苦しそうな声が聞こえて、初めてよそ見をしてしまった。

 隣に別の誰かが作る世界があることは知っている。

 けれども、本来であれば隣の世界は見えないはずだ。


 それぞれの白い世界は、隣り合っているとはいえ決して交わらぬほど広く、遠いはずなのだ。


 なのに、その悲鳴はひどく近い場所から聞こえた。
 聞こえなかったことにするべきだったが、気になってしょうがない。


 仕方なく声の方へ向かえば、少し離れた場所に男が一人背を丸めて座り込んでいた。







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

呪いという祝福を贈りましょう

luna - ルーナ -
ファンタジー
亡き母の言いつけを守り、ジュリエッタは能力を隠していた。 異母妹に無実の罪をつけられて、処刑になったジュリエッタは祝福という呪いを贈った。 死に戻りはしません。 死に戻りの話は多いけど、最後まで死に戻りはしません。ヒロインが幸せにならない話は嫌だ! と、いう方には向かない話です。ご理解の上、読んでください。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】巻き戻したのだから何がなんでも幸せになる! 姉弟、母のために頑張ります!

金峯蓮華
恋愛
 愛する人と引き離され、政略結婚で好きでもない人と結婚した。  夫になった男に人としての尊厳を踏みじにられても愛する子供達の為に頑張った。  なのに私は夫に殺された。  神様、こんど生まれ変わったら愛するあの人と結婚させて下さい。  子供達もあの人との子供として生まれてきてほしい。  あの人と結婚できず、幸せになれないのならもう生まれ変わらなくていいわ。  またこんな人生なら生きる意味がないものね。  時間が巻き戻ったブランシュのやり直しの物語。 ブランシュが幸せになるように導くのは娘と息子。  この物語は息子の視点とブランシュの視点が交差します。  おかしなところがあるかもしれませんが、独自の世界の物語なのでおおらかに見守っていただけるとうれしいです。  ご都合主義の緩いお話です。  よろしくお願いします。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...