異世界距離恋愛 (修正版)

ふくまめ

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類友は異世界まで呼ぶことができるのか

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「…んじゃ仕事終わりに寄るから、それまでせめて散らかさないように。」
「「はーい。」」
「…本当に頼むぞ。」

朝から心配そうな郡司さんをお見送り。私とナインが精一杯の笑顔でいってらっしゃーいと手を振っているのに、返ってくるのはため息だった。なぜ。

「…さて。」
「ユキさん、健人の言いつけ覚えてる?」
「もちろん。」

郡司さんは仕事に行ったが、一般常識が少々危ない私はもちろん出かけることはできない。念のため断っておくが私が社会不適合者だというような意味合いではなく、純粋にここでの生活における情報が飲み込めていかないというだけだ。ナインも、天才科学者はあちこちに引っ張りだこよろしく忙しいのだとばかり思っていたけれど、今日は休みにするんだーと何とものんびりしたスケジューリングでお休みにしたのだという。…本当にこの国お抱えなんだろうか。本当なんだとしても、それはそれで少々不安になる。
とにかく、現状私とナインの二人で仲良くお留守番というわけだ。

「できるだけ片づけを進めておくように、でしょ。」
「そ。それができないならせめて散らかすな、なんて言ってくれちゃってさ。」
「私たちで片づけを進めて、驚かせてやろう。」
「それがいい。」

郡司さんは夕方まで帰ってこない。一日かければ私たちだけでもそれなりに片づけを進めることができるはず。郡司さんの口ぶりからするに、私たちで片づけ何てできるはずがないだろうと思っているに違いない。…いや、確かにそう思われても仕方がないような手際ではあったんだけども。それはそれとして、やれるんだぞってところも見せてやろうじゃないかとナインが立ち上がったのだ。すでに友人としての絆があると思っている私としては、手を貸さないわけにはいかない。
私たち二人は手術に向かう外科医よろしく、軍手を手に奥の部屋へと乗り込むのだった…。



「…んで、二人して一日中こうしてたのか?」
「「…はっ。」」

え、何で郡司さんがいるの?今何時?部屋の入口から声をかけられてハッとする。まさか時間を忘れて没頭してしまうなんて、不覚…。ナインも驚いてすごい勢いで郡司さんを振り返っている。

「健人!もう帰ってきたの!?」
「もうっていうか…普通に仕事終わってきたんだけどな。部屋真っ暗にして何してるかと思えば…。何をしていたか、説明してもらおうか?」
「え、えっとぉ…。」
「…。」

私たちの手には掃除道具ではなく、アニメ映画の設定資料集。暗闇の中光を放っているのはまさしくそのアニメ映画。周りに散乱しているのは封を切ったお菓子とジュースのペットボトル。

「ち、違うんだよ健人!これはその…パッケージと中身が一致しているかの確認作業なんだ!」
「そうそう!」
「ほう。」
「ほら、一旦見終わって別のを見ようとした時に正しくパッケージに戻すの面倒で、こう…今見ようとしているものと交換する形で別のパッケージに入れちゃうことってあるじゃない!」
「あるあるー!それで行方不明になっちゃうのー!見たいなって思った時に見当たらなくって手間取るんだよねー!」
「俺はそんな経験ない。」
「「…。」」
「言いたいことはそれだけか?」
「「ごめんなさい。」」

素直に二人して謝った。呆れられながらも、類は友を呼ぶってお前たちのためにあるような言葉だなと評された。絶対褒めているつもりはないんだろうけども納得してしまう。つい昨日会ったばかりとは思えないほど仲良しだもんねー。
その後、お昼ご飯も食べずに確認作業、もとい鑑賞会にふけっていたことを知った郡司さんに再度叱られた。



「それでは、健人も帰ってきたことだし、ユキさんの検査結果をお伝えしようかと思いまーす。」

郡司さんに怒られたことで少しテンションが下がり気味なナインが、私の検査結果を説明する。普通の健康診断は基本的に自分しか確認しないから、なんだか緊張してしまう。…そういえば、肝機能について少し注意されたことがあったような気がしないでもない。

「結果から申し上げますと、ユキさんは正真正銘の純粋な人間でした。おめでとう。」
「そうか。」
「…でしょうね。」

何を当たり前のことを言っているのだろうか。というか、検査ってそういうことを判断するためのものだっけ?不思議そうな表情をしていたのか、ナインはあぁそっか、と詳しく説明し始める。

「ユキさんにはちょっと分かりづらいか、ごめんごめん。」
「いや、いいけど…。その、私が人間であることが重要かどうかすら、私にはよく分からないんだけども。」
「うんうん。ユキさん、健人や僕みたいに、人間とはまた違った種族がこの世界にあふれているってことは、理解してもらえたよね?ほんっとにたくさんの種族がいるんだ。…彼らの中には、人間とは全く違った習慣だったり理解しがたいような生体の種族もいるんだ。」
「…なるほど?」
「古くから言われているのは、チェンジリングってやつだね。」
「チェンジリング。」
「そう。取り換え子ってこと。」
「とりかえこ…。何と取り換えるの?」
「この習慣は一部の妖精族にあるものなんだけど、人間の子供と妖精の子供を取り換えてしまうのさ。」
「え!?」

そんなことがあるのだろうか。人間と妖精を取り換える?いったい何のために。

「僕も詳しくは分からないし、だんだんと廃れている文化らしいんだけどね。昨今の児童虐待の流れは、妖精界でも非常に重要視されているんだ。」
「あ、妖精にもそういう感覚ってあるのね。」
「そりゃね!本来大事な大事な我が子を、何で人間の家庭に置いてこなきゃならないのかって話だからね。…ともかく、事例は少なくなったとはいえ可能性は捨てきれないんだ。人間だと思って生きて来たけど実は…なんてことだって考えられる。」

なんだそれ怖い。

「まぁ安心してよ!今回の検査でその可能性は払拭されたわけなんだからさ。」
「…よかったです。」
「でも肝機能に関してちょっと数値が悪いのでお酒は控えたほうがいいです。」
「くそぅ!」
「ここにきて禁酒勧められるってなんだよ。」

なんだよはこっちのセリフです。家に帰ってきたと思ったら楽しみに祀っていたお酒はないし、関わった人たちはお酒にあんまり興味がないから気が引けて飲めないし…。正直私今健康的な生活してない!?

「あ、忘れないうちに言っておくけど、ユキさん異世界人だから。」
「…は!?」

一体何の冗談か。
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