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類友は異世界まで呼ぶことができるのか③
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「ちょっと脱線しちゃったね。とにかく、異世界とはいっても、今いる世界から辿り着くための道があるんだよ。もしくは行くための手順とか。」
「…そんなのあるの。」
「うん。有名な所だと洞窟の奥とか井戸の底、ウサギの巣穴とか。」
「…なんか聞き覚えがあるようなないような…?」
「たまに人間が迷い込んで、そいつが帰って来た時にその時の話を残したりしてるから…。そんな感じの話があるんじゃねぇかな。」
「そうだねぇ…。大抵の場所には間違って入り込まないように仕掛けがしてあるはずなんだけど、たまにあるよね。そういった人たちが戻ってきたときに、力の一部を持って帰っちゃったりすることもあるし。」
「え、いいなぁ…。」
「いいかなぁ…?」
だって不思議な世界に迷い込んで、帰ってきたら自分も不思議な力が使えるようになってたって話でしょ?魔法が使えるようになるなんて、羨ましい以外にどう思えと?そう訴えるも、ナインと郡司さんは苦い顔を崩さない。
「うーん…魔法って言ってもねぇ、思っているほど便利ではないよ。疲れるし。」
「魔法って体力使うの…?」
「無から有は生み出されないんだよー。まぁ消耗を抑える方法がないわけでもないけど、そこまでして使いたいかと言われるとそうでもないし…。便利な機械を開発した方がいいよ。」
「み、身も蓋もない…。」
「これが現実だ。魔法に夢見ることもあるかもしれないが、そんなもんだぞ。」
「えー…。」
なんか…夢が壊されたような気がする。勝手に期待しておいて申し訳ないが、かなりがっかりしてしまった。
「まぁとにかくさ、事故でもなんでも道を辿ることができたり手順をなぞることができれば、異世界へ行くことは理論上可能なんだよね。…でも、ユキさんのところの世界はそれがかなり薄い繋がりしかないみたいだね。」
「そんなことが分かるの?」
「うん。こうすれば…。」
ふいにナインは私に向けて手を翳す。そして一定間隔で抑えるようにしながら少しずつ下にスライドさせていく。…この動き、どこかで見たような…。
『ユキさんって、口元見えない方が…』
「あっ!」
「え、何?」
「私をブサイクって言った時のやつ!」
「そんなこと言ってないでしょ!?チャームポイントって言っただけじゃないか。」
「あの言い方じゃ実質ブサイクって言ってるに等しいよ!…とにかく、その動きは私の正体を見るための検査の一環だったってわけね。…ん?それって、どんなことが分かるの?」
「え?解析しようと思えば何でも。」
「何でも?…じゃあ注射する必要なかったってことじゃない!」
「全部解析しようとするのはさすがに無謀だよ!それに肝機能低下を発見できたんだからよかったじゃない!」
「それはここに来る前から言われてたから知ってましたー!」
「だったら改善するような生活送れよ。初対面だってのに酒盗んだの何だの…。」
「それはそれ!」
ナインの証言により、血液検査をする必要がほとんどなかったことが発覚しました。これは許されない。
「ふー…。まぁ済んだことをどうこう言ってもね。それで?その便利な力を使って解析してみた結果、私は全く違った異世界からやってきた存在だと。」
「そうだね。…少し御業の痕跡があるから、神が関与していることは間違いないと思うけど。」
「御業?」
「神が起こす奇跡みたいな力のこと。実際は、チート級の力押しで事象を顕現させているわけなんだけども。」
「…?」
「まぁとんでも能力だと思ってくれればいいや。…もし神が意図的にユキさんをこっちの世界に呼んでいるんだとしたら、僕にどうこうできる問題じゃないなぁ。」
「え!?そんな、何とかしてよ!」
「そうは言っても…。神レベルの力は僕にはないし。神が求める結果を出せたら帰してくれるとは思うよ。飽きていなければだけど。」
「いやー!何とかお願いします、アマテラス様、ゼウス様、マイケルジョーダンに、ショーヘイオオタニ!」
「後半人間じゃねぇか。」
「この方々は生きながらにして神の領域に到達している人たちだよ、知らないの!?」
「どこに怒ってんだよ…。」
神様がなんやかんやしたというなら、もうこれは文字通り神頼みするしかない。そう思ってぱっと思いつく限りの神様に祈りをささげてみた。後半は郡司さんに突っ込まれてしまったが、後で調べたら神様の中には現人神という神々もいるらしい。…あの人たちはやっぱり人間の姿をした神様なのでは?
「結果としてはこんなもんだけど…。今日はどうする、ユキさん。」
「…へ?どうするって?」
「ユキさんを元の世界に帰すことは、一朝一夕にはいかないだろうからね。今日も泊まっていく?それとももうここに住んじゃう?」
「え、えっと…。」
急に決めろと言われても…。完全に失念していた。私は現状身寄りなどない。異世界から来ているというのなら、身分を証明するものなどあってないようなものだ。名刺や免許証を出したところで、元々この世界に存在していなかった私の身分を証明したところで、一体何になる。そもそも、ナインの話が本当かどうかも私には判断のしようがない。あの意味の分からない話の中に嘘が紛れ込んでいたとしても、私には判断のしようがない。
この世界には、私の居場所なんてない。
「…いや、今日は帰る。」
「健人は帰るの?」
「あぁ。…新島さんも。」
「え…。」
「…ナインと一緒にいても、夜更かしするだろうし、片づけだって進まないだろうからな。」
「もーそれは悪かったって!じゃあユキさん、またいつでも来てよ!」
「あ、う、うん。ありがとう。」
またねー!と玄関先まで見送りに来てくれたナインに手を振り返しながら、郡司さんと一緒に帰路に就く。外はすっかり暗くなっていて、あちこちの家から明かりがこぼれている。
「…あの。」
「何?」
「…私、またお邪魔することになっちゃって…、その…。」
「別に邪魔じゃないって言っただろ。…それに、ナインとあのまま暮らしてたら、本当に生活乱れそうだと思ったし。」
「あはは…。」
「…気になるんだったら、今からでもナインのところに戻ってもいいけど。」
「い、いや!そういうわけじゃ、ないんだけども…。」
「…。」
「…。」
結局、また郡司さんに迷惑を…。そう思うと申し訳なさに言葉が出てこない。どんな言葉を口にしようと、迷惑をかけてしまうことに変わりなないのだから。むしろ「そんなことない」って言わせようとしているような気さえしてしまって、身動きが取れなくなってしまう。何も言えなくなってしまって、二人でただ黙々と歩いていく。
「…さっきさ。」
「え?」
「類は友を呼ぶって、言っただろ。」
「…あぁ、そうだったね。」
「別の世界からでも、類友って呼んでこれるんだな。」
「んっ!?ごっほ!」
真剣な顔をして何を言い出すかと思えば…!類友は世界の壁を超える…、何だその響き!
「あははは!何それ!でも確かに!」
「異世界からでも似た者同士って集められるんだな、さすが御業。」
「あはははは!やめてよ、お腹痛くなる!」
郡司さんでもふざけることとかあるんだ…。なぜか感動すら覚える会話に、笑いが止まらなかった。いい歳した女が道端で爆笑しながら歩いているなんて、ちょっと距離を取りたくなるような光景だとは思う。それでもお腹の底から笑える。まだ大丈夫。なんだかよく分からない状況にはなってしまっているけど、私はいい人に拾ってもらえた。とても恵まれている。幸運だった。
なぜかは分からないが、何とか元の世界に戻れるような気がしてきた。
「…そんなのあるの。」
「うん。有名な所だと洞窟の奥とか井戸の底、ウサギの巣穴とか。」
「…なんか聞き覚えがあるようなないような…?」
「たまに人間が迷い込んで、そいつが帰って来た時にその時の話を残したりしてるから…。そんな感じの話があるんじゃねぇかな。」
「そうだねぇ…。大抵の場所には間違って入り込まないように仕掛けがしてあるはずなんだけど、たまにあるよね。そういった人たちが戻ってきたときに、力の一部を持って帰っちゃったりすることもあるし。」
「え、いいなぁ…。」
「いいかなぁ…?」
だって不思議な世界に迷い込んで、帰ってきたら自分も不思議な力が使えるようになってたって話でしょ?魔法が使えるようになるなんて、羨ましい以外にどう思えと?そう訴えるも、ナインと郡司さんは苦い顔を崩さない。
「うーん…魔法って言ってもねぇ、思っているほど便利ではないよ。疲れるし。」
「魔法って体力使うの…?」
「無から有は生み出されないんだよー。まぁ消耗を抑える方法がないわけでもないけど、そこまでして使いたいかと言われるとそうでもないし…。便利な機械を開発した方がいいよ。」
「み、身も蓋もない…。」
「これが現実だ。魔法に夢見ることもあるかもしれないが、そんなもんだぞ。」
「えー…。」
なんか…夢が壊されたような気がする。勝手に期待しておいて申し訳ないが、かなりがっかりしてしまった。
「まぁとにかくさ、事故でもなんでも道を辿ることができたり手順をなぞることができれば、異世界へ行くことは理論上可能なんだよね。…でも、ユキさんのところの世界はそれがかなり薄い繋がりしかないみたいだね。」
「そんなことが分かるの?」
「うん。こうすれば…。」
ふいにナインは私に向けて手を翳す。そして一定間隔で抑えるようにしながら少しずつ下にスライドさせていく。…この動き、どこかで見たような…。
『ユキさんって、口元見えない方が…』
「あっ!」
「え、何?」
「私をブサイクって言った時のやつ!」
「そんなこと言ってないでしょ!?チャームポイントって言っただけじゃないか。」
「あの言い方じゃ実質ブサイクって言ってるに等しいよ!…とにかく、その動きは私の正体を見るための検査の一環だったってわけね。…ん?それって、どんなことが分かるの?」
「え?解析しようと思えば何でも。」
「何でも?…じゃあ注射する必要なかったってことじゃない!」
「全部解析しようとするのはさすがに無謀だよ!それに肝機能低下を発見できたんだからよかったじゃない!」
「それはここに来る前から言われてたから知ってましたー!」
「だったら改善するような生活送れよ。初対面だってのに酒盗んだの何だの…。」
「それはそれ!」
ナインの証言により、血液検査をする必要がほとんどなかったことが発覚しました。これは許されない。
「ふー…。まぁ済んだことをどうこう言ってもね。それで?その便利な力を使って解析してみた結果、私は全く違った異世界からやってきた存在だと。」
「そうだね。…少し御業の痕跡があるから、神が関与していることは間違いないと思うけど。」
「御業?」
「神が起こす奇跡みたいな力のこと。実際は、チート級の力押しで事象を顕現させているわけなんだけども。」
「…?」
「まぁとんでも能力だと思ってくれればいいや。…もし神が意図的にユキさんをこっちの世界に呼んでいるんだとしたら、僕にどうこうできる問題じゃないなぁ。」
「え!?そんな、何とかしてよ!」
「そうは言っても…。神レベルの力は僕にはないし。神が求める結果を出せたら帰してくれるとは思うよ。飽きていなければだけど。」
「いやー!何とかお願いします、アマテラス様、ゼウス様、マイケルジョーダンに、ショーヘイオオタニ!」
「後半人間じゃねぇか。」
「この方々は生きながらにして神の領域に到達している人たちだよ、知らないの!?」
「どこに怒ってんだよ…。」
神様がなんやかんやしたというなら、もうこれは文字通り神頼みするしかない。そう思ってぱっと思いつく限りの神様に祈りをささげてみた。後半は郡司さんに突っ込まれてしまったが、後で調べたら神様の中には現人神という神々もいるらしい。…あの人たちはやっぱり人間の姿をした神様なのでは?
「結果としてはこんなもんだけど…。今日はどうする、ユキさん。」
「…へ?どうするって?」
「ユキさんを元の世界に帰すことは、一朝一夕にはいかないだろうからね。今日も泊まっていく?それとももうここに住んじゃう?」
「え、えっと…。」
急に決めろと言われても…。完全に失念していた。私は現状身寄りなどない。異世界から来ているというのなら、身分を証明するものなどあってないようなものだ。名刺や免許証を出したところで、元々この世界に存在していなかった私の身分を証明したところで、一体何になる。そもそも、ナインの話が本当かどうかも私には判断のしようがない。あの意味の分からない話の中に嘘が紛れ込んでいたとしても、私には判断のしようがない。
この世界には、私の居場所なんてない。
「…いや、今日は帰る。」
「健人は帰るの?」
「あぁ。…新島さんも。」
「え…。」
「…ナインと一緒にいても、夜更かしするだろうし、片づけだって進まないだろうからな。」
「もーそれは悪かったって!じゃあユキさん、またいつでも来てよ!」
「あ、う、うん。ありがとう。」
またねー!と玄関先まで見送りに来てくれたナインに手を振り返しながら、郡司さんと一緒に帰路に就く。外はすっかり暗くなっていて、あちこちの家から明かりがこぼれている。
「…あの。」
「何?」
「…私、またお邪魔することになっちゃって…、その…。」
「別に邪魔じゃないって言っただろ。…それに、ナインとあのまま暮らしてたら、本当に生活乱れそうだと思ったし。」
「あはは…。」
「…気になるんだったら、今からでもナインのところに戻ってもいいけど。」
「い、いや!そういうわけじゃ、ないんだけども…。」
「…。」
「…。」
結局、また郡司さんに迷惑を…。そう思うと申し訳なさに言葉が出てこない。どんな言葉を口にしようと、迷惑をかけてしまうことに変わりなないのだから。むしろ「そんなことない」って言わせようとしているような気さえしてしまって、身動きが取れなくなってしまう。何も言えなくなってしまって、二人でただ黙々と歩いていく。
「…さっきさ。」
「え?」
「類は友を呼ぶって、言っただろ。」
「…あぁ、そうだったね。」
「別の世界からでも、類友って呼んでこれるんだな。」
「んっ!?ごっほ!」
真剣な顔をして何を言い出すかと思えば…!類友は世界の壁を超える…、何だその響き!
「あははは!何それ!でも確かに!」
「異世界からでも似た者同士って集められるんだな、さすが御業。」
「あはははは!やめてよ、お腹痛くなる!」
郡司さんでもふざけることとかあるんだ…。なぜか感動すら覚える会話に、笑いが止まらなかった。いい歳した女が道端で爆笑しながら歩いているなんて、ちょっと距離を取りたくなるような光景だとは思う。それでもお腹の底から笑える。まだ大丈夫。なんだかよく分からない状況にはなってしまっているけど、私はいい人に拾ってもらえた。とても恵まれている。幸運だった。
なぜかは分からないが、何とか元の世界に戻れるような気がしてきた。
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