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第十九話 誤解が解ける
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あれからかれこれ三十分がたった。
「やっぱりナンパしてたんじゃないのか!?」
「だから!してないって何度も言ってるでしょうが!」
……まだ尋問が続いている……
マジでいい加減にしてくれ……もう嫌になってきた……
でも認めるわけにもいかないし……どうしたら……
「お話は終わりましたか?こちらは終わりましたが……」
この声は……確か……
ローズのルームメイトの……王女だ。
話が終わったということは、クラスメイト全員にデマが伝わったことになる……
彼女の後ろには生徒が二十人ほどいる。
十中八九、クラスメイトだ。
ああ……女子達がゴミを見るような目で俺を見てくる……
「ああ!す、すいません!こっちはまだ終わっていません。未だこいつが認めていなくてですね……」
「まだ認めていないのですか!?なんて往生際の悪い……」
「いや、やってないんだから往生際が悪いもクソもねえだろ!」
……それでも俺は認めない。
たとえ女子達が俺をあんな目で見てきても。
俺は絶対に認めるわけにはいかない。
なぜなら俺はやっていないのだから。
「まだそんなことを!?いい加減にしなさい!」
「いい加減にするのはそっちだわ!俺は何回も何回もやってないって言ってんだよ!」
「貴様!王女様に向かって何という言い草だ!礼儀を知らんのか!」
「いえ……その点は大丈夫ですわ」
「え!?な、なぜです!?」
「それは私もここにいる皆と同じ、この学園に通うことになる生徒なのです。それに、変にかしこまられても嫌ですし」
「そ、そうですか……分かりました……では、こいつはどうしましょう?」
「そうですね……取り敢えずローズさんの意見を聞きましょう。被害者はローズさんですし。部屋に行って呼んできますわ」
「よろしくお願いします」
「先生もかしこまらずに。私を一人の生徒として扱ってください」
「王女様がそうおっしゃるのなら……次回からそうさせていただきます」
「ええ。では、呼んできますわ」
そう言って王女は去っていった。
王女が二階に上がるのを見届けてから、ローズの兄はこちらを向いて睨みつけてきた。
「さあ……観念しろよ……ローズがすべて話せばお前は終わりだ……!」
ローズの兄はそう言うと、アテナさんのところに行った。
アテナさんはなかなか認めない俺に呆れたのか、途中から話に参加せずに少しその場から離れていたのだ。
大方、アテナさんがいなくなった後の話を説明し、もうすぐ終わるから来てほしいみたいなことを言いに行ったのだろう。
すると、ローズの兄が離れた瞬間、俺の周りに男子生徒がよってきた。
な、何だこいつら……俺のことを笑いに来やがったのか……?
「ミツル、っていったけ……」
「そ、そうだが……」
「お前……凄えな!」
……は?
「は?」
「だって初日にナンパとか……凄えよ!同じ男として尊敬する!」
「そうだよな!ほんと凄えよお前!」
「ほんとほんと!」
「よくやろうと思ったな!」
凄え、とか、尊敬する、とかそのような言葉が男子生徒から次々と出てくる。
ああ……やっぱり男なんだな……こいつらも……
そんな俺達を見て女子達は更に目が冷たくなっていた。
さらにヒソヒソ声も聞こえる……
おい、聞こえてるからな。何だよ強引に迫ったって。
俺そんなことしてないから!
つーかそもそもナンパしてないし!
「いや、俺してないから。ホントに」
「またまた~」
「ホントだって言ってんだろが……」
「あっ!やっべ!先生帰ってきた!じゃあ、まぁ……頑張れよ!」
そいつの言う通り、ローズの兄がアテナさんを連れて帰ってきた。
「さあて……もうすぐだな……白状したほうが身のためだぞ?」
「だからしてないって!」
「まだ言うか!お前はローズを――」
「先生!ローズさんを連れてきましたわ!」
声のした方を見ると、王女とローズが立っていた。
ローズ……頼む……!俺の疑いを晴らしてくれ……!
「おお!さあローズ!話してくれ!」
「お兄ちゃん……ミツルは絶対にそんなことしない……」
「うんうん!……うん?」
「……え?ど、どういうことですか?ローズさん?」
「私……まだナンパがどんなものなのか、あまり理解できてないけど……皆の反応を見たら、それが女の子にとってあまり好ましくないものってことは分かった……。だったらミツルは絶対にそんなことしてない。だってミツルは、私の八つ当たりも笑って許してくれた、とても優しい人だから……」
「ロ、ローズ……!」
ローズが俺のことをそんなふうに思ってくれていたなんて……
ありがとう、ローズ……
「……そうですか……どうやら私達が間違っていたようですね……本当に申し訳ありません」
「い、いや……誤解が解けたならいいんだ」
「……悪かったな……だが、ローズはやらんぞ……!」
……シスコンすぎだろ……この人……
早くなんとかしないと手遅れに……
すでに手遅れですね。はい。
「わ、私は信じてたわよ!ミツル!」
「いや思いっきり疑ってましたよね!?」
「うっ……ご、ごめんなさい……」
「まぁ、良いですけど……」
「?よく分からないけど……ミツルがナンパしたって誤解は解けたの?」
「ああ。お前のおかげだよ。ありがとな。ローズ」
「うん……ミツルには救ってもらったから……その恩返し……」
「え?俺何かしたっけ?」
「……分かんないなら良い……」
「は?何だよ?」
「……部屋戻る……」
「あ、待ってローズさん!皆さんももう戻ってもらって大丈夫ですわ!」
王女のその言葉を皮切りに、次々と部屋に戻っていく。
誤解も解けたし、俺も部屋に向かいたいな。
「すいません。俺も部屋に……」
「そうだな。ほら鍵だ。寮の説明はルームメイトに聞け。ちなみに階段が二つあるが、右側の階段は女子寮につながっているから男子は立ち入り禁止だ。いいな?」
「分かりました。ではまた」
「ああ」
「ええ」
ローズの兄とアテナさんと別れ、与えられた部屋に向かう。
……いやホントに誤解が解けてよかった……
あのままだったら学園生活終わってたからな……
……ルームメイト、どんなやつだろうか……
トラブルになりなさそうなやつがいいな……
……それにしても、俺ローズに何かしたっけ?
何もしてないと思うんだけどな……
「やっぱりナンパしてたんじゃないのか!?」
「だから!してないって何度も言ってるでしょうが!」
……まだ尋問が続いている……
マジでいい加減にしてくれ……もう嫌になってきた……
でも認めるわけにもいかないし……どうしたら……
「お話は終わりましたか?こちらは終わりましたが……」
この声は……確か……
ローズのルームメイトの……王女だ。
話が終わったということは、クラスメイト全員にデマが伝わったことになる……
彼女の後ろには生徒が二十人ほどいる。
十中八九、クラスメイトだ。
ああ……女子達がゴミを見るような目で俺を見てくる……
「ああ!す、すいません!こっちはまだ終わっていません。未だこいつが認めていなくてですね……」
「まだ認めていないのですか!?なんて往生際の悪い……」
「いや、やってないんだから往生際が悪いもクソもねえだろ!」
……それでも俺は認めない。
たとえ女子達が俺をあんな目で見てきても。
俺は絶対に認めるわけにはいかない。
なぜなら俺はやっていないのだから。
「まだそんなことを!?いい加減にしなさい!」
「いい加減にするのはそっちだわ!俺は何回も何回もやってないって言ってんだよ!」
「貴様!王女様に向かって何という言い草だ!礼儀を知らんのか!」
「いえ……その点は大丈夫ですわ」
「え!?な、なぜです!?」
「それは私もここにいる皆と同じ、この学園に通うことになる生徒なのです。それに、変にかしこまられても嫌ですし」
「そ、そうですか……分かりました……では、こいつはどうしましょう?」
「そうですね……取り敢えずローズさんの意見を聞きましょう。被害者はローズさんですし。部屋に行って呼んできますわ」
「よろしくお願いします」
「先生もかしこまらずに。私を一人の生徒として扱ってください」
「王女様がそうおっしゃるのなら……次回からそうさせていただきます」
「ええ。では、呼んできますわ」
そう言って王女は去っていった。
王女が二階に上がるのを見届けてから、ローズの兄はこちらを向いて睨みつけてきた。
「さあ……観念しろよ……ローズがすべて話せばお前は終わりだ……!」
ローズの兄はそう言うと、アテナさんのところに行った。
アテナさんはなかなか認めない俺に呆れたのか、途中から話に参加せずに少しその場から離れていたのだ。
大方、アテナさんがいなくなった後の話を説明し、もうすぐ終わるから来てほしいみたいなことを言いに行ったのだろう。
すると、ローズの兄が離れた瞬間、俺の周りに男子生徒がよってきた。
な、何だこいつら……俺のことを笑いに来やがったのか……?
「ミツル、っていったけ……」
「そ、そうだが……」
「お前……凄えな!」
……は?
「は?」
「だって初日にナンパとか……凄えよ!同じ男として尊敬する!」
「そうだよな!ほんと凄えよお前!」
「ほんとほんと!」
「よくやろうと思ったな!」
凄え、とか、尊敬する、とかそのような言葉が男子生徒から次々と出てくる。
ああ……やっぱり男なんだな……こいつらも……
そんな俺達を見て女子達は更に目が冷たくなっていた。
さらにヒソヒソ声も聞こえる……
おい、聞こえてるからな。何だよ強引に迫ったって。
俺そんなことしてないから!
つーかそもそもナンパしてないし!
「いや、俺してないから。ホントに」
「またまた~」
「ホントだって言ってんだろが……」
「あっ!やっべ!先生帰ってきた!じゃあ、まぁ……頑張れよ!」
そいつの言う通り、ローズの兄がアテナさんを連れて帰ってきた。
「さあて……もうすぐだな……白状したほうが身のためだぞ?」
「だからしてないって!」
「まだ言うか!お前はローズを――」
「先生!ローズさんを連れてきましたわ!」
声のした方を見ると、王女とローズが立っていた。
ローズ……頼む……!俺の疑いを晴らしてくれ……!
「おお!さあローズ!話してくれ!」
「お兄ちゃん……ミツルは絶対にそんなことしない……」
「うんうん!……うん?」
「……え?ど、どういうことですか?ローズさん?」
「私……まだナンパがどんなものなのか、あまり理解できてないけど……皆の反応を見たら、それが女の子にとってあまり好ましくないものってことは分かった……。だったらミツルは絶対にそんなことしてない。だってミツルは、私の八つ当たりも笑って許してくれた、とても優しい人だから……」
「ロ、ローズ……!」
ローズが俺のことをそんなふうに思ってくれていたなんて……
ありがとう、ローズ……
「……そうですか……どうやら私達が間違っていたようですね……本当に申し訳ありません」
「い、いや……誤解が解けたならいいんだ」
「……悪かったな……だが、ローズはやらんぞ……!」
……シスコンすぎだろ……この人……
早くなんとかしないと手遅れに……
すでに手遅れですね。はい。
「わ、私は信じてたわよ!ミツル!」
「いや思いっきり疑ってましたよね!?」
「うっ……ご、ごめんなさい……」
「まぁ、良いですけど……」
「?よく分からないけど……ミツルがナンパしたって誤解は解けたの?」
「ああ。お前のおかげだよ。ありがとな。ローズ」
「うん……ミツルには救ってもらったから……その恩返し……」
「え?俺何かしたっけ?」
「……分かんないなら良い……」
「は?何だよ?」
「……部屋戻る……」
「あ、待ってローズさん!皆さんももう戻ってもらって大丈夫ですわ!」
王女のその言葉を皮切りに、次々と部屋に戻っていく。
誤解も解けたし、俺も部屋に向かいたいな。
「すいません。俺も部屋に……」
「そうだな。ほら鍵だ。寮の説明はルームメイトに聞け。ちなみに階段が二つあるが、右側の階段は女子寮につながっているから男子は立ち入り禁止だ。いいな?」
「分かりました。ではまた」
「ああ」
「ええ」
ローズの兄とアテナさんと別れ、与えられた部屋に向かう。
……いやホントに誤解が解けてよかった……
あのままだったら学園生活終わってたからな……
……ルームメイト、どんなやつだろうか……
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……それにしても、俺ローズに何かしたっけ?
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