聖と邪の竜機戦争

辻谷戒斗

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第一章 入学編

入学編第十二話 外出

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「じゃあ行ってきます!」

「「「「行ってらっしゃいませ。ミリアお嬢様。ラノハ坊ちゃま」」」」

 ミリアはきちんと寝間着から着替えたラノハの手を引き、メイドと執事に見送られながら家を出る。
 もちろんラノハは着替えようとしなかったが、ミリアが無理矢理着替えさせようとしたので仕方なく、自分から着替えた。
 そうして着替えたラノハを、ミリアは再び無理矢理引きずり、ここまで連れ出してきたというわけだ。

「……で、どこに行くつもりなんだよ……」

 ここまで来てしまえば、もう抵抗は無意味と考えたのか、ミリアに行き場所を尋ねる。
 無理矢理連れてこられたのだから、ラノハにとって行き場所など知るよしもなかったのである。
 ミリアはラノハのその質問に少し驚いた顔を浮かべてから、すぐに笑顔になって口を開いた。

「……決めてない!」

「……はあ?」

「だってラノハと外に出たかっただけなんだもん。そんなの考えてるわけないでしょ」

 ミリアはあっけらかんとそう言ってみせた。
 そんなミリアの言葉を聞いたラノハは、数秒固まった後くるりと家の方に振り向いた。

「……帰る」

「いやああああ!ちょっと待ってぇ!」

 ミリアは帰ろうとするラノハを、手で引っ張って必死に引き止める。
 それでも止まりそうにないラノハを見て、ミリアはラノハが行きたそうなところを頭をフル回転させて考えた。
 そして、一つだけピンときた場所を、ラノハに告げる。

「そ、そうだ!模擬剣を買いに行こうよ!ね!?」

「……模擬剣……」

 ラノハの引っ張る力が弱くなる。
 これを感じ取ったミリアは、これはいける!と確信し、更に畳み掛けた。

「そう!模擬剣!私は剣使わないからいらないけど、ウィーンズ商会の本店なら色々揃ってるから、そこに行こうよ!」

「……分かった。確かに、最近新しい模擬剣が欲しかったところだ。そこなら行く」

 行くことを了承したラノハを見て、ミリアはよし!と、小さくガッツポーズを掲げた。
 そして、二人でウィーンズ商会の店舗へと向かう。
 ウィーンズ商会の店舗はスミーナ国の各地に点在している。
 王都にも数店舗存在するが、ラノハとミリアが今向かっているのはその中でも最大の大きさ、品揃えを誇る本店である。
 その本店だが、スパルド家の家からさほど遠くない距離にある。
 ちなみに、逆方面には竜機操縦士育成学校がある山と王宮がある。
 すると突然、本店に向かっている道中でミリアがラノハに話しかけた。

「……そういえば、最近ずっと雨なんだよね……。今は曇ってるぐらいだけど、傘持ってきた方が良かったかな?」

「……降ってきたらウィーンズ商会で傘を買えばいいだろ……」

「あ、それもそっか。ありがとラノハ」

 ミリアは笑顔でラノハに言葉を返した。
 そんなミリアの笑顔を見て、ラノハは一瞬固まってしまったが、すぐに顔を背けて口を開く。

「……別に大したこと言ってねえよ……」

「それでもありがと!……あ、着いたよ」

 ミリアの言う通り、二人の目の前には大きな建物があった。ウィーンズ商会の本店である。
 ミリアはその本店の扉を開いてラノハと共に本店の中に入った。
 そこには、数々の品がジャンル別に置かれていた。

「ラノハ。模擬剣が置かれてるのってどこだっけ?」

「……確か四階だったと思う。行くぞ」

「うん」

 ラノハとミリアは階段を登り、四階へと向かう。
 そして四階に着いた時、目に入ったのはたくさんの模擬剣や盾、槍などであった。

「わー!相変わらずの品揃えだね!」

「だな……。さて、しっくりくるものを探すとするか」

 ラノハはそう言って、店内の片手剣のブースに向かう。
 ミリアもその後に続いた。
 そしてラノハは、一本一本模擬剣を手にとって、その感触を確かめる。
 そして、十何本目かの模擬剣を右手にとった時、しっくりくる剣を一本見つけた。

「……まず一本目だな」

「ラノハ。これはどう?」

 ラノハはミリアがとった剣を左手で受け取り、感触を確かめる。

「……いいな。これ」

「よかった!じゃあその二本で決まりだね!」

「ああ。買ってくる」

「うん!」

 そう言ってラノハはレジに向かって歩いていった。
 ミリアは店の外に出て、階段近くにあるベンチに座る。
 ふと、ミリアが階段の方に振り向くと、一つ下の階にアクセサリーのブースが見えた。
 ミリアがそのアクセサリーのブースの方をジッと見つめていると、その肩を叩かれた。
 ミリアがハッとして振り返ると、そこには模擬剣を買い終えたラノハがいた。

「……買い終わったぞ」

「あっ!お、おかえりラノハ!」

「……どうした?」

「ううん!なんでもないよ!」

「……そうか。じゃあ帰るぞ。早く帰って試してみたい」

「う、うん!分かった!」

 ミリアは座っていたベンチから立ち上がり、ラノハと共に階段を降りる。
 だが、三階に着いた時、ミリアが口を開いた。

「ごめん!先に帰っててくれない?」

「は?なんでだ?」

「いや……ちょっとね……」

「だから何だよ?」

「もう!察してよ!とにかく先に帰って!」

「お、おう……」

 ラノハはミリアのこの物言いに釈然としなかったが、模擬剣を試すのが先決と考え、何も追求せずに立ち去った。
 一方、ラノハにトイレに行きたいということを察してもらえなかったミリアは、少し怒ってはいるが、別の思惑を隠していることもあり、少し申し訳ない気持ちも持ちつつトイレに向かうのであった。
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