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第一章 入学編
入学編第十七話 圧倒
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邪装竜機と戦うために飛翔したラノハを除く生徒たちは、先生たちが動かす聖装竜機を援護する形で戦っていた。
中距離戦闘型の機体は的を絞らせないために辺りを飛び回り、四方八方から光線を放つ。
近距離戦闘型は、攻撃をしては離れるというヒットアンドアウェイに徹した。
だがなぜか、邪装竜機四機からの反撃という反撃がこない。
生徒たちは疑問思いながら攻撃を続ける。
倒す必要はない。他の竜機操縦士が来るまでの時間稼ぎができればいいのだ。
それが前提条件なのだが、一部の生徒はこう思ってしまった。
……もしかしたら、自分たちで倒せるのではないか?と。
それは、聖装竜機を持って間もない一年生だからこそ心に現れた、小さな傲り。
それによって、数名の近距離戦闘型の生徒が少し攻撃の量を増やした。
最初は気づかないような微々たるもの。しかしそれは少しずつ、そして確かに増えてしまっていた。
「……こんなものか」
邪装竜機に乗る一人の男が、そう呟いた。
今まで防御のみに徹していた邪装竜機たちだったが、その男が乗る邪装竜機が背中にある剣の柄に手をつけた。
「っ!おい!離れろお前ら!危な――!」
一閃。まさにその一言に尽きる。
その男の邪装竜機が、剣で三機の近距離戦闘型の聖装竜機の片手や片足を切り落とした。
その切り落とされた聖装竜機の片腕や片足は、空から地面に落ちていく。
幸い、生身の体には届いていなかったが、切れ目からはバチバチッと音が鳴っていた。
切られた本人たちは、一瞬のことで何が起きたか理解していなかったが、リディオはいち早く反応し、彼らの前に行って盾と槍を構える。
「カイ!ティガロ!エリカ!下がれ!手や足が切られた状態では不利だ!」
三人はしばらく呆然としていたが、リディオの言葉を聞いて下降していく。
その顔は、とても見られるものではなかった。
「……もういいんですか?」
「ああ。竜機操縦士育成学校の生徒は驚異たり得ないと判断した。当初の予定通り、竜機操縦士を優先的に殺せ」
「了解よ。じゃ、さっさと殺してくるわ」
「竜機操縦士育成学校の生徒たちの足止めは私がやろう。三機で確実に殺してこい」
「「「了解」」」
邪装竜機に乗る者たちは、そう方針を決めた。
そして三機の邪装竜機が先生が乗る聖装竜機に襲いかかった。
相手がたった一機になったにも関わらず、生徒たちの顔に冷や汗が流れる。
先程の出来事で、この邪装竜機が自分たちにとって圧倒的な存在であることを認識したのだ。
足止めどころの話ではない。少しでも隙を作ってしまえば、その瞬間に自分たちは死ぬ。
そういう確信が、生徒たちの中にはあった。
だが、それでもミリアとシルアは、邪装竜機の動きを見ながら先生を助けるために別々のところから飛びったった。
「行かせるとでも?」
それを止めようと邪装竜機が動き出すが、生徒たちもまた、邪装竜機を止めようと動き出した。
「ミリアさんの邪魔はさせない……!」
ホーブが邪装竜機に切りかかったが、邪装竜機が持つ盾にその攻撃を防がれてしまった。
そしてカウンターで蹴られ、ホーブは地面に落ちていき、そのまま激突する。
「ホーブッ!」
シルアがホーブの名前を叫んだ時、邪装竜機がシルアの方に向かった。
ホーブの方に気を取られていたシルアは、反応が遅れる。
だが、その前にリディオが立ち攻撃を防いだ。
「させるかっ!」
「……邪魔だ」
しかし、邪装竜機がその後すぐに蹴りを繰り出し、リディオを吹き飛ばした。
吹き飛ばされたリディオはシルアと激突してしまう。
邪装竜機はその後ミリアの方へと向かおうとするが、遠くから三発の光線が邪装竜機を捉えた。
邪装竜機に乗る男は、その光線に辛うじて反応し、盾で防ぐ。
遠距離戦闘型の聖装竜機に乗るシルンたちの狙撃である。
遠距離戦闘型の聖装竜機が扱う聖装光線銃は狙撃銃となっており、通常の光線銃よりも威力が高く、遠くへ飛ぶ。
しかし、通常の光線銃とは異なり、銃の中でのホーリーエネルギーの圧縮を限界まで行うため、連射ができないところが欠点である。
そんな狙撃をもってしても、邪装竜機の盾を破ることはできなかった。
だが、その隙を見逃さず、ヴァルサが攻撃を仕掛ける。剣から斬撃を飛ばしたが、邪装竜機はそれを辛うじて避けた。
「なっ!くそっ!」
ヴァルサはとっさに盾を構えたが、邪装竜機はヴァルサを盾ごと弾き飛ばし、ミリアに向かって猛追する。
ミリアを含む中距離戦闘型の機体が光線を放つも、それを全て捌き切り、ミリアを捉えた。
その時、一筋の光が、ミリアと邪装竜機の真横に現れた。
その光は、驚異的なスピードで邪装竜機に突撃し、それを吹き飛ばしたのであった――。
中距離戦闘型の機体は的を絞らせないために辺りを飛び回り、四方八方から光線を放つ。
近距離戦闘型は、攻撃をしては離れるというヒットアンドアウェイに徹した。
だがなぜか、邪装竜機四機からの反撃という反撃がこない。
生徒たちは疑問思いながら攻撃を続ける。
倒す必要はない。他の竜機操縦士が来るまでの時間稼ぎができればいいのだ。
それが前提条件なのだが、一部の生徒はこう思ってしまった。
……もしかしたら、自分たちで倒せるのではないか?と。
それは、聖装竜機を持って間もない一年生だからこそ心に現れた、小さな傲り。
それによって、数名の近距離戦闘型の生徒が少し攻撃の量を増やした。
最初は気づかないような微々たるもの。しかしそれは少しずつ、そして確かに増えてしまっていた。
「……こんなものか」
邪装竜機に乗る一人の男が、そう呟いた。
今まで防御のみに徹していた邪装竜機たちだったが、その男が乗る邪装竜機が背中にある剣の柄に手をつけた。
「っ!おい!離れろお前ら!危な――!」
一閃。まさにその一言に尽きる。
その男の邪装竜機が、剣で三機の近距離戦闘型の聖装竜機の片手や片足を切り落とした。
その切り落とされた聖装竜機の片腕や片足は、空から地面に落ちていく。
幸い、生身の体には届いていなかったが、切れ目からはバチバチッと音が鳴っていた。
切られた本人たちは、一瞬のことで何が起きたか理解していなかったが、リディオはいち早く反応し、彼らの前に行って盾と槍を構える。
「カイ!ティガロ!エリカ!下がれ!手や足が切られた状態では不利だ!」
三人はしばらく呆然としていたが、リディオの言葉を聞いて下降していく。
その顔は、とても見られるものではなかった。
「……もういいんですか?」
「ああ。竜機操縦士育成学校の生徒は驚異たり得ないと判断した。当初の予定通り、竜機操縦士を優先的に殺せ」
「了解よ。じゃ、さっさと殺してくるわ」
「竜機操縦士育成学校の生徒たちの足止めは私がやろう。三機で確実に殺してこい」
「「「了解」」」
邪装竜機に乗る者たちは、そう方針を決めた。
そして三機の邪装竜機が先生が乗る聖装竜機に襲いかかった。
相手がたった一機になったにも関わらず、生徒たちの顔に冷や汗が流れる。
先程の出来事で、この邪装竜機が自分たちにとって圧倒的な存在であることを認識したのだ。
足止めどころの話ではない。少しでも隙を作ってしまえば、その瞬間に自分たちは死ぬ。
そういう確信が、生徒たちの中にはあった。
だが、それでもミリアとシルアは、邪装竜機の動きを見ながら先生を助けるために別々のところから飛びったった。
「行かせるとでも?」
それを止めようと邪装竜機が動き出すが、生徒たちもまた、邪装竜機を止めようと動き出した。
「ミリアさんの邪魔はさせない……!」
ホーブが邪装竜機に切りかかったが、邪装竜機が持つ盾にその攻撃を防がれてしまった。
そしてカウンターで蹴られ、ホーブは地面に落ちていき、そのまま激突する。
「ホーブッ!」
シルアがホーブの名前を叫んだ時、邪装竜機がシルアの方に向かった。
ホーブの方に気を取られていたシルアは、反応が遅れる。
だが、その前にリディオが立ち攻撃を防いだ。
「させるかっ!」
「……邪魔だ」
しかし、邪装竜機がその後すぐに蹴りを繰り出し、リディオを吹き飛ばした。
吹き飛ばされたリディオはシルアと激突してしまう。
邪装竜機はその後ミリアの方へと向かおうとするが、遠くから三発の光線が邪装竜機を捉えた。
邪装竜機に乗る男は、その光線に辛うじて反応し、盾で防ぐ。
遠距離戦闘型の聖装竜機に乗るシルンたちの狙撃である。
遠距離戦闘型の聖装竜機が扱う聖装光線銃は狙撃銃となっており、通常の光線銃よりも威力が高く、遠くへ飛ぶ。
しかし、通常の光線銃とは異なり、銃の中でのホーリーエネルギーの圧縮を限界まで行うため、連射ができないところが欠点である。
そんな狙撃をもってしても、邪装竜機の盾を破ることはできなかった。
だが、その隙を見逃さず、ヴァルサが攻撃を仕掛ける。剣から斬撃を飛ばしたが、邪装竜機はそれを辛うじて避けた。
「なっ!くそっ!」
ヴァルサはとっさに盾を構えたが、邪装竜機はヴァルサを盾ごと弾き飛ばし、ミリアに向かって猛追する。
ミリアを含む中距離戦闘型の機体が光線を放つも、それを全て捌き切り、ミリアを捉えた。
その時、一筋の光が、ミリアと邪装竜機の真横に現れた。
その光は、驚異的なスピードで邪装竜機に突撃し、それを吹き飛ばしたのであった――。
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