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1章『いじめてあげる』
22:大好きな君の傍
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****♡Side・副社長(皇)
──油断していたんだ。
皇は塩田の胸の中で目を閉じ、先ほどのことを思い出していた。落ち着く彼の体温。彼は、資料室のソファーに身体を沈め、皇を横抱きにしていた。小さな部屋の窓から降り注ぐ柔らかい光が、眠りに誘う。
「眠いのか?」
「ううん」
「良い匂いがする」
皇の髪を撫でていた彼が、皇の首筋に唇を寄せる。
「塩田……ダメだよ」
「感じちゃう?」
と彼が、冗談ぽく言ってクスリと笑う。
──やはり自分は、塩田以外は……。
**
呼ばれた社長室には社長しかいなかった。いつもなら、社長の悪戯を止めてくれるはずの社長秘書、神流川が居るはずなのに。嫌な予感を感じつつも、皇は週半ばの出張について説明を受けていた。
『社長、神流川は……』
と彼に問えば、
『そんなに彼が気になる? 君は気が多いのかい?』
とため息混じりに社長が皇を視界に捉える。
皇は社長の斜め向かいの三人掛けのソファーに腰かけ、テーブルに置かれた資料を見つめていた。彼が立ち上がるのに気づき、身構えたが遅い。
『何するんですかっ』
『何って』
いくら人より少し鍛えているからと言っても、上から体重をかけられては身動きできない。恐怖が皇を支配した。強張った皇を見て社長は、自分の好きに出来ると思ったに違いない。皇自身もそれは覚悟していた。皇は彼にネクタイを引き抜かれ、ぎゅっと目を閉じる。しかし、次の瞬間……。
『!』
無理に引っ張られたせいでワイシャツの胸元からボタンがはじけ飛んだ。それはテーブルの上でバウンドし、毛の長い絨毯に落ちる。
────なんで? 俺が何したって言うの?
ハラハラと涙を溢す皇に、我に返った彼が息を呑んだ。
『どうして……こんなことするんですか?』
『皇くん……』
慌てる彼が何か言おうとしたところで、社長室に人影が。
『社長! 何してるんですか⁈』
神流川が来なかったとしても、自分は社長を押しのけ社長室から飛び出していたことだろう。
**
「自分で、着られる」
「俺が着せたいんだよ」
塩田に慰められた後、彼に苦情係のロッカールームに連れてこられた。彼は洗い立てのシャツと、まだ封を開封していない新品のワイシャツを出してどっちがいい? と皇に質問し、滅多に見せない柔らかい笑みを浮かべる。そんな二択、答えは決まっているのにと思いながら、皇は洗い立てのシャツを手に取った。
「塩田の匂い」
「柔軟剤な」
彼は皇の相手をしながら、シャツのボタンをはめてくれる。子供じゃないのにと思いながらも、彼のしたいようにさせていた。
「やっぱり、皇に白はダメだな」
会社では、二人きりでも名字で呼ぶ彼。
「似合わない?」
「いや、肌が透ける。しょうがないな、これ着とけ」
塩田は自分が着ていたカーディガンを脱ぐと、皇に寄こしたのだった。
──油断していたんだ。
皇は塩田の胸の中で目を閉じ、先ほどのことを思い出していた。落ち着く彼の体温。彼は、資料室のソファーに身体を沈め、皇を横抱きにしていた。小さな部屋の窓から降り注ぐ柔らかい光が、眠りに誘う。
「眠いのか?」
「ううん」
「良い匂いがする」
皇の髪を撫でていた彼が、皇の首筋に唇を寄せる。
「塩田……ダメだよ」
「感じちゃう?」
と彼が、冗談ぽく言ってクスリと笑う。
──やはり自分は、塩田以外は……。
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呼ばれた社長室には社長しかいなかった。いつもなら、社長の悪戯を止めてくれるはずの社長秘書、神流川が居るはずなのに。嫌な予感を感じつつも、皇は週半ばの出張について説明を受けていた。
『社長、神流川は……』
と彼に問えば、
『そんなに彼が気になる? 君は気が多いのかい?』
とため息混じりに社長が皇を視界に捉える。
皇は社長の斜め向かいの三人掛けのソファーに腰かけ、テーブルに置かれた資料を見つめていた。彼が立ち上がるのに気づき、身構えたが遅い。
『何するんですかっ』
『何って』
いくら人より少し鍛えているからと言っても、上から体重をかけられては身動きできない。恐怖が皇を支配した。強張った皇を見て社長は、自分の好きに出来ると思ったに違いない。皇自身もそれは覚悟していた。皇は彼にネクタイを引き抜かれ、ぎゅっと目を閉じる。しかし、次の瞬間……。
『!』
無理に引っ張られたせいでワイシャツの胸元からボタンがはじけ飛んだ。それはテーブルの上でバウンドし、毛の長い絨毯に落ちる。
────なんで? 俺が何したって言うの?
ハラハラと涙を溢す皇に、我に返った彼が息を呑んだ。
『どうして……こんなことするんですか?』
『皇くん……』
慌てる彼が何か言おうとしたところで、社長室に人影が。
『社長! 何してるんですか⁈』
神流川が来なかったとしても、自分は社長を押しのけ社長室から飛び出していたことだろう。
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「自分で、着られる」
「俺が着せたいんだよ」
塩田に慰められた後、彼に苦情係のロッカールームに連れてこられた。彼は洗い立てのシャツと、まだ封を開封していない新品のワイシャツを出してどっちがいい? と皇に質問し、滅多に見せない柔らかい笑みを浮かべる。そんな二択、答えは決まっているのにと思いながら、皇は洗い立てのシャツを手に取った。
「塩田の匂い」
「柔軟剤な」
彼は皇の相手をしながら、シャツのボタンをはめてくれる。子供じゃないのにと思いながらも、彼のしたいようにさせていた。
「やっぱり、皇に白はダメだな」
会社では、二人きりでも名字で呼ぶ彼。
「似合わない?」
「いや、肌が透ける。しょうがないな、これ着とけ」
塩田は自分が着ていたカーディガンを脱ぐと、皇に寄こしたのだった。
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