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1章『いじめてあげる』
27:どうしたの?
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****♡Side・塩田
「塩田、今日はなんだか浮かれてるね」
隣の席の電車が、微妙な塩田の変化に指摘をすると、
「今日、デートだから」
と無表情で答える塩田。
それでも電車には、塩田が嬉しそうに見えるらしい。
「やあ。マイハニー塩田と、愉快な愚民ども」
と、そこへふわりと言い香りと共に、我が社の名物副社長が苦情係に入って来る。
いつものことながら、板井が彼をポカンと見上げていた。
「なんだ、ダーリン」
塩田はモニターを見つめたまま、棒読みで問う。
「何か手伝うか?」
どうやら皇は早く帰りたいようだ。塩田は彼のネクタイを掴むと、ちゅっと口づける。
「は?」
驚く、皇。
「もう、終わる」
と、塩田はモニターに視線を戻したが、驚いていたのは皇だけではなかったようだ。
「塩田、ここでイチャイチャすんなよなー」
と隣の席の電車から苦情が。
「喧しい。誰のせいで残業してると思っているんだ」
モニターに視線を向けたまま、そう返り討ちにしてやれば、
「ごめーん、俺でした」
と素直に謝る電車。
そんな二人を、寂しそうに見ている皇。
「よし、俺の分終了。おつかれさん」
塩田はものすごい速さでキーボードを叩くと、自分の割り当ての分を終わらせ立ち上がる。
「ん? どうした、皇」
しょんぼりして俯いている皇に気づいた塩田は、不思議そうな顔をし彼に尋ねるが、
「どうもしてないよ」
と素っ気なく立ち上がると、苦情係の出入り口に向かった。
「なんだよ」
塩田は腑に落ちないといった風に首を傾げつつ、カバンにノートパソコンをしまい、彼の後を追う。苦情係の面々におつかれと声をかけられながら。
「皇、待てって」
「うん?」
皇は塩田の声で立ち止まり、やはり元気のない感じでこちらを見る。
「どうした?」
「どうもしてな……」
「嘘。ちゃんと言って」
空いている方の手で、ぐいっと彼の腰を引き寄せれば、
「部署が違うと……なんか疎外感が」
と呟くように告白する。
──なんだそれ。可愛いんですけど?
「部署もなんも。皇は副社長なんだから、大抵の奴が部署違いってことになるだろ」
「そうだけど……」
しょんぼりする彼が可愛すぎて、今すぐ押し倒したい衝動に駆られるが、ここは社内。しかも廊下だ。いくら何でも、そんなトチ狂った行動に出ればクビは免れない。
「皇は可愛い」
「なっ⁈」
「しょうがないだろ? 俺の恋人は副社長様なんだからさ」
と、苦笑いをすれば、彼は額を塩田の肩につける。
そんな彼を愛しいなと思いながら、
「早くデート行こうよ、皇」
「うん……」
「楽しみにしてたんだから」
と付け加えると、彼は驚いた表情をして顔をあげた。
「ん? 何」
「へへ……いこっか」
と、照れたように笑う彼。
どうやら機嫌は直ったようである。
「俺様が、旨いものを食わせてやる。ついて来い、塩田」
塩田はそんな彼を見て、なんとも単純な恋人だなと思うのだった。
「塩田、今日はなんだか浮かれてるね」
隣の席の電車が、微妙な塩田の変化に指摘をすると、
「今日、デートだから」
と無表情で答える塩田。
それでも電車には、塩田が嬉しそうに見えるらしい。
「やあ。マイハニー塩田と、愉快な愚民ども」
と、そこへふわりと言い香りと共に、我が社の名物副社長が苦情係に入って来る。
いつものことながら、板井が彼をポカンと見上げていた。
「なんだ、ダーリン」
塩田はモニターを見つめたまま、棒読みで問う。
「何か手伝うか?」
どうやら皇は早く帰りたいようだ。塩田は彼のネクタイを掴むと、ちゅっと口づける。
「は?」
驚く、皇。
「もう、終わる」
と、塩田はモニターに視線を戻したが、驚いていたのは皇だけではなかったようだ。
「塩田、ここでイチャイチャすんなよなー」
と隣の席の電車から苦情が。
「喧しい。誰のせいで残業してると思っているんだ」
モニターに視線を向けたまま、そう返り討ちにしてやれば、
「ごめーん、俺でした」
と素直に謝る電車。
そんな二人を、寂しそうに見ている皇。
「よし、俺の分終了。おつかれさん」
塩田はものすごい速さでキーボードを叩くと、自分の割り当ての分を終わらせ立ち上がる。
「ん? どうした、皇」
しょんぼりして俯いている皇に気づいた塩田は、不思議そうな顔をし彼に尋ねるが、
「どうもしてないよ」
と素っ気なく立ち上がると、苦情係の出入り口に向かった。
「なんだよ」
塩田は腑に落ちないといった風に首を傾げつつ、カバンにノートパソコンをしまい、彼の後を追う。苦情係の面々におつかれと声をかけられながら。
「皇、待てって」
「うん?」
皇は塩田の声で立ち止まり、やはり元気のない感じでこちらを見る。
「どうした?」
「どうもしてな……」
「嘘。ちゃんと言って」
空いている方の手で、ぐいっと彼の腰を引き寄せれば、
「部署が違うと……なんか疎外感が」
と呟くように告白する。
──なんだそれ。可愛いんですけど?
「部署もなんも。皇は副社長なんだから、大抵の奴が部署違いってことになるだろ」
「そうだけど……」
しょんぼりする彼が可愛すぎて、今すぐ押し倒したい衝動に駆られるが、ここは社内。しかも廊下だ。いくら何でも、そんなトチ狂った行動に出ればクビは免れない。
「皇は可愛い」
「なっ⁈」
「しょうがないだろ? 俺の恋人は副社長様なんだからさ」
と、苦笑いをすれば、彼は額を塩田の肩につける。
そんな彼を愛しいなと思いながら、
「早くデート行こうよ、皇」
「うん……」
「楽しみにしてたんだから」
と付け加えると、彼は驚いた表情をして顔をあげた。
「ん? 何」
「へへ……いこっか」
と、照れたように笑う彼。
どうやら機嫌は直ったようである。
「俺様が、旨いものを食わせてやる。ついて来い、塩田」
塩田はそんな彼を見て、なんとも単純な恋人だなと思うのだった。
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