R18【同性恋愛】リーマン物語if1『いじめてあげる』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
30 / 63
1章『いじめてあげる』

27:どうしたの?

しおりを挟む
****♡Side・塩田

「塩田、今日はなんだか浮かれてるね」
 隣の席の電車でんまが、微妙な塩田の変化に指摘をすると、
「今日、デートだから」
と無表情で答える塩田。
 それでも電車には、塩田が嬉しそうに見えるらしい。
「やあ。マイハニー塩田と、愉快な愚民ども」
と、そこへふわりと言い香りと共に、我が社の名物副社長が苦情係に入って来る。
 いつものことながら、板井が彼をポカンと見上げていた。
「なんだ、ダーリン」
 塩田はモニターを見つめたまま、棒読みで問う。
「何か手伝うか?」
 どうやら皇は早く帰りたいようだ。塩田は彼のネクタイを掴むと、ちゅっと口づける。
「は?」
 驚く、皇。
「もう、終わる」
と、塩田はモニターに視線を戻したが、驚いていたのは皇だけではなかったようだ。

「塩田、ここでイチャイチャすんなよなー」
と隣の席の電車から苦情が。
「喧しい。誰のせいで残業してると思っているんだ」
 モニターに視線を向けたまま、そう返り討ちにしてやれば、
「ごめーん、俺でした」
と素直に謝る電車。
 そんな二人を、寂しそうに見ている皇。
「よし、俺の分終了。おつかれさん」
 塩田はものすごい速さでキーボードを叩くと、自分の割り当ての分を終わらせ立ち上がる。
「ん? どうした、皇」
 しょんぼりして俯いている皇に気づいた塩田は、不思議そうな顔をし彼に尋ねるが、
「どうもしてないよ」
と素っ気なく立ち上がると、苦情係の出入り口に向かった。
「なんだよ」
 塩田は腑に落ちないといった風に首を傾げつつ、カバンにノートパソコンをしまい、彼の後を追う。苦情係の面々におつかれと声をかけられながら。

「皇、待てって」
「うん?」
 皇は塩田の声で立ち止まり、やはり元気のない感じでこちらを見る。
「どうした?」
「どうもしてな……」
「嘘。ちゃんと言って」
 空いている方の手で、ぐいっと彼の腰を引き寄せれば、
「部署が違うと……なんか疎外感が」
と呟くように告白する。

──なんだそれ。可愛いんですけど?

「部署もなんも。皇は副社長なんだから、大抵の奴が部署違いってことになるだろ」
「そうだけど……」
 しょんぼりする彼が可愛すぎて、今すぐ押し倒したい衝動に駆られるが、ここは社内。しかも廊下だ。いくら何でも、そんなトチ狂った行動に出ればクビは免れない。

「皇は可愛い」
「なっ⁈」
「しょうがないだろ? 俺の恋人は副社長様なんだからさ」
と、苦笑いをすれば、彼は額を塩田の肩につける。
 そんな彼を愛しいなと思いながら、
「早くデート行こうよ、皇」
「うん……」
「楽しみにしてたんだから」
と付け加えると、彼は驚いた表情をして顔をあげた。
「ん? 何」
「へへ……いこっか」
と、照れたように笑う彼。
 どうやら機嫌は直ったようである。
「俺様が、旨いものを食わせてやる。ついて来い、塩田」
 塩田はそんな彼を見て、なんとも単純な恋人だなと思うのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

欠けるほど、光る

七賀ごふん
BL
【俺が知らない四年間は、どれほど長かったんだろう。】 一途な年下×雨が怖い青年

有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。 しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。

今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか

相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。 相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。 ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。 雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。 その結末は、甘美な支配か、それとも—— 背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編! https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322

処理中です...