R18【同性恋愛】リーマン物語if1『いじめてあげる』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
59 / 63
2章『二人で探る幸せの場所』

23:壊れるくらい愛して【微R】

しおりを挟む
****♡Side・副社長(皇)

 愁いを含んだその瞳が細められ、口元が小さく笑みを作る。
 それは自分だけに向けられる特別なものだと思った。

 人は不安から逃れることはできない。
 不安は伝染していくもの。
 だから自信が欲しいのに、あとからあとから不安に襲われる。
 好きだから怖いのだ。
 この幸せを手放したくないから。
 繋ぎ止めたいなどと思うのが間違いなのは知っている。一緒にいられる相手とは、そんなに必死にならずとも自然に一緒にいられるものだ。

──ずっと空回りばかりしている。
 塩田が努力してくれていることも知っているのに。
 言葉を欲しがっているのは自分。

 確かに言葉は想いを伝えるには大切なものであることには変わりない。しかし言葉が生む安心は一時でしかない。そんなこと皇も痛いほどわかってはいるのだ。

 彼の瞳に後悔の色が浮かぶのが怖い。
 視線をそらされるのが怖い。
 その温もりが離れていくのが怖くてたまらない。
 そしてその恐怖を産んでいるのは自分自身の言動。
 このままではダメだと思いながら変えることが出来ずにいる。
 きっと本当に変わらなければいけないのは彼ではない。自分なのに。

『これ以上、俺とどうなりたいんだよ』
 以前彼に言われた言葉が脳裏を過る。
 
 恋人になって身体の関係になり、同棲もした。
 そして籍を入れる手はずも整ったのだ。
 もう、何が足りないのかわからない。

「優一」
「あ……」
 集中していないのがバレたのだろうか?
 もうしないと言われるのが怖くて身体が強張る。するとふわりと抱きしめられた。
「んんッ……」
「何を考えてるのかわからないけれど」
 ”考えすぎは良くない”といってさらに腰を進める彼。
「今は俺のことだけ考えていて」
「俺は……塩田のことしか頭にないッ」
 潤んだ瞳を向け、そう訴えれば彼が驚いた顔をする。
 そしてため息を一つ零すと、
「しょうがない奴だな」
と笑ったのだ。

「人生はさ、多少のことならやり直しはきくんだよ。まあ、”犯罪に手を染めて”とかならそうはいかないかもしれないけれど」
 語りかけるような、彼の優しい声音。
「そのやり直しは、リセットじゃない。自分の過ちを正したり、発想の転換をして別な道を探すということなんだ」
 塩田が何を伝えようとしてそんな話をするのか、皇にはまだ分からない。
「だから一つのことを考えてぐるぐるしているのは、悪循環でしかない。だってそこには新しい道はないわけだから」
 循環しているだけではダメなんだと彼は言う。
「人はそこに何か別なものを加えた時、閃いたり発想の転換が出来たりするんだよ。その時初めて道が開ける」
 ”だからさ”と彼は続けて。
「週末、温泉でも行こうよ」
「え?」

 何故この話の流れで急に”温泉”なのか。
「難しいこと考えるのはやめにして、リフレッシュしよう」
「あ、うん」
 キョトンとする皇に口づけを落とす彼。
「はい。じゃあ考えるのはやめにしてこっち集中して」
 彼の指が皇自身に絡まり、皇はびくりと身体を震わせた。
「まあ、ぷるぷるしてるのもやらしくていいけどね」
「え? 何言って……」
 意味を考え真っ赤になる皇にはお構いなしに、彼の手は根元を強く扱く。
「んッ……」
「良い締め付け」

 初めて抱かれたころに比べれば、求められることに慣れたと思う。恥ずかしさが軽減されることはないが。
 それでも羞恥に頬を染める皇を見て彼が欲情することを知ってからは、悪くはないと思っている。
 卑猥な音を響かせ、甘い声を漏らす皇に興奮する彼を見て満足する自分。その欲情が自分だけに向けられればよいと思う。この先もずっと。

「塩田……好き」
「俺も好きだよ」
 ぎゅっとしがみ付いて快感の波を何度かやり過ごす。そんな健気な皇に気づいているのかいないのか、タイミングを合わせやすいように彼は良いところをリズミカルに刺激した。
「壊れるくらい愛されたい」
「それは……ちょっと困るな」
 こんな時も塩田らしいなと思う皇であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

処理中です...