R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
92 / 218
────3話*俺のものだから

19・手を差し伸べた、あの日から

しおりを挟む
****♡Side・塩田

 人を好きになるって不思議だ。
 相手を喜ばせたいと思うのは笑顔が見たいから、なのだろうか?

──以前の自分だったら、絶対しないこと。
 今、自分が願うのは紀夫の幸せだけだ。

「塩田、大好きだよ」
 むぎゅっと抱きしめてくれる彼の体温が心地いい。出逢ったばかりの頃は、こんな風になるなんて思いもしなかった。

 何故か、(株)原始人の社長呉崎から気に入られ、
『大学を卒業したら、是非ともうちに来て欲しい。我が社には君が必要なんだ』
と泣きつかれ、就職先は一択となる。
 別段やりたいことも行きたいところもなかった塩田だったが、不安がなかったわけではない。わけの分からない部署に放り込まれ、上司は課長のみ。仕事内容を教えてくれるような先輩もいない。いたとて塩田の性格上、素直に教わることもなかっただろうが。

 同期の二人は、一人は見た目が派手な童顔の男と、見るからに体育会系の真面目そうな男。とてもじゃないが仲良くなれそうにはなかった。最も、塩田が自分から人と仲良くしようだなんてことは、天地がひっくり返ろうともあり得ないが。

──頭が悪そうだな。

 電車でんま紀夫のりおの第一印象は、それである。こういう環境に不慣れなのか、初めの頃は落ち着きがなくミスが多かった。当時、多忙を極めた苦情係で彼は、明らかにみんなの足を引っ張る存在。朝は電車に乗り遅れ、遅刻ギリギリなこともしばしば。
 だが彼は明るく、社交的で一所懸命だった。

 要領が良い自分と、要領の悪い彼。正反対の二人が合うはずもなく、もちろん話をすることもなかった。

 しかし、あの日……。

 連日の残業で疲れ切っていた彼は、ミスを連発。彼は電車通勤で終電が早い為、焦っていたのだろう。泣きそうな顔をして必死で仕事をこなそうとする彼に、とうとう見兼ねた塩田は手を差し伸べた。

──あの日、うちに泊めていなかったら俺に懐いたりしなかったんだよな。

「紀夫」
「うん?」
「愛してるよ」
「!」
 塩田の言葉に彼は驚いた顔をする。
「なんだよ」
「塩田がそんなこと言ってくれるなんて、夢みたいで」
「泣くなよ、お前はすぐ泣くんだから」
 よしよしと言うように、彼の猫ッ毛の髪を撫でてやると、再び抱きしめられた。
「だって、嬉しい」
「うん」
 触れあった素肌。とても馴染むのは相性がいいからだと思っている。

 だが、社長の一存で未来は変わってしまうかもしれない。
 いや、だったら仕事を変えればいいだけだ。

「なあ、紀夫」
「なあに?」
「もし、俺が会社を辞めることになったら」
「え?」
「一緒に旅に出ようか」

──紀夫と、あの女の手の届かない何処かへ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

処理中です...