上 下
3 / 7

02. そうだ!クレープ包み作ろう!!

しおりを挟む
『……はっ?』

青年───もう精霊さんと呼ぼう───は目をまん丸くさせ、ぽかんと口が空ける。

「キュツキュ、キューキュー(いや、あのですね、私お腹がすいてるんです。それはもう本当に、ええ。だから、お菓子を作って食べたいんですけど、私の手ね、いや、前足だと泡立て器をもてないんですよ!これは実に由々しき問題でしてね、私、お菓子を作らないと死んじゃう病なんですよ、つまり、このままだとお菓子作れなくて、ついでにお腹が空くあまり死んじゃうんですよ、私!!)」

自分でも何言ってるかわからないが、セールスマンの押し売りよろしく、ここぞとばかりにまくしたてる。
お菓子を食べたいんだ、私は!!

精霊さんは深く深ーくため息をつくと、ついてこいと言って木の中に入っていった。
私も慌てて後を追う。

急な螺旋状の階段をのぼっていくと、精霊さんは壁にある一つのドアを開け、中に入っていった。私もすぐさま飛び込む。
私の手じゃ開けられませんからね、ええ。

中に入った私は目をまん丸くさせた。

そこは清潔なキッチンだった。みかける器具は日本のものと微妙に違う、魔道具というやつだろうか?
というか、ここ本当に木の家なんだ

『……頭の中でお菓子が作れるウサギの姿を想像しろ。いっとくが、人間そのものにはなろうとするなよ』

おお!やっぱり魔法はイメージなんですね!!
でも、人間はダメなんですか……
まっ、この際、作れるならどうでもいいけどね!

私は目を閉じ、人間のような手をし、身長が160㎝の二足歩行の黒ウサギをイメージする。

体内を温かなものが駆け巡ったと思ったら、体がむずがゆくなりどっと疲れの波が押し寄せてきた。
おふぅ……でも成功してよかった!!
元の身長に戻ったとはいえ、体長30㎝からの変化は急激なものだった。
手をみると人間の手のようになってる。
いよっしゃー!!

『道具や材料は好きに使え。……俺は今、常識について考えている。』

んっ、精霊さん、なんかお疲れモード?
まいっか、それより作るぞー!食べるぞ-!

いろいろ材料や器具を物色し───ときどき精霊さんに質問しながら───日本にいたときと変わらないほど、いろいろなお菓子が作れることがわかった。
冷蔵庫もあったよ!しかも、なにげに中身が豊富な上に整理整頓されてる!!女子力高いですね、精霊さん!!

私は何を作ろうか迷った末、簡単に作れるクレープ包みを作ることにした。

さあ、戦闘開始だ!

まず、クリームチーズを室温に戻しておき、カスタードクリームを作る。
ボウルに薄力粉と砂糖を入れてよく混ぜる。
次に、鍋に牛乳を入れて中火にかけ、小さな泡がふつふつと立ってくるまで温める。
そしたら、ボウルに卵を投入し、軽くつぶす。
それから、温めた牛乳をボールに少しずつ加えながら、手早くかき混ぜる。
これをこし器を通しながら鍋にあけて火にかける。木べらで底のほうからかき混ぜながら火を通していく。
クリームがとろりと落ちるくらいになったら火から下ろし、バニラエッセンスを加えて冷ます。
そして、クリームチーズをマヨネーズ状になるまで練り、カスタードクリームと混ぜ合わせる。

戦闘は中盤にさしかかり、いよいよクレープを焼く。
薄力粉と塩を合わせて、ボールにふるい入れる。
次に、別のボールに卵と牛乳を投入しよくかき混ぜた後、粉のボールに加えてさらにかき混ぜる。
これに清潔な薄い布地をかけて冷蔵庫で休ませる。
その間に、後片付けをすませる。

ちらりと精霊さんをみると、じっとこちらを凝視していた、なんかやりにくいなあ。

フライパンを強火にかけて油をひき、休ませた生地を流し込む。
そしたら、フライパンを動かして生地の厚みを均一にならし、中央にカスタードクリームをのせて包む。
フライパンにバターをとかし、クレープ包みの閉じ口をしたにして中火で焼く。
2分焼いたら、裏に返してもう2分きつね色になるまで焼く。
それを器に盛り、ミントといちごジャムを添えたら戦闘終了である。

「キュ~(できたあ~)!!」

私はもう背中とお腹がくっつきそうだ。
ナイフとフォークを構え、いざ食べようとして精霊さんがまだじっとこちらを凝視しているのに気づいた。

私はクレープを半分に切ると───とろりとカスタードクリームが溢れた───お皿に盛り、フォークと一緒に精霊さんに差し出した。

『俺がいつ食べたいといった?』

精霊さんは不機嫌そうに顔をしかめるが、視線はクレープにくぎづけだ。

「キュー、キュッキュ(私がこれを作れたのは精霊さんのおかげですから、そのお礼です。
食べて下さい。)」

『……まあ、そんなにいうなら……』

精霊さんはぶつくさいいながらクレープを受けとると、パクッとかぶりついた。

私はドキドキしながら、反応をうかがった。
しおりを挟む