異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

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冒険者ギルド編~多岐型迷路~

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あれから数週間程経過。
たまに来るキャズの手紙には、その後多岐型迷路ルーレットメイズに入る冒険者達には、帰還後の業務報告を義務化したそうだ。

最初は手間がかかることに、ギルド職員も冒険者達も不満があったようだが、根気よく何度も言い聞かせ、その結果をレポートとして掲示するようにした所、かなり報告の密度が上がったらしい。

どうやら、何を調べているのか、ギルドが何を冒険者達に警告したいのかが分かったようで、ギルド職員も冒険者達も身を入れて調査に協力するようになったとの事だ。

それによると、やはり悪魔茸デビルマタンゴは38~39階層での接敵が多く、たまにその他の階層…つまり36~37階層での目撃情報もあるようだ。
しかし、38~39階層に比べれば本当に僅かな確率。



「・・・でも、出ることには変わりはないのよね」



階層を移動しているのは事実なのだ。
それが、階段…階層を直に移動しているのか、それとも湧いているのかはわからない。
出現する瞬間とかってどうなってんのかしら。森っていうくらいだし、その瞬間を捕らえる人なんていないか。

そしてトリュタケの採取依頼は止まらない。
増える…という事はなさそうだが、減る事はないと言う。



「増えないのは、ギルドでクエスト受注の管理してるからよね。…個人的に頼むとかってないのかしら」

「どうしたんですか?エンジュ様。独り言激しいですよ」

「あれ、キリ君どうしたの」

「エンジュ様、御守りタリスマン作ったやつ回収に来たっすよ」

「あ、そこにまとめてあるわよ」

「・・・やっぱカメオシリーズ多いっすねー。これ凄い売れてる見たいっすよ?オレも買いました」

「言ってくれたらあげるのに」

「いやいや、これは買うからいいんじゃないすか」

「そういうもんなの・・・?」



買うのも貰うのも同じでは? 
やっぱり御守りタリスマンはカメオしか作れません。
属性毎に魔石の色が違うから、下地の色が違うだけでやっぱり横向きの貴婦人像か、薔薇しかできません。

他に頑張ってできたのが、何故かエッフェル塔っぽい形。後は剣の形と、盾の形。ブーツの形も。
剣の形のは、STR増加。盾の形はCON増加。ブーツの形はDEX増加。エッフェル塔はPOW増加でした。



「こっちのシリーズもカッコイイっすよね。効果がわかりやすいって人気ですよ」

「ていうか、どこでその情報得たの?」

「ギルドっすよ?そこでも売ってますから」

「え。キリ君、ギルドにも卸してるのこれ」

「はい。なんなら一緒に行きますか?エンジュ様、普段通りにしてればそんなに貴族っぽくないし目立たないっすよ」



行っちゃおうかな?冒険者ギルドってまだ見たことの無い所なのよね!気になります!
『なんかあってもオレがやっつけますから任しといてください』と言ってくれるキリ君。実は結構強かったりする。

ゼクスさんに言えば、『ついでにクエスト発注してみたらどうじゃ?『毒胞子』欲しいんじゃろ?』と言われた。

確かに、状態異常の回復薬、作ってみたいのよね。
一応ある素材で解毒薬キュアポイズンとか麻痺回復薬キュアパラライズとか作れてるけど。

状態異常の回復薬は、能力値回復薬パナシアと呼ばれるものだそうだ。『毒胞子』の他に、『薬草』と『聖水』を使うとか。後は聖属性の魔石。
…なんか私集められそうよね?『聖水』って精製水に聖属性の魔力通すんだって。やろうと思えばできるわコレ…

普段は神殿で1本銀貨3枚で売ってます。消毒にも使えるので、一般家庭でも必需品みたい。
巫女さん達が日々一生懸命作成しているそうな。聖なる御守りホーリータリスマンなんかも作成してるんですって。幽霊避け?

私は白衣を脱ぎ、普段着に。
ブラウスにロングスカート、ロング丈のジレ。
こっちでは上着替わりにロング丈のジレを着ることが多い。特に平民ね。貴族ならきちんとしたフロックコートみたいの着るみたいだし、女性ならきちんとドレスを着る。

私は基本的に、平民に近い服装が多い。
とはいえ、向こうで言う『オフィスカジュアル』に近い。
だから着やすいし、抵抗がない。むしろドレスは堅苦しいわよね。

冒険者ギルドまでは歩いても行ける。
私はキリ君と連れ立って、冒険者ギルドへお使いに行く事にした。



「あそこっすよ、冒険者ギルド」

「おおー!それっぽい!」

「なんすかその反応!」



3階建ての建物。バーが併設されたような作り。
きっとあそこで仲間と作戦会議とかするのよね!

キリ君と一緒に入口を入れば、そこはパッと見、市役所とか郵便局に近い。カウンターがあり、受付があり、奥には個別カウンターみたいな場所も。

大きな掲示板があり、そこにはたくさんの貼り紙がされている。思ったより混んでいることもなく…なんていうか…



「ハローワーク・・・」

「エンジュ様、こっちこっち」



キリ君がひらひら、と手招き。そちらへ向かうと、そこは売店のように区画整備された場所。
色々な物が置いてあり、会計場所の近くにはショーウィンドウが。そこにはいくつもの御守りタリスマンが展示されていた。

私が作っているカメオシリーズも。
…ていうか、本当に名称『カメオシリーズ』で売ってるし。『売り切れ』なんて貼っているものもあり、本当に売れてるんだなと感心した。



「あら、キリさん。納品ですか?助かります」

「こんちは、フレアさん。いつも綺麗っすね」

「あらまあ、お上手ね?キリ君がもう少し大人になったら、お相手してもいいわよ?」

「んじゃそん時はよろしくっす」

「ふふ、わかったわ。・・・あら、そちらのお姉さんは?」

「あ、この人はオレの上司っすよ」

「えっ!?そうなの?」

「あ、こんにちは」



お綺麗なお姉さん。年の頃は25くらい?こっちの人は結構大人っぽいから、もしかするともう少し若いかも。

話を聞くと、フレアさんはギルド職員。ここで回復薬や装飾品アクセサリーの販売を専門にしているそうだ。得意武器は鞭だそうです。女王様…



「ギルドって来たことなくて。キリ君が行くって言うので着いてきたんです」

「あら、そうなんですね?キリ君はたまに荷物持ちもお手伝いしてくれるんです。お借りしてしまってすみません」

「いえ、本人が了承しているのであれば構いませんよ」

「優しい上司ねえキリ君」

「そーなんすよ、最高っすよ?姐さん上司」

「妬けちゃうわあ」



口調は単なるチャラ男なキリ君。
しかしチャラいのは口調だけで、仕事はきちんとしています。
御守りタリスマンの納品のため、ひとつひとつ確かめながらフレアさんへ渡す。私はその間、呑気にギルド内を散策。

お、掲示板見てみよう。ハローワークの求人情報みたいだなあ。めぼしい物を見つけたら、取って受付に行く仕組みみたい。
その後どうやって管理してるんだろ?バーコード登録?そんなものないわよね?

ふと、私の上に影が落ちる。
ん?と思って真上を見上げると、背の高い男の人が私を真上から見下ろしていた。しばし見つめ合う。



「・・・」

「見かけない顔だな?ギルド職員か?」

「いえ?」

「んー?なら依頼者か?」

「えーと、依頼を出してみようかなとは思うけども」

「ちなみに何を?」

「受けてくれるの?でないと話せないけど」

「何をするのかわからないのに『受ける』なんて言えんだろ」

「それはそうだけど、ギルドを通していないのに内容を喋ってしまうのもどうなの?」

「まあ、確かにな」



ははっ、と笑う顔は見た目より可愛い。
なんだか狼みたいな印象の人。金髪はキラキラしいというよりも、バサバサっとして稲穂みたいな色だ。瞳の色も金色で、フレンさんのような隙のなさと、愛嬌のある色がある。

うーん、いい男だなあ。なんて思っていれば、グイッと腰を抱かれて持ち運ばれる。え、何事?



「えっ、ちょ、何?」

「クエスト発行だろう?このまま話を聞いてやる。サッサと手続きしな」

「えっ?貴方が受けるの?」

「ああ、いい女の頼みを聞くのは男の役目だろ」



えっ何この人、なんていうサンジなの?
大柄な狼のような人に抱えられ、受付カウンターの前に。
すると奥からドタバタバタ!と人をかき分けてキャズが吹っ飛んできた。



「なっ、なっ、なっ、」

「あら、お疲れ様キャズちゃん」
「んだ?ギルド職員と知り合いか」

「ちょっとしたご縁があって」
「はあん?ならさっさと手続きしな。おいアンタ、この人のクエストは俺が受けるからそのまま手続きしてくれよ。これタグな」



ぞんざいにポイッとキャズへタグを投げた。
タグって何ぞ?と思って見ていれば、キャズは頬を赤くしてその人へ向き直った。



「お、お目にかかれて光栄です、『獅子王』様!」

「あいよ、あんがとよ」

「え?獅子王?」

「おうよ、俺がアルマ・レオニード。通称『獅子王』だ。よろしくな、お姉ちゃん」



ニッ、と不敵に笑う大柄な冒険者。
え、この人がS級冒険者の『獅子王』?
キャズの初恋の相手?結構オッサンじゃない?

しかしキャズは恋する乙女状態。
当の『獅子王』は近くの椅子にドカッと座って待っている。

え。この人、私のクエスト受けるの?マジ?

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