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冒険者ギルド編 ~悪魔茸の脅威~
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「こちらを。王都ギルド職員、キャズ・シールケです。
こちらの2人は随行員です。今回はギルドの調査として入ります」
「し、失礼致しました、どうぞお通り下さい。
・・・現在、近衛騎士団が調査に入っていまして」
「知っています、あちらも大変ですね。
ギルドでも入る冒険者のパーティ数を絞っています。
下層では『獅子王』様も入っているそうですから」
「そうですね、3日前にお入りになりました。
そろそろ最下層に辿り着いていてもおかしくなさそうですね。
近衛騎士団の探索範囲は40階層までということになっているそうです」
「分かりました、ありがとう」
「はっ!お気をつけてシールケさん。そちらのお2人も無理はせずにお願いします」
「わかりました」
「ご丁寧にどうも」
キャズを先頭に、迷宮…多岐型迷路へ。
もちろん随行員というのは、動きやすい格好をしたディーナと私である。オリアナが用意してくれた服も考えたのだが、あそこで誰が見ているか分からなかったので、今日はお互いに私服です。
「あんた、そんな軽装でいいの?」
「軽装だけど、全部ウチのメイド達が用意してきた物だからどこにどう属性強化されてんのかわかんない」
「・・・言うだけムダね」
「はは、何かあっても私達が守るさ。久しぶりだな、騎士服以外で剣を持つのは」
「ディーナ、それは普段着なの?」
「ああ、そうだ。変じゃないか?同期の子に街で見繕って貰ったんだ」
今日のディーナは、ブラウスにミニスカ。膝上までのニーハイ…丈夫そうな質感のあるもの。それにロングブーツ。
そこに膝丈のサーコートのような上着を着て、剣帯を締めている。
…ミニスカ&ニーハイは基本装備?
キャズも似たような格好よね。
「ミニスカ最高」
「だからオヤジ発言止めなさいよ、全く。
前衛職はこれが1番動きやすくていいのよ」
「だから最高って言ってるのに」
そんな会話をしながら多岐型迷路の中へ。小さな礼拝堂の様な場所から、大きな玄関ホールのような場所へ移動した。
そこには数人の騎士と、シオン。
私に気づくと近づいてきた。
「どうしたんです、エンジュ様?」
「ご苦労様です、副長さん。近衛で探索を始めてくれているのね、ありがとう。首尾は?」
「そうですね、10階層までの探索であれば半日で戻ってきます。20階層だともう2~3時間ほどかかりますね。内部のパターンや魔物の出現状況でも差はありますが」
「転移方陣は?」
「多少のムラはありますが、ほぼ一定の位置に。
とはいえ、10階層からと20階層からでは別の場所に出ます。ここから繋がる小部屋ではあるのですが」
「ほぼ一定、というのは?」
「数回、別の小部屋へ戻る事例が。とはいっても何がその起動鍵となっているのかまでは不明です」
転移先が無作為、というのはまた厄介だ。
下手に変な所へ飛ばされないならいいのだけど。
オリアナからの報告によれば、ケリーは本日から多岐型迷路へ侵入るとの話。
入口はギルドと近衛騎士団の目が光っている。…ならばどこから?高確率で別の出入り口があるようにしか思えない。
「副長さん、ここで探索魔法はかけてみた?」
「はい、何度か。しかし別の入口が見つかった試しは今のところありません。一定時間置きに見てはいるのですが」
入口ホールではない、ということはやはり内部なのだろう。確かにもう1つ出入り口があるとすれば、そこにはこことは別の入口ホールがあってもおかしくはない。そこから第1階層へ飛ぶのかもしれないからだ。
私はキャズとディーナに目配せ。
2人とも心得たかのように迷宮入口へ向かい待機している。
「では、私達も少し探索してくるわ。10階層まで行って戻るつもりなので、気にしないで」
「気をつけて下さい、もし助力が必要であれば中にいる騎士達に声を掛けてくださいね。私はここの見張りですから」
「もしかして根に持ってるの?」
「いいえ?そんなことは」
「副長さんには温存しておいてもらいたいの。・・・最悪、最下層の攻略に『獅子王』から指名が入るかもしれないでしょう?」
「・・・なるほど、それを見越して、でしたか」
「確率は高いわ。今の王都ギルドに彼とパーティを組んでも遜色のない人は少ないし。まさかギルマス直々に入る事はできないでしょう?彼は何かあった時の為の判断を下さなければならない人だもの。一緒に中に入る事はできない。
でも、副長さんなら助けになれるわ。剣の腕だけでなく魔法も使えるものね。最下層は溶岩ステージですってよ?『水』属性はお得意よね?」
「まあ、それなりには。とはいえ溶岩相手にどれだけ止められるかは試した事がないのでなんとも言えませんね」
「その為の『獅子王』自らの偵察、でしょう?
貴方の実力も知る彼なら、対策を練って来るでしょう。その時に万全の体制で動かせる人材を疲れさせておく訳にもいかないわ。
これが『火』属性が必要であれば、団長さんを行かせるのだけど」
そう、シオンが『水』なら団長さんは『火』がお得意だ。
ちなみにアナスタシアは『火』と『風』の両方。
お互い『火』が得意だから気が合うのかしら?
魔力属性って本人の器量次第な所があるし、同じ属性の人同士は割りと気が合いやすいという。
…魔力属性占い、とかありそう。
私はシオンと話を終え、キャズ達と内部へ。
ちょっとドキドキしちゃーう!タルタロス?パレス?それともメメントス風?脳内ゲーム風のビジュアルでいっぱいな私。ルンルン気分で進むのだった。
********************
「・・・すご」
「・・・ここまでとはな」
「私も初めて入るけど・・・報告書通りね。10階層までは『朽ちた神殿風』だそうよ」
「壊れない・・・わよね?」
「それはそうじゃないのか?しかし、窓から見える風景はまた庭・・・のようだな」
「庭のように見えるけど、外に出られないんですって。・・・ああ、でもどこかのパターンで中庭に降りられたとか言ってたわね」
キャズは自分のマジックバッグからパラパラと資料を取り出して閲覧している。ある程度多岐型迷路の内部の記載があるレポートを抜粋してきたのだとか。
今回の探索はきちんとギルドマスターであるグラストンさんに了解を取ってきているため、こういった内部情報もくれている。
「さて、のんびり10階層を目指しましょ」
「そうだな、どっちが先頭に行く?」
「私が出るわ、ディーナは後方に注意して。私の方が斥候スキルあるから、索敵もするわ」
「私は?」
「あんたは真ん中」
「基本的に守られてほしい、怪我でもされたら困るからな。
その姿になって攻撃魔法が使えるとはいえ、エンジュは後衛職だし、援護を基本に考えてくれ」
「了解」
ここは2人の言う事を聞いておくべきよね。
なんたって騎士様とベテラン冒険者様だもの。
毎日引きこもっている錬金術師紛いのひよわ人間とは違うし。
いざと言う時にはペル○ナ呼ぶけど、攻撃魔法連射で何とかなるだろう。初級魔法でも連射するととってもチートである。
破壊力抜群の中級や上級よりも、初級を連射する方がこういう場では有効である、とセバスも言っていた。
…むしろ上級魔法は使ってくれるなと釘を刺されました。何らかの要因で壊れる事もなくはない、と…
私って危険物なのかしら?自重しよう。
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