異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

文字の大きさ
51 / 197
冒険者ギルド編 ~悪魔茸の脅威~

50

しおりを挟む


転移してきてしまった小部屋。
出る前にも確認したが、こちらからは戻れずに一通である事が分かった。とんでもないトラップじゃない?これ。

部屋を出ると、奥の方に大扉が。
キャズもディーナも真剣な顔で見ている。



「何してるの、2人とも」

「あれが、迷宮主ダンジョンボスの部屋、ってわけね」
「異様な空気、だな」

「えっそう?・・・ちょっと暑い?くらい?」

「あんたホントに鈍いわね」
「・・・いや、うん、エンジュはそれでいいさ」

「見てみるか?中。開け放ったりしなきゃ見れるぞ」



えっ?そういうものなの?
ペル○ナを思い返せば…いや勝手に奴等はズカズカ入っていっちゃうしなあ?クトゥルフTRPGなら入る前に聞き耳振れるか?



「だ、大丈夫なのよね?」

「まあな、その代わり少しだけだぞ?」



『獅子王』が先に行き、そっと大扉をずらして開ける。
そこからムワッとした空気。サウナに入りに来たみたいだ。



「うわ、すご」
「っ、何よこれ、すごい」
「ああ・・・でも耐えられない事はないな」

「マジか?お前割と凄いなクロフト。普通なら1分も持たないと思うぞ」

「おおーボコボコ言ってる」
「・・・ていうか、ってあんたの結界のおかげよね?」
「・・・私も今思っていた」

「え?あ、そうかしら」



そういえば、迷宮ダンジョンに入った後、私は2人に防御魔法をかけていた。

万能属性強化マルチエンチャント、と名付けた魔法。なんていうの?ホワイトウインドみたいな魔法ってできないかな?とか思ってあれこれしてたらできました。
しかし効果はかなり良いですが、効果時間は短めなのでこまめに掛け直さないといけない感じ。

何かの本で『マルチスクロール』として詠唱しなくても、魔法を閉じ込めたスクロール…巻物みたいな物に全能力値強化魔法を入れていた。
そんなものができたら使い勝手よさそう、という思い付きから始めたのだけどね。

しかしすごいわ、溶岩マグマステージ。
頭の中では某配管工の兄弟が冒険してるようなステージをイメージしていたけど。ほらあれも火の玉ボヒュって出てきたりするじゃない?タイミング良くジャンプしても2段階で出てくるやつに当たって残機減らしてたわ…
ハテナBOXからスター出ても取れずに追いかけて、カメにぶつかるわ、落とし穴に落ちるわで散々だったわ、あのゲーム。

あれって本当になんとかなるもんなの?
なんか黒い体躯の生き物いますけど?



「えっ、ねえ、これってなんとかなるもんなの?」

「そうだな、凍結瓶フリーズボトルが数本あれば何とかなるんじゃねえか?」

凍結瓶フリーズボトル?」

「氷結魔法を封じてる瓶だ。割れば周りを凍らせる。それであの溶岩マグマを無効化するのが通常の攻略法じゃねえか?
後は『水』属性の上級魔法ならなんとか相殺できるかもな」

「『水』属性でいけるもんなの?」
「確かに、凍結瓶フリーズボトルなら対応可能でしょうね。けれどこれを沈静化する為にはかなりの本数が必要では」
「『水』属性の上級魔法なら、氷結魔法もあるんですよエンジュ様」

「よく知ってるな、クロフト。シールケの答えも正解だな。10本単位で必要になるかもな。ギルド経由で取寄せは可能か?」

「難しいかもしれませんね、ですがなりふり構ってはいられないと思いますので、帰ったら手配します」



ああなるほど、『氷』属性ってないもんね。確かに『水』属性なら使いこなせるんだろうな。
凍結棺フリーズコフィン』ならいけそう?私的には『絶対零度アブソリュートゼロ』あたりを使いたいなあとか。

…『絶対零度アブソリュートゼロ』は某ゲームの魔法を思い出して詠唱をしてみたらできそうだった魔法です。
あの某戦乙女RPGはものすごく好きで、大魔法の詠唱なんかも何度も聞いて覚えるくらいだった…マニアな私…

で、攻撃魔法が使えるようになり、セバスに促されて詠唱してみた所、全てにおいて途中で『もういいですエンジュ様、そこで止めてください』と止められました。
そして『この魔法は強いので使い所に気をつけてください』と言われました。確かにね?あのゲームでも周り巻き込み型な大魔法のエフェクトだったしね?でも好きなんだよなー『聖光落星セレスティアルスター』とか使えそうだし?

私ひとりのぞき込みながらウムムと考えていれば、後ろではキャズと『獅子王』が攻略について考察中。
ディーナはその話を聞きながら、私に注意を向けていた。



「『獅子王』様、パーティを組みますか?」

「そうだな、アレを討伐するならパーティ組まねえと厳しいな。俺以外にもう1人前衛、後はあの場を相殺か無効化できそうな魔術師ソーサラーに、援護要員として中後衛がいりゃあいいかもな」

「前衛に中範囲から後衛を務める職業ジョブ
「それと、相殺できる魔術師ソーサラー?」

「・・・気の所為か?お前等ちょうど適してんな。
おいエンジュ?お前、回復魔法も使えるのか」

「え?アルマ怪我でもしてるの?」

「・・・バカ」
「・・・あれでは無理だな」

「なるほど?お前、補助や防御魔法どころか、回復魔法も使えるな?」

「はっ!?騙した!?」

「騙してねえよ、まあお前達に無理させるつもりはねえ。んじゃ行くぞ、もういいだろ?」

「あっ、うん」



立ち上がろうとした私。皆は先にある階段に向かって歩いていく。…が、フラグは立っているものである。

ふらり、とよろけて私は大扉の向こうへ数歩、たたらを踏んでのだ。

ムワッ、と体を包む熱気。
まるで服を着たままサウナに入ったみたい。



「うわ、暑い・・・ホットヨガも形無し・・・って、げ」



足元は岩肌が剥き出しの地面。
まるで映画のワンシーンのようだ。周りにボコリ、ボコリと泡立つ溶岩マグマの沼。それでも私自身にダメージは来ない。私の体の周りをキラキラと燐光が包み、守られている。万能属性強化マルチエンチャント、使える。

うわわわわ、まずい。魔物が出る前に…と思った瞬間。


私の脳細胞が一気に活動した。
まずいまずいまずい、これすごくまずい!
どうする私、どうする!?



「っ、女は度胸!って、むりーーーーーー!!!!」



くるり、と振り返ってみた私。
ホラー映画とかで、こういうシーンあるじゃない?
後ろに怖いのいるってわかってんのに、なんで振り向くの?逃げればよくない?見る必要ってある?
そう思っていました、私も。だけどね!実際!振り向いて確認せずにはいられないのよ!見ないのも怖いの!

でもね!今は振り返った事を後悔しています!



「GRRRRRRR」

「えっ、うわっ、蜥蜴っ!?デカッ!!!」



ちょっとこれSIZいくつよ!?
13はあるんじゃないですか!?人間大ですよね!?

数メートル先、黒と臙脂の体を持ったBIGサイズの蜥蜴!
チロチロ、と舌が出るが火花を散らす。あれどうなってんの!口の中火傷しないの!?

じり、じり、と後ずさる私。
脳細胞がフル回転する中、セバスの『自重してくださいね』という言葉が浮かぶ。いやこれ使わないと!いつ使うの!今でしょ!



「汝、美の祝福賜らば、我その至宝、紫苑の鎖に繋ぎ止めん。『絶対零度アブソリュートゼロ』!!!」

「gyuoooooo!!!!」



ありがとうございます、私の灰色の脳細胞さん。
よくぞゲームの魔法の詠唱を丸ごと覚えていてくれました。
その結果、ものすごく助かりました。…周り一面、凍結してますが。



「やばあwww逃げないとこれ怒られるやつうwww」



周りがカチンコチン。溶岩マグマステージどこいった?
大きな蜥蜴さんも氷の彫像と化しています。

…これ、バレたらやばくなーい?
ものすごく怖かったせいで、今脳内アドレナリンが噴出しています。だって口開くと草生えちゃうもの。

そーっと扉を開けて出る。最後に確認しても、やはり氷の世界となっていました。これって放置したら復活するのかな?するよね?してください。

外に出ても、誰もいない。
まだ私がいないことに気づかれていませんね?
大扉をしっかり閉め、ダッシュで階段へ。角を曲がった瞬間、ばふん、と硬いものにぶつかった。鼻!鼻が痛い!



「っと、お前何してんだ?遅いぞ」

「あ、アルマ、」

「ん?何だ?冷えてんな。寒かったのか?」



ふわり、と抱きしめてくれる。背中を擦り、温めようとしてくれている。
まさかサウナからの冷凍庫にいました、とは言えない。



「だ、大丈夫。さっきの部屋に忘れ物をした気がして、もう一度見に行ってて。ごめんなさいね、戻ってきてくれたの?」

「後ろ向いたらいないからよ。2人は階段の上だ」

「そう、じゃあ行きましょ!」

「寒くねえのか?大丈夫か」

「大丈夫よ、早めに戻らないと誰か来ちゃったら大変だし」

「確かにな。40階層から戻ろうぜ」



よし!『獅子王』にはバレてません!
はーやれやれ、やっぱりあの大魔法シリーズ、迂闊に打つと危ないわね。気をつけようっと。

しおりを挟む
感想 537

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...